55.傍にいない誰か
金髪の青年に連れられた施設で青眼の男が言う。
「お前の言う通りにする必要はない」
「人類に対して人間らしくやるのだろう?」
バーズの言葉に答えたレーベルクが施設を進んでいく。
最奥部まで辿り着いた二人の前に現れた黒眼の男がバーズに言い放つ。
「俺達も人間だ。その能力でどうこうされる筋合いはない」
目隠しをされたエルとシルファが強化ガラス越しに閉じ込められているのを眼にした青髪の男が言葉を発す。
「貴様等に能力を使った覚えはない」
「俺達には関係がない」
青眼の男と黒眼の男の対話とは呼べない通じ合わない会話に、レーベルクが割って入る。
「二人の頭を吹き飛ばされたくなければ子供たちの隣の部屋に入ってくれないかね」
金髪の男に青い眼を光らせたバーズが黙ってガラス戸を開ける。
ガラス越しに黒眼の男を見やったバーズが記憶を読むことさえできない、あまりにもドス黒い感情が己の中に侵入し、えずく。
「何があればそうなる」
「貴様らが殺したことすら認識できない人間の執念」
言葉を一旦切り、黒眼の男が再度告げた。
「お前には理解しえない人類の憎悪」
闇より深い黒を宿した瞳でバーズの青い眼を見つめて男が続ける。
「俺は神を探していた」
「俺は神などではない」
その返事に漆黒の心が表情を変えず言った。
「どの神を選ぶのか、それが人類だ。気に喰わないならお前もガキも俺自身も全てを消し飛ばす」
「私は遠慮するがね」
レーベルクと黒眼の男の言葉に青い眼の男が瞳から光を消し、置いてある椅子に座った。
事務所に戻ったツェンとログがその部屋の中にいる赤い瞳のロボットを眼にする。
「こいつは・・・」
「東国でお前とリネアを狙ってたヤツだよなぁ」
ログにそう言いながら人型のそれに近寄る赤眼の男に、赤い瞳の機械が音声を発する。
「私は敵ではありません」
「何だァ?こいつ喋んのか!?」
ロボットが発した音声にツェンが驚嘆の意を示す。
「攻撃の意志はありません。攻撃の意志はありません。危害を加える意図はありません。危害を加える意図はありません」
そう音声を発しながら胸から照射される光が空中にディスプレイを映し出す。
エルとシルファが捕らわれている姿をツェンとログが黙って見ている。
「私に従わなければ、この二人は殺されます。私に従わなければ、この二人は殺されます」
無機質に響く声を聞いている二人に機械音が続ける。
「ついてきて下さい。ご案内いたします。ついてきて下さい。ご案内いたします」
「何処へどうやってご案内していただけるんだ?」
赤眼の男が赤い瞳の機械へと問いかける。
「彼等の場所にお連れする輸送機があります。ツェン=フォーカスさん。彼等の場所にお連れする輸送機が」
開閉する口の中にツェンが指を突っ込むと赤い瞳をした機械が音を止めた。
「耳障りだ」
「顎が動かなければ喋れないとは随分と人間を模した造りだな」
ログの言葉を背中に受けながら指を抜いたツェンが機械に告げる。
「ぶっ壊されたくなきゃ、とっとと案内しろ」
「貴方達を運ぶ輸送機を近隣に降下させます。お待ちください。貴方達を運ぶ輸送機を」
そう告げる赤い瞳の機械の口に赤眼の男が拳を突っ込む。
「イライラさせんな。早くしろ」
「機能の阻害から10秒で自爆します。目的の遂行が不可能な状況になれば10秒で自爆します。機能のそが」
先程までとは音質が違う警告音にツェンが口から手を引き抜いた。
「だったら外でやってろ」
機械に対し指を弾くと、その金属製の体が窓を突き破り外へ飛んだ。




