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The ability  作者: 不破陸
The ability
47/112

47.思いの形

「入るぜ?」

ノックと共に聞こえたツェンの声に栗色の髪の少女が答えた。

「どうぞ」

「デザートが出来たから食わねぇか?早くしねぇとルーチェちゃんが全部食っちまいそうだからな」

扉を開けた赤眼の男が机の前に座っている二人の子供を見ながらそう言った。

「ええ、食べます」

「食う!!・・・けど宿題終わらねぇとゲームができねぇ」

金眼の少年が机に置いてあるノートを気にしながら答えた。

「後少しで終わるから食べに行こ」

シルファの言葉にツェンの横を通り過ぎてエルが走っていった。

「せわしねぇな」

「一緒にって意味だったのに」

不意に言葉を吐いた栗色の髪の少女に赤眼の男が告げる。

「アイツにゃまだそんなこと分かんねぇさ。一緒に食いにいこうぜ」

「リネアさんが貴方のことを邪険にする理由が分かってきました」

不貞腐れた顔をしながら部屋を出る少女を見届けた男が、扉を閉め共に食卓に向かった。



「バ、バババ、ババロアだけじゃなかったんですか!?」

冷蔵庫から様々なデザートを取り出しては食卓に置いていく赤眼の男に、ルーチェが驚嘆の声を上げた。

「俺は無からでも満漢全席を作り出せる男だぜ?」

「凄すぎます!凄すぎます!!ずっとここで働きます!!もう娶って下さい!!」

いつもの口上を述べるツェンに、冗談ながら告げるルーチェの言葉を聞いて口をへの字に曲げたシルファが言う。

「ツェンには奥さんも子供もいますよ」

その言葉に周囲の不穏な空気を感じ取ったルーチェが応える。

「ごご、ごめんなさい!!変なことを言って本当にごめんなさい!!とてもお若く見えて!」

ツェンに向かって女が頭を下げた。

「気にしなくていいさ。こう見えて割と歳なもんで」

「おいくつなんですか?」

顔を上げたルーチェが不思議そうに訊ねる。

「大戦の時に戦地で生まれたからなぁ、俺もよく分からなくて」

「私とログと一緒ですね!」

「激戦地の生まれなんざぁ、そんなもんだろ」

デザートを置きながら赤眼の男がそっけない返事をした。

「アイツは戦時中に妻子を失くしている。ずけずけと聞くな」

黒目の男が青い目の女に視線を向けて言う。

「んな辛気臭い話する為に作った訳じゃねぇんだ。気にしないで食ってくれよ」

「はい!頂きます!すみませんでした!」

瞬く間にデザートを平らげようとするルーチェを止め、青眼の男が各々の皿に取り分け始めた。


「あー!もう幸せ!」

天上にいるかのような表情で杏仁豆腐を頬張るルーチェに黒髪の女がツェンを見ながら言う。

「ここにいれば毎日食べられるわよぉ?そこの男の視線が気にならないならねぇ」

「ログは肉親みたいなものなので」

赤毛の女の答えに呆れ顔をするリネアを見て黒目の男が言葉を吐いた。

「俺はここには住んでいないと言っただろう?」

「そこの変質者の話です」

シルファの言葉にツェンを見やった青目の女が息を呑む。

「家主さんは変質者?」

「誤解されやすいみたいでね。ルーチェちゃんの感性に任せるよ」

視線の先を己の肢体に向ける赤眼の男に赤毛の女が返事をした。

「筋肉質で色気がないってよく言われます」

「女の子はそれだけで美しいんだぜ?」

その言葉にルーチェが笑いながら言う。

「変な人ですね」

「最近よく言われるねぇ」

周囲にいる面々に眼を配らせながら青眼の男が告げた。

「変人であることには間違いはない」

「らしいぜぇ?五年くらい前からここに住んでいるけど、未だにこのへんのことがよく分からなくてね」

食べ物を咀嚼しながらルーチェが思案する。

「皆さんとは仲良さそうに見えますけど」

青目の女が各々を見回す。

「五年も一緒に住んでりゃ仲良くなるさ」

「そんなに長く住んでいるんですか?」

そのルーチェの言葉に金眼の少年が反応した。

「俺、三か月くらい」

「半年は経っているでしょ?」

シルファの言に怪訝な顔をするエルが答える。

「お前と会ったのって7月だろ」

「春でしょう。覚えてない?」

そう言いながら金髪の少年の口に、少女がデザートを突っ込んだ。

「あの、エル君・・・大丈夫?」

「気にしないで下さい。いつものことなので」

エルの口内にフォークを押しやりながらシルファが笑顔で応じる。

少女の表情を見ながら口に入った甘味を少年が黙って咀嚼した。

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