78.それから
「単刀直入に言おう」
青眼の男がログに告げる。
「契約を解除する」
「ほう?」
宿の一室で向かい合うバーズの意外な言葉にログが疑問の声を上げる。
「今すぐにという訳ではない。今年の四月には子供達もそれぞれ暮らし始める」
「そうか。上手くいくことを願うよ」
静かな笑みを浮かべた男がそう告げた。
「そこで一芝居打ってもらいたい」
「ほう?」
先程とは違う抑揚でログが声を上げる。
「リネアを東国に帰し、君にはツェンを殺して姿を消してもらう」
「何を言っているのか分からん」
青い眼を光らせる男にログが手をかざした。
「お前のそれは便利だが気分が良いものではない。言葉で話せ」
「あまり時間がない」
バーズが強烈に青い眼を光らせる。
「リネアには伝えてある」
「俺はこのまま東国へ行けと」
「三か月もあれば着けるだろう?」
ポケットから煙草を取り出した男がそれに火を灯す。
「ツェンを殺せたなどと帝国の連中は信じない」
「一本くれないか?」
黙ってログが箱を差し出す。
対面する男が箱から突き出ている一本の煙草を手に取った。
卓上に置いてあるライターを無言で借りた青眼の男が、一吸いし、煙を吐き出した。
「だから君にも表面上は死んでもらう」
黒目の男が紫煙をくゆらせる。
「3月までにはリネアから母親に連絡がある。顔合わせ代わりに挨拶を済ませておけ」
「その一月後にはいなくなる前提の顔合わせとはな」
そう言い終えるとログが煙を肺に溜め込んだ。
「東国や旧帝国、極東の連中の歯止めとして君にはサラの近くにいてもらう必要がある」
溜め込んだ煙を吐き出すと男が言う。
「そう上手くいくとは思えない。俺一人ではさすがにな」
「ヤツは東国に残るさ。そうなればヤツ等は手を出せなくなる」
「だといいが」
灰皿に煙草を押し付けたログが、箱から取り出した煙草に火を灯した。




