13.空奏
赤眼の男が荒野を歩けば、そこには花が咲き乱れ、森林が生まれ出で、小鳥の囀りや鹿の鳴き声が聞こえてくる。
それらを背後にしてツェン=フォーカスが極東にある小さな島へと歩を進めた。
自室にいるシェルアードをウェーブのかかった長髪の女―――メリュアラーゼが訪ねる。
「ソーマから話は聞いてる。大丈夫?」
「ヤツの名前など聞きとうない」
膝を抱えて壁際に蹲っている黒髪の女が答えた。
「辛いよね」
「リリィのノートは見たのじゃろう?オヌシは辛くないのか?」
嗚咽のような呟きに長身の女がシェルアードの前に膝をついて答える。
「驚きはしたけどシェラほどじゃない思う。シェラはソーマとの付き合いが長かったから気持ちは分かる。私だって兄さんが卑怯な隠し事してたら許せない」
「ワシにとっての弟達を騙していたことは卑怯者のすることじゃ」
浅黒い肌の女が優しくシェルアードを抱きしめる。
「大丈夫」
「ワシ等は裏切られたのじゃぞ」
震える肩を抱いてメリュアラーゼが告げる。
「理由があるのよ」
「オヌシはその訳を知っておるのか?」
顔を上げたシェルアードにメルが首を横に振った。
「皆を集めてる。信じてもらうために」
自分へということを理解したシェルアードが顔を袖で拭って立ち上がる。
「すまぬ。心配をかけた。話もせずに疑うワシが愚かだったのぅ」
「納得できなきゃ叩いてあげなさい」
「うむ!!言われんでもそうするわ!!」
二人の女が会議室へと向かっていった。
青眼の巨漢が王女の部屋で上質な椅子に座っている。
「どうぞ」
栗色の髪の少女がテーブルにブラックコーヒーを差し出した。
「選択の時が来る」
対面に座るシルファにクィンがそう告げた。
「バーズ、私は」
「クィンと呼べ」
言葉を遮られ視線を落とした少女が先の言葉を続ける。
「私はあなたといることを選ぶ。エルもそう思ってる」
「バーズの決断に委ねるということだな」
「あんなのどうでもいいよ。エルは絶対に私と同じ考えだから」
光ることのない青い眼が少女を見つめる。
「明日、審判が下る」
そう告げた青い双眸は暗い輝きを放っていた。




