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「無能な記録係」と捨てられましたが、私の綴る一字は世界の理。冷徹な第二王子に「君の全てを独占させろ」と溺愛され、私を捨てた国は歴史から抹消されました  作者: 星詠みミラ


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第33話:文字の壁(スクリプト・バリア)を殴り飛ばせ

「……なんだ、この化け物は!?」


 床に這いつくばったジュリアン様が、引き攣った声を上げる。

 玉座の後ろ、空間の裂け目から這り出してきたのは、墨をぶちまけたような漆黒の騎士たち――「検閲者」。

 彼らが一歩踏み出すたび、豪華絢爛だった玉座の間の色彩が失われ、無機質な白黒の原稿用紙のような質感へと塗り替えられていく。


「下がっていろ、ジュリアン。……お前では、この『文字の羅列』を理解することさえできん」


 ジークヴァルト様が、私を片腕で抱き寄せたまま、黄金の魔剣を無造作に肩に担いだ。

 その瞳は、襲いくる漆黒の騎士たちを「強敵」としてさえ見ていない。ただ、愛の語らいを邪魔する「不快なノイズ」として処理しようとしていた。


「エルセ、ペンを。……私が道を創る。お前はその上を、最も美しい言葉で歩め」


「……はい、ジークヴァルト様!」


 私が銀のペンを掲げると、検閲者たちがいっせいに動き出した。

 彼らは声を上げない。ただ、巨大な消しゴムのような盾を構え、ジークヴァルト様の「存在」そのものを画面から消去しようと突進してくる。


『――記述変更。ジークヴァルト・フォン・ローゼルの剣撃は、目標に到達しない』


 空中に浮かぶ、半透明の文字。

 ジークヴァルト様が踏み込んだ瞬間、彼の目の前に、物理的な「文字列」が防壁となって立ち塞がった。


「フン。……つまらん創作だな」


 ジークヴァルト様は足を止めるどころか、さらに加速した。

 黄金の魔力が彼の右拳に収束し、眩いばかりの輝きを放つ。


「『当たらない』だと? ……誰が決めた。この私を、誰が記述できると思っている!」


 ――ドォォォォォォンッ!!


 ジークヴァルト様の拳が、空中の「文字の壁」に正面から激突した。

 本来なら触れることさえできないはずの、世界の概念プログラム

 それが、彼の「エルセ以外はすべて塵」という極限まで研ぎ澄まされた執着の前で、ガラス細工のように粉々に砕け散った。


「バ、バカな……!? 物語の記述スクリプトを……物理で破壊したというのか!?」


 文字の破片がノイズとなって散る中、ジークヴァルト様はそのまま検閲者の脳天に剣を叩きつけた。

 墨色の体液が飛び散り、漆黒の騎士は一撃で「黒いインクの染み」へと戻り、床に吸い込まれていく。


『エラー。致命的な論理破綻を確認。再構築……再構築不能……ッ!』


 空中のメッセージが激しく明滅し、悲鳴のようなノイズが玉座の間に響き渡る。


「エルセ、今だ!」


 ジークヴァルト様の合図に、私は迷わずペンを走らせた。

 彼が壊した世界の隙間に、新しい「真実」を書き込む。


『三月二十六日。検閲者たちの攻撃は、ジークヴァルト様の愛の前で、ただの退屈なインクの無駄遣いとなった』


 銀のインクが空中に一線を画した瞬間、次々と現れようとしていた検閲者たちが、実体化する前に「原稿上の消し炭」となって消滅した。

 

 圧倒的な、勝利。

 1回目・・・・の物語では、世界の理に抗うことなど考えもしなかった。

 けれど、今は違う。私の隣には、世界そのものを殴り飛ばしてでも、私を肯定してくれる人がいる。


「……終わった……のか?」


 震える声で呟いたのは、ジュリアン様だった。

 彼は豹変したジークヴァルト様と、見たこともない力を振るう私を、化け物を見るような目で見つめている。

 

 ――だが、その時。

 

 完全に静止したはずの空間に、ねっとりとした黒い影が這り回った。

 それは消滅した検閲者たちの残骸――インクの染み。

 それが、蛇のようにジュリアン様の足元へと集まっていく。


「な、なんだ……!? うわああああっ! やめろ、寄るな!!」


『――代替案(プランB)を選択。

 ジークヴァルトに対抗し得る「物語の主人公」として、第一王子ジュリアン・フォン・ローゼルを、強制的に再定義オーバーライトします』


「え……?」


 私が目を見開いた瞬間、ジュリアン様の身体が、黒いインクに包まれて急激に膨れ上がった。

 彼の瞳から理性が消え、代わりにシステムの冷酷なコードが、その虹彩の中に走り始める。


「……ク……クハッ……。ア、アハハハハ!!」


 ジュリアン様の声ではない。

 何万もの人間の声を重ねたような、不気味な笑い声。

 彼の背中から、黒いインクの翼が噴き出し、玉座の間全体を闇が侵食していく。


「……なるほど。私を消せないなら、このゴミを『勇者』にでも書き換えて、無理やり戦わせようというわけか。……作者(クソ野郎)も必死だな」


 ジークヴァルト様は、怯えるどころか、愉悦に満ちた凶悪な笑みを浮かべた。

 

「いいだろう。……かつてのエルセを苦しめた『偽物の主人公』だ。

 今度こそ、二度と文字に起こせないほど無惨に、粉砕してやろう」


 バグとなって再起動したジュリアンと、それを嘲笑う黄金の死神。

 二度目の物語は、もはや誰の想像も及ばない、血塗られた新約ファンフィクションへと突入した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


「文字の壁」を拳で砕くジーク様!

これこそ、なろう読者が求める「概念を越えた最強」の姿ですね。

ジーク様にかかれば、世界のルールもただの「つまらない設定」でしかありません。


しかし、システム側も黙ってはいませんでした。

まさかのジュリアンを「バグ強化」しての再戦……。

存在そのものがインクに侵食されたジュリアンに、エルセとジーク様はどう立ち向かうのでしょうか?


「設定を物理で壊すジーク様、最高にスカッとした!」「ジュリアンの変貌が不気味すぎる……」

と思っていただけたら、ぜひ評価【☆☆☆☆☆】やブックマークをお願いいたします!


皆様の応援が、システムさえも書き換えるエルセの「銀のインク」の糧になります。


次回、第34話は「二度目の婚約破棄(物理)」。

バグ強化されたジュリアンに対し、ジーク様が「物語の整合性」ごと彼を叩き潰します。お楽しみに!

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