救出
サエジャが示した場所に向かうと、大きな建物があり、中には昔の親友、マルシがいた。
「…やぁ、久しぶり。」
「サガンはどこだ。」
二人の数年ぶりの再会を喜ぶことはなく、マカンはサガンの場所を聞き出そうとした。
「まぁ、そんな怒んなって。サガンくんには危害は咥えてないから安心して。」
マカンは剣を抜き、マルシの顔の前に突き出した。
「殺されたいのか?場所を教えろ。」
「はぁ、分かったよ。ついてきな。」
そう言って、マルシは歩き出した。
「マルシ…何でこんなこと始めたんだ?お前も分かっているはずだ、父さんはこんなこと望んでいない。」
少しずつ落ち着きを取り戻し、サガンが心配で焦る気持ちを抑えながらマルシに問いかけた。
「…。もちろん分かっている。でも、やるしかないんだ。俺はこの街の人質を使い、帝国と戦う。もう、決めた事なんだ。今更変えられない。」
「…。」
「お前も気づいてるだろ?このままじゃ帝国は滅びる。近年に来るとされるイルア皇国との聖戦も、アルガ帝国側の戦力はほぼ無いに等しいため、まともに戦えば確実に負ける。どうせ近い未来に滅ぶんだ。なら、最後ぐらい革命を起こしてやろうと思ってな。」
歩きながら話しているうちに一つの部屋の前についた。ゆっくりと扉を開けると、中には床に倒れ込み、気を失っているサガンがいた。
「安心しろ、眠らせただけだ。」
マカンはサガンを抱えて立ち上がった。
「じゃあな、マルシ。俺たちはもう帰らせてもらうよ。」
「ああ。」
マカンはサガンを抱えたまま、建物出た。
「よろしかったのですか?生かしておいても…」
マカンを見送るマルシに部下の一人が声をかけた。
「ああ。構わない。それに、マカンは近いうちに戻ってくる。殺すならその時でいい。」
「…そうですか。」
マルシはマカンを見送った後、人質たちの元へ向かった。
建物を出て少し行くと、一人のピンクの髪色の少女が立っていた。そう、ユラだ。
「!…何でここにいるんだ?まさか、ついてきたのか…?」
すると、ユラはゆっくりと頷いた。マカンは考えた。ユラを村に送り返すことは簡単だ。だが、今回はマカンがいたため止められたが、誰もいなかった場合、ユラは敵陣に乗り込んでいくだろう。そうなれば最悪命は無い。マカンは覚悟を決めた。
「おーい、起きろサガン。」
「ん…?お父さん…」
「ほら、しっかり目を開けて。」
抱えていたサガンをゆっくり降ろした。
「サガン、よく聞け。今からこの子を連れてトロスおじさんのところに行ってくれ。場所はわかるな。」
「ん?おつかい?」
「ああ。そんなところだ。」
マカンはサガンの胸ポケットに折りたたんだ手紙を入れた。
「これをトロスおじさんに渡してくれ。」
「うん!わかった。」
「君、名前は?」
マカンはユラに問いかけた。
「ユラ…です。」
「ユラ、このサガンと一緒にトロスという人を訪ねてくれ。場所はサガンが知っている。」
「…」
「大丈夫、ユラの家族は俺が助け出すから。」
「…うん、わかった。」
マカンは二人の頭を撫でて言った。
「気をつけて行くんだぞ。」
「うん。」
サガンは生まれつき方向感覚が狂いにくく、知らない場所でも何となくどっちに行けばいいかわかる。今回はサガンを信じ、首都にいるトロスを訪ねるよう指示をした。本当なら村まで帰るつもりだったが、想像以上に距離が遠いいのと、ユラというアクシデントが起こってしまったため、こうなった。
(トロスさんなら何とかしてくれるだろう。)
マカンはサガンたちを見送った後、そのまま村に残っていた。時刻は23時半。辺りは暗く、松明の炎が眩しく光る。ザッザッっと村を徘徊する者たちの足音がする。マカンは屋根の上に乗り、誰がどこに何人いるのかを観察していた。
マカンの中ではもう覚悟は決まっていた。
「俺は、マルシを止めて見せる。」
それがたとえ、暗殺になろうとも。
次回「キューラ・トロス」




