回想ー悪魔から神へー⑤
フィールの名を名乗ることを許されたカルストンはしかし、フィールの名を出すことはなかった。自分の未熟さがリージェントに迷惑をかけることを恐れたからだ。だからといってカルストンの自信のなさを許してくれるほど世間は甘くない。これまでの活動実績は広く知れ渡っていて彼のもとには数多くの患者が訪れていた。リージェントがいないことを患者は不安がったがカルストンの堅実で親身な診察はやがて信頼を得ていく。その様子に神官は自分の理想に一歩近づいたと手応えを感じていく。だがそんな順調な日々はそう長くは続かない。
「先生、助けてください」
息も絶え絶えに駆け込んできた男
「何事ですか?」
対応した神官も思わず目がをそらしてしまうほどに酷い状態であったがカルストンは冷静に治療を行う。が、一向に回復する気配はない。やがてカルストンは患者に対し異様な雰囲気を感じる。
「何かやばい、皆直ちにここから退避して」
カルストンがそう叫ぶや否や患者の体から大量の出血、そして体はバラバラにに弾け飛ぶ。
その光景に周りにいた人々は声も出ずただ目を背け、恐怖におびえるだけだった。しかし、カルストンは次に訪れるであろう事態に備えその様子をずっと見据える。
その場にいたほとんどの人は次に何が起こったのか理解できずにいた。カルストンだけがそれを捕捉することができた。
人々が状況を理解できるようになった頃、カルストンはただ涙を流しながらその場に立ちすくしていた。その足元にはこの世の物とは思えないほど異様な形をした何かが転がっていた。
「先生、一体何が」
神官は勇気を振り絞ってカルストンに訪ねる。
「クソが、!! 俺はこんなものと戦うために医者になったつもりはなかったんだ。命を救うためにまた悪魔に戻れと言うのか」
神官は状況を理解した。
「もしかして、これは寄生獣」
「そうだ、俺はいまコイツを殺した。教会から絶滅危惧種だからといって殺害を禁止されてきたこいつをな。それがどういうことかあんたならわかるだろう。俺はもう犯罪者でしかないんだよ、だがこれから先、人に寄生するこいつらを許すわけにはいかない。とことんやってやる」
それを聞いた神官、神官という職務を果たすならば直ちにカルストンがやろうとするこの行為を止めるだろう。だがこの神官は
「そんなことはさせませんよ、とでも言うとでも。あなたは私をただの神官とでも思っているかもしれませんが」
となどとのたまう。
「なんだ、何を言っている?」
戸惑うカルストンを見据えて神官は告げる。
「こいつを絶滅危惧種として保護対象にしたのは人を寄生対象にしないことを了承したからですよ。しかし、こいつらはそれを破った。これからは戦いですよ。こいつらを絶滅させるためのね」
「あんた、一体何者なんだ」
カルストンは思わずおののいた。神官は歴戦の戦士であったカルストンをも戦慄させるほどの殺気を放っていた。




