回想ー悪魔から神へー④
「正直に言うと今の教会の在り方に納得できていないのですよ」
男はいきなりそう言い出した。カルストンは要領を得ないような表情を浮かべるが男はさらに続ける。
「神へ祈りを捧げれば人生はどうにかなる、という考えが蔓延っていましてね。確かに祈りは大切ですが」
「申し訳ありませんが話がみえてこないのですが」す「
カルストンのその言葉に男は我にかえる。
「これは失礼しました。簡単に言うと教会のその考え方を変えるために協力して欲しいのです」
男はさらに続ける。
「人間というのは努力することによって己の能力を高めてきたのです。それを怠れば困難を乗り越えることなどできません。神は克服できない試練は与えないと言いますがそれは乗り越えた者の言う言葉、努力と研鑽を重ねた者が言うことのできる言葉、祈るだけでは決して乗り越えられないものなのです。教会の上層部はそれがわからないのですよ」
「その事とわたしたちがやってきたとどう関係が?」
「大いに関係します。あなた方は治癒師たちに蔑まれながらも医者の地位向上の為に努力してきました。病気の解明と治療法の確立を成し遂げて地位向上に努めてきたあなた方のやってきたことを上層部にわからせてやりたいのです。ことを成し遂げる為には絶え間ない努力が必要なのだということを」
「言いたいことはわかった。具体的にどうすれば?」
「今まで通りですよ。上層部は今までもあなた方のやってきたことを信じていません。信仰の力によって神が直したと本気で思っています。ある意味治癒師たちよりもたちが悪い。病気は人の力によって治療できるものだということを証明するのです」
「カルストンさん、理解できたでしょうか? やばいと言った意味が。おそらく最大の試練でしょうね。しかし、これを乗り越えなければ医学の更なる発展はあり得ません。これからは二手に別れて行動しましょう」
「しかし、先生」
「大丈夫、もうあなたは一人前の医者です。一人でも充分やっていけます。それにこれが今生の別れというわけでありませんから。ひとまずさよならと言っておきますがこれにはまた再びめぐりあうという約束の意味合いをこめられています。今度会うときはお互い良い報告ができるようになればいいですね」
「先生、今までご指導いただきありがとうございました。ますますのご活躍を期待しております」
「私も、ですよ。そうそう、一人立ちする弟子に対し師より贈り物をするという習わしがありましてね、たいしたものではありませんが。フィールの名を贈ります。これからはカルストン=フィールと名乗るといいでしょう。この名がきっと役に立つでしょう」
「ありがとうございます。この名を汚さぬようにより精進いたします」
再会を約束してそれぞれの道を歩む二人、しかし、カルストンにとってもリージェントにしてもここから先は苦難の道のりとなっていくのだった。




