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うーん、美しくないわぁ~体つきはムキムキマッチョ、どちらかというと私は細マッチョが好みなんですけどぉ。素材は悪くないのよ。まあそれも、うち2人位ですがね。通好みっていうんですか?ガテン系の毛深いおっちゃんを、ヒィヒィ言わせて攻めるのが好きな腐もいますから。
ムキムキ毛深い厳ついマッチョにおもちゃ突っ込んで…うふふふふふふふふ。
「お、お嬢ちゃん、悪いこたぁいわねぇ。そいつを離しな」
雫の腹黒い笑みに不気味なものを感じながらも、マッチョな船員がそう告げた。
部屋の外へ出ると、そこには5人のマッチョが待ち構えていた。コウは床に転がされてピクリとも動かないのだが、肩が上下しているのが見えるので息はあるだろう。左肩の一部に火傷したような痕が見られる、おそらく魔術による傷だろう。
「さあ、こいつがどうなってもいいのか?」
足元に倒れているコウの首元へ向けられた剣の切っ先。
「黙れ!不細工。不細工に、モノ言う権利ないっ」
縛り上げたキモ男の首にナイフを当てて声高に宣言してみた。はい、部屋の中にいたキモ男、縛り上げて人質にしてみましたぁー。だってこのキモ男、運が良い事にこの船員たちの雇い主だった。殺っちゃったら報酬が入らないだろうから、雇い主は見捨てないよね?君達…。
「この餓鬼がっ」
「この犬っころはテメエらの仲間だろう。どうなってもいいのか?」
「そいつ獣人、私人間、なぜ助ける? 私 利用しただけ」
「はっ………そんなハッタリかましてどーする」
「ハッタリ違う。そいつ、この魔人助ける、私協力、逃げるを助ける、取引」
「シズク!そんな、コウを見捨てるの?」
セッカが私の袖をぎゅっと掴んで、私を責める。
「コウと約束。セッカ助けるが1番、コウは足止め、2人助ける無理。だから見捨てる」
「そんな………」
「どうせ本気ぢゃぁねーだろ。やっちまうか?」
「いや、さっき不気味に笑ってやがった。この餓鬼ならやりかねん」
いやそれは…ちょっと腐った妄想を…げふんっ
「ちっ」と男達が下を打ち、1人が既にあちこちと傷だらけで床に伏すコウの腹を蹴り飛ばした。
男達の包囲網が狭まったので、私がキモ男の首を少し切りつけて脅す。キモ男から「ひぃぃ」と悲鳴が上がり、薄っすらと赤い線から血が滴った。人質を盾にし一定の距離を確保し、マッチョ君達を一方へと集めて外への通路を確保する。ここで怖気づくわけにはいかないのだ。
「逃げられると思うな、小娘が」
「小娘違う!!私、20歳の成人だ。この平凡顔が!!」
「何!?」
「まじでか?」
「いや、どーみても子供だろ」
私のカミングアウトに男達がざわついた。
おや?デジャヴか?前に何処かでしたようなやり取りだ。
「貧乳いうな!この残念顔!!」
「いや、言ってないし」
「自分で言うってことは自覚あるのか…」
「残念顔って俺か??」
「私、手のひらサイズだ!!ちょーど良い」
「開き直ったぞ…」
「手のひらもないだろーが」
「怒った。この男、見せしめ、殺す」
キモ男の薄茶の髪を引っ掴んで喉を反らせると、手に持ったナイフにぐっと力を入れて喉を切り裂―――こうとすると、男たちが一斉に「待て」だの「早まるな」だのと止めに入った。5人が一斉にこちらへ注目して近づいたところへ、私の後ろに隠れるようにしていたセッカが手に持った小さな小瓶を男達に向ける。そう、私がワンピースのポケットに隠し持っていた「奥の手」である。
―――ブシュゥゥゥゥゥゥー
小瓶から勢いよく噴出したのは、唐辛子成分をアル君の魔術で濃縮に濃縮を重ねた破壊力抜群の痴漢撃退スプレーである。しかも魔術で色が付着する仕掛けつきで、1ヶ月は落ちないらしい。これって目や鼻だけでなく、皮膚についてもかなり痛いらしいよ。ああーご愁傷様。
「ぐぁぁぁーーーーーーーー目がぇ目がぁ」
「いでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ痛い痛い痛い痛い」
「しみるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ熱い熱い」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
阿鼻叫喚ってこういうのでしょうか?因みに魔術式組み込みで、逆噴射なしの安全設計。なのでスプレーよりも後方にいた私たちは無事です。かなり後ろで床にのびているコウも勿論無事。その為に男達を誘導してコウから引き離し1ヵ所に集めたんですから。
セッカは男たちの横をすり抜け、床に倒れているコウの元へ駆け寄った。紅い瞳に涙を浮かべてそっと頭を撫でてから、手を触れるか触れないかの位置に置くと、歌うように古語を詠唱した。セッカはまだ簡単な治癒魔術しか習得していないらしが、それでも効果はあったようでコウの頬に赤みが戻った。
「コウ、コウ………」
「………セ…ッカ?」
うーん美しいねぇ。痛ましい姿ながら、セッカの頬に手を伸ばし微笑む銀狼族の美少年コウと、涙を浮かべてコウの手を両手で包みその名を呼ぶ銀髪美少女セッカ。
「コウ、動く出来るか?」
セッカの肩を借りて何とか立ち上がるコウ。セッカの治癒魔術ではすべての傷を癒すことは出来なかったらしい。それでも今は逃げなくてはならない。私はこのキモ男を盾にしているから、華奢なセッカがコウを横から支えている。
「だ、大丈夫だ」
「雫さん…どうやって逃げるのですか?」
「こいつ人質、盾にする。船動いた、まだ港近いはず。岸まで泳ぐ」
「ああ…俺もセッカも泳ぎは大丈夫だ」
寒中水泳はしたくないが、このまま船に乗っていても仕方ない。 満身創痍のコウには悪いが、自力で泳いでもらうしかないだろう。
2人とも覚悟を決めたようなので、甲板へと向かう階段を上がった。その時
―――――ドグォォォォォォォォォォォーン
大きな爆音と共に船がぐらりと傾いだ。
もう!!今度はいったい何なんですかぁ~




