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作戦決行(後編)

「どうか、息子だけは解放していただけないでしょうか。」

薄暗い洞穴のような場所でシェンラーの母は言った。それに対し、マルシが答えた。

「無理だね。第一、君は息子がいなかったら全力で殺しにくるだろ?まだ、目的を達成するまでは死ねないんでね。」

「…。」

(確かにこの人の言う通りだ。シェンラーがいなければ道連れ覚悟で炎魔法を撃ち込んでいた。)

「なぜ私たちだけなのですか?」

「俺が直接見ておかないとお前に魔法を使われたら対処できないからな。」

「…。」

少し怖くなり、泣き始めたシェンラーを母は抱きしめた。

すると、遠くから足音が聞こえてきた。多人数ではない、一人だけだ。足音が少しずつ大きくなり、やがて、マルシたちの前に現れた。

「やぁ、早かったね、マカン。」

「人質を返してもらうぞ。マルシ。」

二人の距離は10メートル前後。マルシは鞭のような武器を取り出した。

「《舞鞭》」

マルシは先制攻撃を仕掛けた。が、マカンには効かなかった。

「《反撃》」

鞭の攻撃を避けながら、マカンはマルシとの距離を詰めた。

「!!」

一瞬の隙をつき、マカンは一撃を叩き込んだ。

「くッ、」

マルシは、受け身はとったが数メートル飛ばされてしまった。体勢を立て直し、武器を構えたマルシは言った。

「お前、強くなったな。正面から戦ったら俺はお前には勝てないと思う。」

「急にどうした、怖気付いたか?」

「ちげーよ。このまま戦ってたら俺が負けてたって話。」

「?」

マカンは何かを感じ、足元を見た。

「これは…魔法陣!」

マカンは避けようとしたが、一歩遅かった。

「『発動』」

マカンの足元の魔法陣から10本の鉄の棒が伸び、檻を作り出した。魔法で作られた檻は、マカンを拘束した。

「初めからこれが狙いだったのか。」

「ああ。俺がお前に勝てないのはとっくの昔にわかってたからな。」

「…。」

「そこで大人しく見ていろ、俺の計画を。」


戦いの一部始終を見ていたシェンラー親子のもとにマルシの目を盗み、キューラが現れた。

「今拘束を解きます。」

縄で縛られていたため、拘束は簡単に外れた。

「行きましょう。」

シェンラー親子は脱出しようとしたが、マルシに見つかってしまった。

「何やってる」

「!!」

檻籠の中からマカンは息子の姿を見た。

「サガン!?早く逃げろ!」

父親の言葉を聞き、急いで逃走を試みたが、マルシがそれを許さなかった。


バンッ


鞭が地面と激しくぶつかる音がした。

「一歩でも動いたら殺す」

マルシは鞭を左手に持ち替え、右手に剣を持った。この時、シェンラーの母は悟った。「このままでは殺される」と。

(なら、私にできる最善は…)

シェンラーの母は両手を握りしめ、空中に赤い魔法陣を作り出した。

「逃げて!早く!」

(赤い魔法陣…炎属性…。大きさからして上級の魔法だろう。まぁ、発動させなければ意味ないがな。)


グサッ


肉を切り裂く鈍い音が聞こえた。キューラはシェンラーの手を引き走っていたが、シェンラーは振り返ってしまった。

「…!ママ!」

シェンラーの目には、腹部から血を流し倒れている母が映った。マルシは無表情のまま剣を構え、キューラとシェンラーに迫った。

「ママ!ママ!」

シェンラーはマルシなど気にも止めず、叫び続けた。そして、目を覚さないことに気付いた。

「嫌だ。嫌だ!嫌だ!嫌だ!」

すると、シェンラーの体から黒い霧のようなものが無数の帯をなって飛び出した。次の瞬間、帯は竜巻へと変わり、その場にいた全員を襲った。その竜巻の威力は強力で、サガンやマカンは一瞬で意識を飛ばされた。マルシもかろうじて意識を保っているだけで、竜巻に押され、身動きが取れなくなっていた。

「くそ…動けねぇ…」

激しい騒音が響く中、シェンラーの母はかろうじて意識を取り戻した。

「…!目覚めてしまった…。もう、私じゃ抑えられない…。」

シェンラーの母は大量出血で薄れ行く意識の中、盟約を結んだ。

【盟約】

私の絶命を対価に、時に干渉する力を!

「《時間停止》」

シェンラーの母は最後の力を振り絞り、時間そのものを止めた。ありとあらゆるものの時間が止まる。その停止した世界でシェンラーの母は起き上がり、呼びかけた。

「キューラさん。あなたにお願いがあります。」

次回「託された思い」

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