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The ability  作者: 不破陸
Bandits
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11.帝国

ひとしきり海を泳ぎ回った赤眼の男が岸に上がる。


体に手をかざした男の姿が黒いスーツ姿へと変化した。


「あんま水爆の影響もなかったのかねぇ」


広がる平野を見た艶やかな黒髪の男が言った。


「確か山脈を作ったような・・・」


視界の先に見えた大型のヘリコプターに気づいた赤眼の男が子供たちに笑顔を向ける。


「丁度いい。空の旅でも楽しみながら帰ろうぜ」










夕暮れ、ガス燈が灯り出す城下町を青いマントの少年が行く。


わざと肩をぶつけてきた男が文句をつけてくるが、青いターバンを巻いた少年はそれを無視した。


「人にぶつかっといて謝罪もねぇのかよ!とんだクソだな!」


そう叫んだ男にシェルアードが頭を下げる。


「弟が無礼を働いた。代わりに謝るから許してくれんかのぅ」


隣にいる金髪の少年も頭を下げているのを見て男が調子づく。女の襟を掴んで男が捲し立て始めた。


「テメェ等バカなのかぁ!?謝りたきゃ金!金よこ」


言葉の途中で二人の裏拳が男の頭に飛んだ。


崩れ落ちる暴漢にシェルアードとエルが吐き捨てた。


「とんだクソじゃのぅ」




王宮に忍び込んだバーズがそわそわしているのを見てシェルアードが言う。


「日記ならワシ等が探しておく」


「トイレならあっちだよ」


金髪の少年が勝手知りたる元我が家の説明をした。


「お!そうか!漏れそうなんでな!頼んだぜ!」


走り去っていく青装束の少年の背中を見ながら黒髪の女が微笑みながら言う。


「よほど姫に逢いたかったようだのぅ」


「バーズにとっては特別だからね。シルファは」


「姫は優しいからのぅ」


言葉を交わしながら二人がリリィの部屋へと向かった。






ノックの後、青装束の少年が王女の部屋の扉を開けた。


「よう、久しぶり」


「来るなら言ってよ」


突然の来訪にIHで湯を沸かし始めた栗色の髪の少女が言った。


ソファに座っている少年がそれを眺めている。


「前から気になってたんだけどよ」


火もなく蒸気を発し始めるケトルを見てバーズが訊ねる。


「どういう仕組みなんだ。それ」


「神術。君の剣と同じだから分かんない。私は使い方を知ってるだけ」


沸いたお湯で紅茶を淹れた少女が机にそれを並べる。


「今日はどうしたの?」


「クィンとリリィの部屋を改めにきた。この部屋も、城内すべてを」


紅茶の水面に映った自分の顔を見つめながらシルファが答える。


「相変わらず正直ね」


「お前に嘘ついてもしょうがねぇ。俺はあのカス野郎を」


「その言い方はやめて」


キッと睨みつけられてバーズが言い直す。


「クィンを調べなきゃならねぇ。この世界はどこかおかしい」


「そう?みんな幸せそうじゃない」


口を尖らせてバーズが言う。


「国が荒れてる」


「人はそんなもの。君は何を求めてるの?」


静かに紅茶を飲むシルファに青眼の少年が言う。


「何か変なんだよ。調べれば調べるほど、この世界は突然」


「気のせい」


カップを置いた少女がブラウンの瞳で盗賊を見つめて言った。


「そんなことどうでもいいじゃない。君もここで一緒に暮らそうよ。そしたら皆も帰ってくる」


「ヤツが戻ってきたら考えてやる。邪魔したな」


部屋にあるいくつもの文明品を懐に仕舞った少年が言った。






「本当に日記などあるのかのぅ」


「リリィは几帳面だったから、僕らの育児日記くらいはつけてると思う」


長い黒髪の女と金髪の少年が、バーズとエルの乳母の部屋に辿り着いて家探しを始めた。


「ふーむ。この部屋は探さなかったからのぅ」


机の上に置いてある金髪の女性と幼い二人の少年が写っている写真を目にし、シェルアードが引き出しを開ける。


日記と思しき手帳を手に取って長い黒髪の女がページをめくった。


始めはバーズとエルの成長記録などが書かれていて微笑みながらそれを眺める。


が、日付を戻る度に信じられない記述が続く。


『約束の時は12年後。子供たちを黙って見守ることになる』


『エルを出産。バーズと一緒に育てるよう命じられる』


『悠里の子を出産。バーズ=プラストゥとクィンが名付ける』


『ソーマ、シルファと一緒に生き残りの回収を行う。3人の幼児にシェルアード、ガンシュート、メリュアラーゼと名付けた』


ところどころ理解ができない単語を読み飛ばしながら、最後に挟まっていた紙を開く。


『人類再生』


そう書かれた手記。バーズ=クィンファルベイが綴ったそれを見たシェルアードが額に脂汗を浮かべて日記を閉じる。


「さっきから何読んでるの?リリィの日記?」


「あー、懐かしい本が出てきてのぅ。サボってしまった」


呼吸が荒く、声色も普段とまるで違う女にエルが言う。


「師匠。それは僕に見せられないものでしょうか」


コクリと頷きシェルアードが答えた。


「これはワシ等で処理する。オヌシとバーズには決して見せられん」


「シェラがそう言うなら」


少し長い髪を後ろで結った少年が続ける。


「僕はシェルアード師匠を信じます」


真剣な顔つきでエルがそう返事をした。

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