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The ability  作者: 不破陸
The ability
63/112

63.再会

希望を与えられてはそれに失望する日々を見せられる。

かつて味わった思いが金髪の少年の心を、バーズ達と過ごした幸せな日々から遠ざける。

何処をどう走ったか思い出せないまま、少年は路地裏へと迷い込んでいた。

大通りに出れば戻る道は分かるだろう。そう分かっていても金髪の少年は知らない道を走り続けた。

「クソガキが!肩当たったぞ!」

体に触れてもいない少年に足を引っかけ、転ばせた金髪の青年がエルに因縁をつける。

立ち上がった少年がレンガ造りの壁を殴りつけると大穴が空く。

その拳を振り上げて金眼を見開くエルが青年へ飛び掛かる。

「待て待て待て!!」

情けない声を上げる金髪の青年に拳が届く寸前、銃弾が金髪の少年を弾き飛ばした。

「おまっ、お前っ、何して!!?」

「ゴム弾だ」

ライフルを手にした茶髪の青年が答える。

「死んだらどうするつもりだ!?あれエルだろ!?」

「知るか。お前が死にたかったか?」

そう言った茶髪の青年がハンドガンを向けながら、倒れている少年に近づく。

「よお」

体勢を整え、蹲る少年に男が告げた。

「ツラにお上品が書いてある」

嫌味と共に茶髪の青年がエルの顔面を蹴り飛ばす。

「死ね」

「やめろよ!!」

そう叫んだ金髪の青年がハンドガンを持つ茶髪の青年を突き飛ばす。

「ニコ、何のつもりだ」

「お前本気で殺すつもりだっただろ!!」

照準のずれた銃口の先にある地面には実弾が撃ち込まれていた。

「やらなきゃ俺達が殺される」

ゴム弾や蹴られた痛みを物ともせず金眼の少年が立ち上がった。

「戻ってんな」

「戻ってるよ」

顔を見合わせた青年二人が少年から背を向けて全力で走り去る。

「次で止められなきゃ殺す」

「あの角材でやる!!」

二人の後を追う金眼の少年を背に各々が武器を掴む。

ニコと呼ばれた金髪の青年に飛び掛かるエルに、二人が手にした凶器を振りぬく。

「いらっしゃい!!」

そう叫んで少年の額に叩きつけた角材と鉄パイプが破砕する。

金髪の青年には、その舞い散る破片がスローモーションに見えた。

自身の首筋に伸ばされる少年の腕。それが喉に届く時間が今までに味わった何より長く感じられる。

かつてエルとスラムで過ごした記憶が蘇り、友との野望が口から零れる。

「ビッグになりたかったなぁ」

「・・・ニコ?」

死の間際の幻覚かと思われた永遠のような時間。それは実際にエルが動作を止めたためだった。

金色の眼で自身の碧眼を見つめるエルの頭を涙目のニコが軽く叩く。

「死ぬかと思っただろうが!!」

「痛っ」

金の眼を閉じながら、みるみる内に膨れ上がるタンコブに手を添えた。

「お前もそんなになるんだな」

額に触ろうとする金髪の青年に、茶髪の青年が錆びた鉄パイプでその頭を小突く。

「お前も味わってみるか?」

「イヤでーす」

鉄パイプを投げ捨てた灰色の目の青年がエルに言う。

「ここで何してる」

「ん・・・何か、嫌になって・・・分かんなくなって・・・」

金髪の少年が頭を抱える。

「オルヴォ・・・は何でここに・・・?」

聞き返された灰色の目の青年がエルに答える。

「前に会った時に言ったろ。いつまでも更生だとかガキの面倒見る趣味はない」

「俺達はビッグになるために村を出たんだからな」

そう告げる親友が金眼の少年に言葉を続ける。

「俺達ウエスタンエッジに睨まれちまって、ここじゃショーバイどころじゃねぇから中央に稼ぎに行く途中なんだ」

