49.赤い靴
「ログは今何してるの?」
花の手入れをしているルーチェが長い黒髪の男に問う。
「見て分からないか?」
「そういう答えが欲しい訳じゃないんだなぁ」
店頭に花を並べている男の返事に赤毛の女が言った。
「何でまたこうして会えたのかなって」
「頭まで花畑になったのか?」
作業の手を止めずに黒目の男が嫌味を言い、続ける。
「答える義理はない」
「そこは運命だとか何とかかんとか頑張って答えてほしかったなぁ!」
ログの返答に愕然とした青い目の女がいきり立つ。
「ない。そんなものは」
「ひどくない!?」
その言葉を他所に黒髪の男は無言で作業を続けた。
「手伝いありがと」
「構わん」
閉店後、店の片づけをしているルーチェがログに礼を告げた。
「バックヤードだけじゃなくて接客してるログも見てみたかったなぁ」
「花屋は俺の仕事ではない」
そう言いながらレジを閉じた男に赤毛の女が言う。
「オーナーも隊長と一緒だね」
「どういう意味だ?」
心当たりもないように聞き返すログに、指先で前髪を捩りながらルーチェが答える。
「気づいてないならいいよ」
「お前もヤツに隊長の面影を感じるのか?」
困惑した表情を見せた青目の女が返事をする。
「ん-、そうかも?」
「そうか」
その答えにムッとした表情を見せた女がログに飛びついた。
「だからログもアイツ等に懐いてるんだ」
そう言いながら首を絞めようとした女の腕を掴んだ男が組み伏せる。
「言いたいことはそれだけか?」
組んだ腕を捻りながらログが言った。
「痛い痛い!!」
「俺は」
捩じった腕を緩めた男が言葉を続ける。
「お前が変わったと思っている」
「どういう意味?」
腕を握られながら女が問う。
「お前は明るくなった。昔のことは思い出すな」
「昔みたいにじゃれついてもいいじゃん!」
その言葉に怪訝な顔をしてログが告げた。
「そうされた覚えはないが」
「覚えてないの?」
ログが当時を思い出しながら答える。
「ああ、そうだったな」
「あの時より上手くなった?」
妖艶な笑みを浮かべてそう告げる青目の女に、黒目の男が左の手にした銃を眺めながら答えた。
「下手くそだ」
「失敗しちゃったなぁ」
やがて響いてきた靴音に女が声を止める。
「優しい大家さん、だね」
ルーチェが言うとおりに赤眼の男が階下に姿を現した。




