10.愛歌
「懐かしいな」
エルとシルファを連れた赤眼の男が言う。
「ここでバーズが死んだ時はどうし・・・」
艶やかな髪の男が言葉を切った。
「死んだ?誰が」
反応を示さない二人に黒いスーツを脱いだ男が言った。
「ちょいと海水浴してくるぜ!!」
物言わぬ少年少女が何度繰り返したか分からぬ光景を見つめていた。
話を終えたシェルアードがメイルに問いかける。
「のう、オヌシが喋れんのは分かったが筆談もできんのか?」
首を横に振った甲冑を見てソーマが言う。
「あれから5年経ちますからね。聞くのは失礼ですよ、シェルアード」
「む、そうだな。すまぬ、メイル」
優しく首を横に揺さぶった甲冑にシェルアードが笑顔を返す。
その後ろに腕を組んだ青髪の少年が佇んでいるのを全員が認識した。
「あの時は格好良かったぞ。我が君」
振り返ったシェルアードがバーズに言った。
「その昔話で思い出した。城へ行く」
青装束を身に纏った少年がそう言葉を告げる。
「その出で立ちなら民に気づかれぬとは思うが・・・お目当ては何かのぅ?」
「リリィの日記があるはずだ。それを回収する」
バーズの言葉にエルが質問をする。
「今さら?何のために」
「オヌシらの乳母の日記を盗み読みとは感心せんのー」
メイルに眼をやったバーズが答える。
「クィンと一緒にリリィもいなくなった。同時にコイツが天から降ってきた。何か関係があるんじゃねぇか。情報は少しでも欲しいからな」
短剣を腰にしたバーズがシェルアードとエルの肩に手を置く。
「一緒に来てもらうぜ。西国の王子様、侍女」
「んー、懐かしい呼び名だのぅ」
「滅びた国の王子って呼ばれてもね。僕はバーズの小間使いだよ」
その言葉に青眼の少年が笑顔を返す。
「生まれた時から一緒にいたんだ。お前等は俺の姉弟だって思ってる」
立ち上がった二人にバーズが号令を飛ばす。
「行くぞ!!」
麻の服を纏った少年と、胴着姿の女がその後ろについていった。




