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「無能な記録係」と捨てられましたが、私の綴る一字は世界の理。冷徹な第二王子に「君の全てを独占させろ」と溺愛され、私を捨てた国は歴史から抹消されました  作者: 星詠みミラ


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第27話:お茶会のルールは「死の宣告」

しばらくお休みをいただきました。

その間に前話(第26話)を改稿しております。

ここから読み始めた方は前話からお読みください。

「……殺す。跡形もなく、存在そのものを歴史の塵にしてやる」


 ジークヴァルト様の声は、もはや怒りを超えて、なぎのような静かな殺意に満ちていた。

 彼の纏う黄金の魔力が、パキパキと大理石の地面を凍てつかせ、不気味な黒い亀裂を走らせる。


「あはは! 怖い怖い! でもダメよ、番犬さん。この『遊戯場パンテオン』には、素敵なルールがあるんだから」


 赤いドレスを翻したベアトリクスが、黄金の定規を天に掲げた。


「――『第四権能:聖域の尺度メジャー・サンクチュアリ』。これよりここでは、優雅なお茶会が始まります。暴力は禁止、暴言も禁止。ルールを守れない『不合格者』は、存在の重さをゼロにされて消えちゃうの!」


 瞬間、極彩色の花々が意思を持ったように急成長し、私たちの周囲を囲む高い壁となった。

 庭園の中央には、豪奢なティーセットが並んだテーブルが出現する。

 ジークヴァルト様が剣を振り下ろそうとしたが、その腕がまるで見えない重りに固定されたように、空中でピタリと止まった。


「……何だ、これは」


「私の『定規』が測った『平和の距離』よ。ここじゃ、私の許可なく指一本動かすことも『ルール違反』になるの」


 ベアトリクスは勝ち誇ったように笑い、優雅な手つきでお茶を淹れ始めた。

 ジークヴァルト様の全身から、怒りで凄まじい火花が散っている。

 彼は無理やり腕を動かそうとしているが、筋肉が悲鳴を上げ、黄金の魔力が「ルール」に弾かれて霧散していく。


「エルセ、おいで。その怖い男から離れて、お喋りしましょう? 貴女がどうしてそんな『旧式』のペンを持たされているのか、教えてあげるわ」


「……私は、どこへも行きません」


 私は、震える手でジークヴァルト様の服の裾をぎゅっと握りしめた。

 目の前の少女が放つ「正しさ」の圧迫感。

 彼女の言葉は、まるで世界の理そのものであるかのように、私の心に重くのしかかる。


「あら、拒絶? それも『不作法』よ。私のルールでは、お茶会に誘われたら笑顔で応じるのが『正解』なの」


 ベアトリクスが定規を私に向ける。

 その瞬間、私の身体が勝手にテーブルの方へと引き寄せられそうになった。


「――エルセに、触れるなと言っている」


 ドォォォォォンッ!!


 地響きのような衝撃と共に、ジークヴァルト様の周囲の「空間」が、ガラスのように粉々に砕け散った。


「え……!? ウソ、私のルールを……物理で壊したの!?」


「ルールだと? そんな子供の遊びに付き合う暇はない。……この男がエルセの傍にいること。それが、この世で唯一の、不変で絶対的な『正解』だ」


 ジークヴァルト様は、身体を縛っていた不可視の鎖を、執着という名の暴力的な魔力で引き千切った。

 彼は一歩、また一歩と、ベアトリクスに向かって歩を進める。

 その足跡ごとに、彼女が創り出した美しい花々が、腐り、枯れ果てていく。


「暴力禁止? ……いいだろう。ならば、これは暴力ではない。――ただの『清掃』だ」


「ひっ……来ないで! 『長さの改変ショートカット』!」


 ベアトリクスが慌てて定規で空間を叩く。

 彼女とジークヴァルト様の距離が、一瞬で数百メートル先に引き離された。

 ……はずだった。


「……逃がさんと言ったはずだ」


 気づけば、ジークヴァルト様は彼女の目の前に立っていた。

 定規が測った「距離」さえも、彼の「一刻も早くエルセの元へ戻り、不純物を排除したい」という異常な渇望が、最短距離ゼロへと書き換えてしまったのだ。


「ジークヴァルト様、待ってください!」


 私は、銀のペンを握りしめ、空中に一文字を刻んだ。

 彼の怒りに寄り添うように。


『――三月二十六日。この場所の主導権は、ジークヴァルト・フォン・ローゼルにある』


 白金の光が庭園を走り、ベアトリクスの黄金の定規が、真っ黒な錆に覆われていく。


「あ……あぁっ!? 私の定規が……測れない!? この男の愛が重すぎて、メモリが振り切れてる……!?」


 ベアトリクスは、恐怖に顔を歪めて後退りした。

 彼女の「定規」は、世界の事象を測り、規定する力。

 けれど、ジークヴァルト様のエルセに対する「異常なまでの執着」は、もはや世界の計測範囲を遥かに超えた、規格外のバグだったのだ。


「……終わりだ、小娘。エルセを『旧式』と呼び、私を『譲れ』と口にしたその舌、根元から焼き切ってやろう」


 ジークヴァルト様の剣が、ベアトリクスの喉元に突きつけられた、その時。


「……ふふ、あはははは! いいわ、最高にイカれてる! でも、エルセ。貴女、気づいてないの?」


 死を目前にしながら、ベアトリクスが歪な笑みを浮かべた。

 彼女は錆びついた定規を私に向け、最後の一言を放つ。


「貴女のその『銀のペン』。……書くたびに、貴女の『寿命』を削ってインクにしてるわよ? その男と幸せを記せば記すほど、貴女の死は確定していくの。……ねえ、それも『ハッピーエンド』って呼ぶのかしら?」


 ペンを持つ私の指先から、スッと血の気が引いた。

 ジークヴァルト様の剣先が、わずかに震える。


 ――幸せの記録は、私の命の削りカス?

 

 ベアトリクスは、その隙を見逃さず、煙のように姿を消した。

 後に残されたのは、静まり返った空中庭園と、私の手の中で冷たく光る、銀のペンだけだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


「ルール」を「愛(執着)」でぶち壊すジーク様、安定の規格外っぷりでしたね!

しかし、去り際のベアトリクスが残した残酷な事実。

「幸せを記すたびに命が削られる」という設定……これぞ超長編を揺るがす最大の試練です。


「ジーク様、物理法則まで無視するの笑ったw」「命を削るインク……そんなの悲しすぎる……」

と思っていただけたら、ぜひ評価【☆☆☆☆☆】やブックマークをお願いいたします!


皆様の応援が、残酷な設定さえも書き換えるエルセの「筆の魔力」になります。


次回、第28話は「獅子の咆哮、神域を揺らす」。

ショックを受けるエルセを、ジーク様がいかにして「立ち直らせる」のか。

「命が足りないなら、俺の命をインクにしろ」という、さらなる狂気(溺愛)が炸裂します! お楽しみに!

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