胎動する好奇心を抑え切れない様子でニコが捲し立てる。

「お前も一緒に行こうぜ。どうせあの青鬼と赤鬼が嫌になったんだろ?」

その言葉に金髪の少年が眼を伏せた。

「俺達もアイツ等に酷ぇ目あわされたからなぁ」

若干の間を置いてエルが言葉を口にする。

「俺、約束したんだ」

「ん?」

不意をつかれて生返事をするニコに、エルが金の眼を向けた。

「守るって約束したヤツがいるんだ」

「うん?」

思案するニコが何かを思い出してエルの頭を撫でる。

「あー!シルファとか言ったっけ!羨ましい野郎だなぁ!」

「頭ぐわんぐわんする。触るな」

金の髪の上に置かれた腕をエルが弾いた。

「だから、戻んなきゃ」

「そんなの放っといても構わねぇだろ」

弾かれた腕を擦りながらそう言ったニコを他所に、オルヴォが告げる。

「嫌ンなって逃げ出してきたお前を誰が受け入れる」

「戻んねぇとアイツに嘘ついたままになる。嫌われたってそれでいいよ」

灰色の目が、頭を押さえている金髪の少年を見つめる。

「そん時ぁ帰る場所なんてないってこと覚悟してんだな?」

「うん」

決意を秘めた眼をオルヴォに向けてエルが答える。

「アンタはどう思う?」

エルの背後に聳え立つ巨躯の男にオルヴォが問う。

「私も約束した以上は守らなければならないことがある」

聞き覚えのある、帰ってくるはずのないその声を耳にした金髪の少年が振り返る。

「バーズ!!」

馴染みのある青い瞳を見つめてエルが驚愕の表情で叫んだ。

「心配をかけたな」

「バーズ!バーズ!!生きてたんだ!!」

声の主である巨体に飛びつくエルを見てオルヴォが言う。

「あー?最近までアンタ死んでたんだ?」

「敵が多くてね」

顔中から溢れ出る液体を服に擦り付けられている青眼の男が答えた。

「だろうな」

そう告げたオルヴォがバーズに銃口を向ける。

「俺が拾ったモンを勝手に盗んで勝手にいなくなった訳か」

「やめろよ」

ニコが茶髪の青年を制止する。

「よくこのカスを庇えるな」

「エルに当たる」

二人の会話を聞いた青眼の男がオルヴォの腕を掴んで引き寄せた。

「これなら大丈夫だろう?」

銃口を自身の眼前に固定させてバーズが言う。

「何してんだ!!」

金色の眼を充血させたエルが拳銃を弾き飛ばす。

深く溜息をついてオルヴォが言う。

「エルに免じて、無しってことにしておく」

地面に落ちている銃を拾うと、青眼を見つめながら灰色の目の青年が改まり告げる。

「こいつのこと、よろしくお願いします」

青い眼を光らせた男が言葉を返す。

「ああ、約束しよう。君たちの門出に祝福を願うよ」

「もう行っちまうのか・・・?」

言葉と共に金色の眼を向けられた二人が背を向けて走り出す。

「いつまでもココにいるのはヤベーんだよ!あばよ!元気でな!!」

「二度と顔見せんな!」

振り返った二人の口角が上がっていたのを見てエルがその背中に声をかける。

「ありがとう!!」

「俺たちがTVに出るくらいビッグになったられんらくぇ」

言葉の途中で金髪の青年が拳銃のグリップで頭を殴られた。

「俺達みたいのにはなぁ、もう会わねぇ方がいいんだよ」

「ンだそれ」

口喧嘩をしながら走り去る二人を眺めてバーズが言う。

「では、帰るとしようか」

口をへの字に曲げたエルが俯く。

「先生にも・・・ツェンにも、顔合わせ辛い」

「帰り辛いのは俺も同じさ」

少し背の伸びたエルの肩に青眼の男が手を置く。

「お詫びにケーキでも買って帰ろう」

「うん!」

金髪の少年が嬉しそうに返事をした。

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