54.君へ
肉片が飛び散っているフードコートに辿り着いたツェンがその赤い瞳で周囲を探る。
エルとシルファを確認できない男が端末を取り出し、バーズと連絡を取ろうとする。
繋がらない端末を切った男の背後から現れたログが、血の臭いに顔を顰めて声を上げた。
「何だ、これは・・・」
その表情を眼にしたツェンが口を開く。
「お前、俺のケータイに連絡したか?」
「していない。先ほど来たのはバーズの指示じゃなかったのか?」
端末を握りつぶしたツェンが言う。
「お前のも全部ブッ壊しておけ!」
その言葉を聞き、身につけていた通信機器を床に叩きつける。
「ナメられたものだ」
黒目の男がブーツでそれ等を粉々に踏み砕き、苦々しく口にした。
金髪の男が黒交じりの青髪の男を見て告げる。
「一緒に来てもらおう」
「レーベルク。何のために?」
事務所の扉を開けて入ってきた金髪の青年にバーズがそう告げた。
「分かる必要はない」
「説明もできない馬鹿とは付き合えない」
「扉を開けられただけじゃ理由にならないか」
そう言って金髪の男がエルとシルファが捕らえられている画像をバーズに示した。
「自殺がしたいのか?」
何も言わない男に青い眼を光らせたバーズが言う。
「お前等の願い通りにはならない」
「私自身は何も願わない」
その言葉に青髪の巨漢が椅子から立ち上がり、青い眼を光らせて金髪の男に言葉を吐いた。
「いいや、お前は願うことになる」
運転をしている漆黒の眼の男に、後ろ手に手錠をかけられたエルが言う。
「何なんだよ、テメェ等は」
「窓の外を見ろ」
男がそう告げると眼に映る限りの街を歩く人々が爆発していく。
「止め」
言いかける少年と少女を挟んで隣に座る男の頭が爆ぜた。
車内に飛び散る血飛沫が栗色の髪の少女の顔にかかる。
「口を開くな。次はシルファの頭がそうなる」
少女が身を震わせて死体越しにエルへと縋る。
血に塗れた頬を擦り合わせ、黙って二人は心を慰め合った。




