53.Anarchy Rage
「いくぜぇ!!」
「早いー!」
「まだまだまだまだぁー!」
新しく出来たアミューズメントパークで赤眼の男が二人の子供とエアホッケーで遊んでいる。
「隙あり!!」
「甘ェ!!」
エルが打ち返したパックをツェンが指で弾くと二人が守るゴールに入った。
「今のは汚ぇだろ!?」
「おお?負け惜しみか、エル君よぉ」
その言葉にカチンときた金眼の少年がパックを台に置き、指で打ち出そうとする。
「怪我するからやめて」
エルを制止し、パックを自陣のゴールに入れたシルファが言う。
「興奮してたのかもしれませんが、今のは大人気ないです」
敬語で指摘されたツェンがバツの悪い顔で答える。
「あー、そりゃ悪かったよ」
その時、男の端末が鳴った。
端末を手にして連絡元を見た男が、スーツの内ポケットから財布を取り出し数枚の紙幣をエルへ渡した。
「用事が出来た。ちょっと二人で遊んでてくれ」
「野郎と二人でお茶なんぞしたかぁねェんだがなァ」
不機嫌な表情をした艶やかな黒髪の男が言う。
「ルーチェちゃん、お前が俺の頭に弾ァ食らわせても何の反応もなかったな」
パーク内にある喫茶店で赤眼の男が対面に座るログに告げる。
黙ってコーヒーを飲む男にツェンが更に続けた。
「こっちとしちゃ始末すンのは簡単だ、が」
角砂糖を紅茶に放り込んだ赤眼の男が言う。
「俺はルーチェちゃんに手をかけたくねェんだよ」
「バーズは何と言っている?」
カップをスプーンで回すツェンが面倒くさそうに答える。
「ターゲットは自分だから関わらない。俺達に任せる、だとよ」
「バーズが標的なのか?どういうことだ?」
紅茶を口にしたツェンがダルそうに答える。
「知りたきゃ自分で聞け」
「連絡役として来たんだろう?お前には説明を果たす義務がある」
飲み干したカップを受け皿に置いた赤眼の男が勢いよく席を立つ。
「俺の知ったことか!!」
「おい」
呼び掛けるログの声を背中に受けたツェンが無言で店を出ていった。
賑やかな音が響く中、ベンチに腰掛けアイスを舐めている金髪の少年が言った。
「何かさぁ、何かよく分かんねぇけどルーチェがいるとみんな変じゃねぇ?先生も」
「そう?」
隣に座り同じくアイスを舐めている栗色の髪の少女が答える。
「イライラしてるっていうか、いつもと違うこと言ってくるし」
しばらくの沈黙の後、シルファが口を開く。
「嘘吐いたのはごめん」
「ん?」
アイスを食べ終えた少年に少女が言う。
「皆ルーチェさんのことを警戒してたから。私も君に嘘ついた」
「俺達が会ったのが春だったとか、そういうのか?」
「うん」
そう言って浮かない顔をして黙っているシルファにエルが告げる。
「嘘っていうか、理由があるんだろ?」
「うん」
「じゃあ気にしねぇよ」
そう告げられた少女が少年に食べかけのアイスを差し出す。
「食べて」
「いいのか?」
「うん」
手にしたアイスを頬張る少年を愛おしく見つめる少女が微笑んだ。
「少しいいかな」
その喜びを掻き消す程のドス黒い物を瞳に宿した男が二人に声をかける。
「何だテメェ!?」
妖しく光る黒い眼を見てエルが身構えながら叫ぶ。
「バーズさんからの使いの者でございます」
「エル、逃げよう!!」
椅子から立ち上がるとツェンの端末に連絡を入れながらシルファがそう言った。
「逃げたら殺す」
男の言葉の後に周囲にいる客が爆裂していく。
「逃げたり俺に触れば、お前等も同じことになる」
漆黒を瞳に宿した黒髪の男が二人の行動を制止した。




