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ルーキス=オルトゥス辺境伯領の都市ノクス。古い城郭で守られた街はまるで欧州の古都の様だ。ノクスの東は…とういうより辺境伯領の東には断崖絶壁の海岸が続き、東の外郭街は、その崖を下るように石造りの建物が立ち並んでいる。崖の下には大小の港が東大陸との交易の拠点として存在し、外郭東街の様相はさながらサルレノのアマルフィの様だった。都市の主要部は断崖上の大地。海洋からの外敵の侵攻は難しく、また北と西は森に生息する魔獣が人の行く手を阻んでいる。まさに地の利に守られた都市なのだ。


この世界に来てからノクスの色々な所へ案内されたが、まるで外国の街へ観光に訪れたかのように楽しく過ごしていたし、テレビもネットもないこの世界が、これほど自分の好奇心を刺激すると思ってもみなかった。


今日は兄に渡された銀貨で念願の魔導書を購入する為、内郭街でショッピングだ。

街へ来る時はこちらの世界の服を着ている。今日は襟元と袖口を白いレースで飾った、オリーブ色のワンピースにショートブーツだ。子供服ブランドの既製品ですが何か?体型が明かに違うんだよ!胸回りとか胸回りとか胸回りが……


この世界のファッションは、普通にシャツやズボン、ブラウス、スカート、ワンピース等が一般的で元の世界とそれ程の違いはなかった。まあ、流石にマイクロミニとかはない様ですが…それなりにデザインも凝っているし、刺繍等は日本の既製服なんかよりも細かくて手が込んでいる。基本アースカラーの服がほとんどだが、お貴族様の衣装にはカラフルな色が沢山あるし、使われている素材の良さも段違いだ。

しかし、コルセットを付けろとか言われなくてホントに良かったよ、そんな事を言われたら確実に部屋に引き籠りますから。


隣を歩くアル君は、コートの様な黒いローブ?らしきものを羽織っているが、その下は普通に白いシャツと黒いボトムだった。

映画化された某ベストセラー児童文学の登場人物の様だ。



アル君の案内で内郭南街の大きな書店へ辿り着いた。流石に魔術師お勧めの書店だけあって魔術関連の蔵書が豊富にあるらしい。アル君も沢山の魔導書を持っているのだが、彼の本は私には難し過ぎるか専門的過ぎて無理。まずは共通語翻訳された入門書が必要だろう。


「この辺りの蔵書が魔術初心者向けですね」


そう言ってアル君に手渡されたのは3冊。

【はじめての魔術入門】【よい子のまじゅつ★初級編】【超訳!!基本の魔術】……1冊、どー見ても対象年齢の低い本が混じってますが?

パラパラとめくってみると以外な事に【よい子のまじゅつ★初級編】が一番分かりやすかった。図解もカラーで読みやすい……くっ、でもこれを選んだら負けだ!!


一応、棚に並んでいる他の書籍も見てみる。

【超即マスター!!初級魔術】【パーフェクト魔術入門】ぱらぱらぱらぱら…ちくしょー【よい子のまじゅつ★初級編】を超える本がない!!


「くっ……こ…これを下さい…」

「雫さん…なぜ悔しそうなんです?」

「自分の中の、何かに負けた気がする」


書店の店員さんが微笑ましい笑顔を向けて、購入した本を手渡してくれた。


「はいっどうぞ!お嬢ちゃん」


……………………………………。



「…………うん…ありがとう♪」


ちくしょぉぉぉぉーーー!!私は空気を読むんだよ!!

バイバイ、また来てね♪と手を振って御見送り…なんて出来た店員さんでしょう。あれ?どうしたんだろう?感動のあまり、目から心の汗が……。

うぐぅっと悔しいのか恥ずかしいのか分からない涙を堪えて大通りにでると?あれれ?アル君は何処へ行ったのでしょう?


キョロキョロと辺りを見回すが見当たらない。書店のレジまでは確かに横にいたのに、店員さんの素晴らしい接客に気を取られてアル君を見失ってしまった。

外出時は必ず、忍兄かアル君と一緒にと言われていたのだが、この歳で迷子になるとは思わなかった。




「お嬢ちゃん…どうしたんだい?ひとりかい?」


振り返ると、そこには恰幅の良いおば様。お嬢ちゃんって…そんなに幼く見えますか?今年20歳の成人女性なんですが…というか迷子じゃありません…と言い返したいのだが口から出た言葉は「う…えっ?……あ、あ…あの…」だった。

そうだった、私最近まで引き籠り生活してたんでした。見知らぬ人と急にはお話できません!!ハードル高過ぎます!!


「おやおや?迷子かねぇ?……お母さんかお父さんは近くにいないの?」


「う゛…お…あ…ぁ……」はい、近くに文化交流という名のオタク道を極めている、魔術師オタクの友人が一緒です。


「困ったねぇー」

「おい、どうしたんだ?」

「ああこの子迷子らしいんだけどね?近くに保護者が見当たらないのよ」

「嬢ちゃん?この街の子か?」

「見たことない顔立ちだから、商船の子供かね?」

「だったら身分証持ってるだろ」

「あるかい?見せてごらん?」


え、何?何を見せろと?


「おいおい持ってないのか?もしかして密入国者の子か?」

「違うんじゃねーか?小奇麗な服着てるし」

「奴隷商から逃げ来たって感じでもないしなぁー」

「綺麗な顔立ちだから、奴隷商から娼館あたりに売られたのかもよ?」

「止めとくれよ!!こんな子供の前で…」


大人達がどんどん集まってきますが…

というか…今、奴隷って言いました?


「とりあえず警邏に引き渡すか…悪い様にはしないだろ」

「そうだねぇ」

「それしかないな」


方向性が決まったようです。泣いていいでしょうか?

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