66.魔神
パーティが行われた後の深夜、リビングにいる二人の男達が言葉を交わす。
「戻ってくんなら連絡くらいしろよ」
「ならば呼び出す場所は考えておくべきだったな」
恨み言を言う赤眼の男に、青眼の男も恨み言を返した。
「あン?」
赤眼の男の生返事に眉間に皺を寄せたバーズが告げる。
「俺は三か月前、爆発に巻き込まれ一度死んだ。それはいいか?」
「で、また現れたって訳か」
「その認識でいい。ただお前と初めて会った場所にな」
何処か嬉し気な表情をしながらバーズが言葉を続ける。
「旧帝国の首都からここまでどれだけかかると思う?」
「そりゃ遠いけどよぉ、三か月もかからねェだろ」
椅子に座りなおしたバーズが再度質問をする。
「そこが今どうなっているか覚えているか?」
「あー・・・・・・・・・知らねぇな」
表情を引きつらせたツェンに、PCを立ち上げながら青眼の男が口を開く。
「思い出させてやろう。お前が作った500km以上あるクレーターのド真ん中だ」
「・・・やらせたのお前だし」
怒りと笑いが混在する表情を見せたバーズが言葉を続ける。
「生まれたままの姿で11月の北極付近を寄る辺もなく彷徨うのは堪えたよ、ツェン君」
「・・・あン時ぁ服は着てたじゃん」
答える男に一瞥もくれずPCを操作している青い髪の男が言う。
「寒冷地での夏服は全裸と変わらん」
「あのぅ、さっきからその表現止めてもらえませんかねぇ?」
そう告げるツェンのげんなりした表情に、バーズは何処となく笑みを浮かべる。
「お前が呼び出したのだから文句を言うな。ルーチェの方はどうなっている?」
「へぇへぇ、そりゃ私が悪ぅございましたよ。ルーチェちゃんに関してはお前さんがいない間は目立った動きはなかったな。ログと同居してるみてぇだが」
青い眼をツェンへ向けたバーズが質問をする。
「ログは何と言っている?」
「始末は自分でつけるとよ」
「そうか。ならば収穫はあったな」
眠れずにいた少女が扉越しに二人の会話を聞いている。
「お前、それルーチェちゃんを泳がせるために死んだってことか?ガキ共まで巻き込んでよぉ」
険悪な表情をしたツェンがバーズに詰め寄る。
「いや、ルーチェは関係がない」
PCを操作しながらバーズが答える。
「エルやシルファに関する引継ぎご苦労。リネアとログの将来まで考えていたようだな」
「誤魔化してんじゃねぇ!!テメェがそういう腹積もりならテメェなんざァくたばってた方がマシだ!!」
「やってみるか?」
憤怒を瞳に宿した男に、青眼の男が言葉を返す。
「テメェ!!俺が殺れないとでも」
「お前に俺は殺せない」
瞬間、ツェンが繰り出した拳がバーズの顔面を打ち抜く。
平然としている青眼の男が挑発の言葉を繰り出す。
「殺す気でやれ」
歯を食いしばりながら拳を握りしめる男に、バーズがその青い眼を光らせた。
音を超えた速度で打ち出された拳を青眼の男が顔面で受け止める。
「これが収穫の一つだ」
己の意図に反して動いた拳を開いたツェンにバーズが告げる。
「お前の存在とリンクしたようでな」
青眼の男が苦笑しながら言う。
「お前が存在する限り、俺も死ぬことはない」
「そいつぁ願ってもないことだ。でもよ」
「ルーチェのことは初めから分かっていたことだろう」
「俺が言いてぇのはなぁ」
勢いよく開かれる扉の音を聞いて言い合う二人が視線をそちらに向ける。
「今の話、ホント?」
寝間着姿のシルファが喜びと当惑が混ざった表情で問いかける。
「ああ、どちらも本当の話だ」
ブラウンの瞳の少女に青い眼を光らせた男が答える。
別の意味で眼を輝かせたシルファがバーズに駆け寄る。
「もういなくならないでね」
「ああ、約束だ。君に寂しい思いはさせない」
二人のやり取りを見ていたツェンが黙ってソファに座る。
その姿を見たバーズが声をかける。
「俺に何か言いたかったんじゃないのか?」
「いやぁ、別に」
すっとぼけるツェンにシルファが近づく。
ソファの脇に立ったままの少女に赤眼の男が顔を向けた。
「どうかしたかい?」
「ん・・・」
もどかしそうに少女が口を開く。
「あの時、選ばせちゃってゴメン。後、ちゃんと私たちのこと考えてくれてて・・・その、ありがと」
その言葉に、いつものように笑いながらツェンが答える。
「シルファちゃんが気にすることはないぜぇ?ああなったのは俺の落ち度だ」
投げキスをしてツェンが続ける。
「それに俺は女の子を悲しませられねぇのよ」
そう告げられたシルファが笑顔でそれに応えた。




