始まった儀式と宮廷魔法使い
「ここは何処なんだ?」
「時期にわかるさ。」
暗闇の中、キューラの声を頼りにシェンラーは進む。
「ついた。」
暗闇を抜けると、そこには一席の椅子があった。
「なに、あれ…。」
「シェンラー、頼みがある。あの椅子に座ってくれ。」
「いや、怪しすぎるよ。先にトロスが座ってよ。」
「俺はここから先には行けない。シェンラー一人で行ってくれ。」
「待ってよトロス、何もわかんないんだよ。ここは何処なんだ?なんのためにここに来たんだ?」
「言えない。理由は座ればわかる。」
「…分かった。座ればいいんだな。俺はトロスを信じるよ。」
シェンラーは迷わず暗闇を抜け出し、一直線に椅子の元へ向かった。円形の広い部屋。中央に一席の椅子が置いてあるのみのほとんど何も無い部屋。シェンラーは椅子に座った。
「!」
椅子に座った瞬間、シェンラーの視界は暗転した。再び光を捉えた時、先ほどまでいた部屋とは違う部屋になっていた。そして、周りには数人の白いローブを着た人がいた。
「な…これは…」
シェンラーは慌てて立とうとしたが、椅子から拘束魔法が放たれており、シェンラーは拘束されていた。
「立てない…」
慌てるシェンラーを他所に、一人の女性が歩み寄って来た。
「久しぶり、シェンラー。」
「?」
目の前の女性をシェンラーは知らない。知らないはずだ。なのに、何処か懐かしさを感じる。
「私はユラ。あなたのお姉ちゃん。今、思い出させてあげる。」
「お姉ちゃん…?」
困惑するシェンラーを見つめながら、ユラは話し始めた。キューラがフランとティラに話したことを、シェンラーの封印した過去を。
「…これがあなたの知っているはずの記憶。これで戻ったはず…。」
「うん…思い出したよ…お姉ちゃん…。今まで忘れててごめん。」
「ううん。いいんだよ。シェンラーが無事なら。私はそれで…。」
シェンラーに記憶が戻り、想定していた魔力の暴走は起こらないように思えた。しかし、シェンラーの様子が急変した。
「ぐ、ぐわぁぁぁぁ!」
シェンラーの雄叫びと共に眠っていたシェンラーの魔力は暴走した。無数に離散する魔力は形を成し、竜巻のような形状へと変化した。魔力が暴走したことを確認したユラは白いローブを羽織った僧侶たちに呼びかけた。
「みんな!お願い!」
ユラの声を聞き、一斉に魔法を唱えた。
「《魔導障壁、展開》!」
六人の僧侶による同時魔導障壁の展開。その中でもシェンラーの魔力は暴走を続けていた。
【魔導障壁】
一般的に魔法使いが使う盾のようなものが《魔法障盾》という魔法であり、《魔導障壁》は聖職者の魔法を極めた者のみがたどり着ける最強格の魔法。その能力は、半円状に展開される半径5〜10m以内の魔力そのものを封じ込めるというものだ。効果範囲内であればどんな魔法使いであっても無力化できる。
「やれることはやった。あとはシェンラー次第だ。」
白いローブを羽織ったティラはユラに対して言った。
「大丈夫。シェンラーも強くなったから。」
「そうね。信じて待つとするわ。」
多重に展開された魔導障壁の中でシェンラーは一人、自らの魔力と、精神世界で対峙した。
「!?」
無数に広がり続けていた魔力がシェンラーの目の前に収縮し、形を成した。
「だ、誰だ?」
人に近い形をしている。が、頭からは左右対称に二本の角が生えており、とても人間とは思えないほどの筋肉量で、背は2mほどだった。その異形はシェンラーを見て話しかけて来た。
「俺は7大魔王軍の一人、獣王ギラドア。お前の父親だ。」
「え…?」
「感じる…大量の魔力が教会を通り抜けて流れ出している。これなら行けるな…」
全身黒尽くめの男はフードを脱ぎ、素顔を見せた。教会で行われている儀式を覗いていたのは、宮廷魔法使いのクイルだった。
次回「新生フロルゴ団」




