50.持戒
「ちょーっと悪いんだけど、続きは二人でやってくんないか?」
料理を作るシルファとルーチェに赤眼の男が告げた。
「どうかしたの?」
「急用が入ってね」
エプロンを脱ぎ、スーツの内ポケットに端末をしまいながらツェンが答える。
「この間のお返しの料理、シルファちゃんと一緒に用意して待ってまーす」
「頼んだぜ」
投げキスをする赤眼の男を赤毛の女が笑顔で送り出した。
玄関が閉じられてからしばらく経つとルーチェが栗色の髪の少女に口角を上げて問いかける。
「たまに来るリネアさんと大家さんってどういう関係なの?仲良さそうだけど恋人とかぁ?」
「よく知りませんが借金の取り立てに来てるそうです」
無表情にシルファがそう言い放った。
「で、俺はいつまでルーチェちゃんを調べりゃいい?」
車の運転をしながら赤眼の男が助手席に座る青眼の男に問いかける。
「特に期間は設けていない」
「何だそりゃ」
言葉は粗雑ながらも丁寧にハンドルを切りツェンが言った。
「ログと因縁がある従業員が俺達の周りに偶然現れるはずがないだろう」
「俺の知ったことかよ」
赤眼の男の言葉を聞いた男が太い腕を組んだまま告げる。
「お前は運命を信じるか?」
「女の子になら使いたい言葉だねぇ」
フロントガラスから見える街並みを視界に捉えながら黒交じりの青髪の男が言葉を吐く。
「そう思うならルーチェへの警戒は続けろ」
「へぇへぇ、分かりましたよ」
表情を曇らせながらツェンが車を走らせた。
「おかえりなさい」
バーズとツェンが事務所の扉を開けると栗色の髪の少女が出迎えた。
「おー、ただいま。外からでも匂いで分かったぜ、美味そうなモン作ってるってな」
「期待ができそうだな」
二人の言葉に自信ありげな顔でシルファが言う。
「ルーチェさん直伝です」
「俺もジャガイモの皮剥いた」
少し遅れて玄関に顔を現した金眼の少年が青眼の男に告げる。
「芽は取ったか?」
子供達に青い眼を光らせながらバーズが問う。
「うん。あれ毒?なんだってな。先生が教えてくれた」
「エルって結構包丁使うの上手いの」
嬉しそうに話すシルファを見たバーズが腰を落としてエルに告げる。
「よくやったな」
「味見したけど、うまいかどうかは分からねぇけど」
もじもじと話す金眼の少年に青眼の男が言う。
「君は美味しいと感じたか?」
「うまかったよ。先生もルーチェも手伝ってくれたし」
「それは楽しみだ」
笑顔で話を続ける子供達の手を取って歩き出すバーズの後ろを赤眼の男が辿った。




