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白き旅団の始まり

「…。」

スタスタと、夜道を歩く音が聞こえる。梟の鳴き声や犬の遠吠えか聞こえる。夜道を歩く2人には、小さな雑音も大きく聞こえるほど静かに進んでいた。前を見ると自分より背の高い大人。一晩のうちに色々なことが起こり、体の疲労も限界に達していた。マカンと別れた3人はサルタナと呼ばれる男の元へ向かっていた。

【魔法医療の専門家:サルタナ】

普段は数多くの医療と魔法に関する知識で、多くの人々の病を治している、医師のようなものだ。そんな彼は現在、魔法と医療を合わせた魔法医療と言うものを研究しており、現在の医術や聖職者の回復魔法では治せない病を治す・緩和する魔法を研究している。職業上、自らの魔力を抑えられない患者を診たこともある。




「サガン、見えてきたぞ。」

小さな丘を登った先に、一つの街が見えてきた。

「あそこは…?」

「フロサ街だ。あそこにサルタナがいる。」

【フロサ街】

第二の首都と呼ばれる流通の中心地。アルガ帝国の経済の中心地と言っても過言ではないほど、人や商人の行き来が多い。



「はぁ…着いた…。」

子供のペースに合わせながら6キロ程度の道のり。短そうに思えても、体感はかなり長かった。

(ラムスめ、どうせならここまで飛ばしてくれたら良かったのに。)

そんなことを考えていると、前から声をかけられた。

「旅の方ですか?」

声をかけたのは、街の正門にいた二人の兵士だ。

「まぁ、そんなところだ。すまないが、サルタナに用がある。会わせてくれないか。」

「サルタナさん…ですか。…わかりました。どうぞお入りください。」

すんなりと街に入れてもらえた。そのまま流れるように街の診療所へ向かった。




「うーむ…。これは私にはどうしようもできないね。この魔力量は私の制御魔法じゃ歯が立たない。」

眠ったままのシェンラーを見て、サルタナは言った。

「どうすることもできないのか?」

「いや、方法はある。ただ、実用的では無いんだ。」

「…一旦その方法を聞かせてくれ。」

「上位の女神魔法を使えるものが最低でも6人必要だ。6人以上で一斉に制御魔法をかけて、シェンラー自身で抑えられるようになるまで魔力を抑え込む…これぐらいしか。」

「無理だ。このシェンラーは何の力も持ってないんだぞ。」

「あんたが鍛えてやればいい。」

「じゃあ、上位の女神魔法が使える者はどうするんだ?ただでさえ数の少なさから滅多に会うことのできない上位の女神魔法の使い手を6人も集められるのか?」

「ああ。そこは私に伝手がある。」

「…分かった。俺はシェンラーを鍛えたらいいんだな。」

「ああ。その子が成人する前までに鍛え上げてくれ。」

「最後に質問だが、サガンがいれば暴走はしないんだよな。」

「…いや、分からない。いつ、何を見て暴走を始めるか、全く想像がつかない。一番いいのはこの国を出ることだな。全く違う環境に触れることで、暴走するリスクが軽減される。」

「国外、か…。あまり気が進まないな。」

「お前なら大丈夫だろ。安心しろ、シェンラーの記憶は消しておく。記憶が戻らない限り魔力は暴走しないだろう。」

「…分かったよ。シェンラーの魔力を暴走させないために俺はコイツらと国外へ行くよ。」

「ああ。それがいい。ただ、まだシェンラーは目覚めないから今日明日は休むといい。いくつか病室が空いている。」

「助かる。」

パルラードは眠そうに目を擦るキューラの手を引きながらシェンラーを抱え、案内された病室へ向かった。



「2日後の早朝、診療所前。『じゃあな、サルタナ。』『ああ。またなパルラード。』二人が挨拶を交わすのを俺は見ていた。パルラードは背中にシェンラーを背負っており、まだ眠っているようだ。サルタナさん曰く、『時期に目を覚ます』とのことだ。俺は、挨拶を終え歩き始めたパルラードさんの後を追いかけた。フロサ街はアルガ帝国のかなり端の方にある。その為、国外へは簡単に向かうことができる。俺たちは街道に沿って歩き、数時間もしないうちに、隣国の小さな村についた。その村でシェンラーは目覚める。パルラードさんが上手くシェンラーの魔力に触れないようにまとめながらシェンラーにこれからのことを伝えた。後に俺たち3人は旅に出る。長い旅を重ね、冒険者になり、今の『白き旅団』のクラストと出会い、色々あって現在に至る。」

キューラは話し終えた。これまでの自分に関わる歴史を。

「うーん…最後の『色々』が気になるんだけど…。パルラードさんはどこへ行ったの。」

ティラは聞いた。ティラが『白き旅団』に入った時にパルラードはいなかった。おそらく『色々』の中に含まれているのだろう。

「ああ、パルラードさんは元々持病を持ってたんだよね。で、旅を重ねるにつれ悪化していき、クラストが『白き旅団』に入った直後に母国へ帰って行った。今も激しい運動はできないけど元気にしてると思う。」

「うーん…まだ聞きたいことは色々あるけど何となく分かった。私たちがアルガ帝国を目指して来たのはシェンラーの魔力をどうにかするためってことだよね。」

「うん。そういう事。で、ティラ、君にお願いがある。」

「え、何急に…。」

「ティラ、君の《能力》なら上位の女神魔法を使えるんじゃないか。」

「う、うん。使えるけど…」

「手伝って欲しいんだ。シェンラーの魔力を抑え込むのを。」

「なるほどね。私でよければ全然いいけど。」

「ありがとう。明後日儀式がある。詳細は明日話す。あ、フランもすまないな。夜遅くに呼び出しちゃって。」

「ううん。全然大丈夫。逆に『白き旅団』について知れて良かった。」

「じゃあ、おやすみ、二人とも。」

「ああ、おやすみ」

「おやすみなさい」

二人とも挨拶をしてキューラの部屋を出て行った。

「終わらない戦い」

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