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The ability  作者: 不破陸
The ability
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28/112

28.ある男の話2

村人が避難している多少樹々が開けた場所に男が辿り着くと、その姿に気付いた各々が一斉に近付き声を上げた。

「アンタ生きてたのね!」

「良かった・・・良かった・・・」

「ヨウまで連れてきてくれて・・・」

ツェンが背負った男を地面に寝かせると叫ぶ。

「俺のことはどうでもいい!こいつさっきから息してねぇんだ!頭領はいるか!?」

ざわつく村人の内数人が広場の奥へ走っていった。


こちらの下に姿を現した壮年の男に、艶やかな黒髪の男が言う。

「こいつはどうやったら助かる?」

「ヨウは大地に還る。今は儀式を行えないため族長に葬ってもらおう」

脈を取った頭領と言われる男はそう答えた。

「そうか・・・」

横たわっている男の左胸に右手を当て、男が告げる。

「悪かったな。生きてるうちにガキ共に会わせてやれなくて」

代わる代わるツェンと同じようにヨウの左胸に右手を当てる村人達を見て男が問う。

「ここにはいねぇみたいだが、こいつの子供はどうなった?」

「襲撃してきた敵に連れ去られた」

その返答に黒い眼を見開いて辺りを見回すと、再度男が質問をした。

「俺の妹と母親もか!?」

「恐らくは。襲撃者達は女と子供、労働力を浚うことが目的だったようだ」

その返事を聞いて石槍の柄を握り締めた男が頭領に詰め寄る。

「そいつ等は何処にいる?」

「分からない」

その答えに石槍を担いだ男が歩き出す。

「だったら俺が見つけてやる」

「待て」

頭領の静止に背を向けた男が叫んだ。

「アンタが仲間を逃がしたのは俺も納得できるがな!ここに俺の家族がいねぇンなら俺は行かなきゃならねぇんだよ!!」

「一人で行って何になる?」

その言葉に背を向けたまま男が答える。

「じゃあアンタ等が手を貸してくれるとでも言うのか?頭領はここで生き延びたヤツ等を護るのが役目だろ」

「生き残ったお前をむざむざ死なせるような真似はできない。ここに残れ。この先我々が生き延びるためにはお前の力が必要だ」

そう言われて艶やかな黒髪の男が振り向いた。

「この先?家族がいねぇ先になんざぁ何の意味がある!!」

「以前からお前には言っていたが、俺にとってここにいる全てが俺の家族だ。当然、お前もだ」

立ち止まる黒髪の男に近づき頭領が告げた。

「族長も先が長くない。俺がその後を継ぎ、お前には俺に代わり頭領になってもらおうと考えている。シーファンとファンフェイを想うお前の気持ちは分かるが、家族のためにここに留まってくれないか?」

「だったら俺達はテメェの家族じゃねぇ!!そうやって親父も見殺しにしたんだろうが!!」

激昂する男を頭領が窘める。

「英雄であるお前の父親は村人を守るために自らの意志で最期まで戦った。家族ならばその意志を継ぐべきではないのか?」

「親父の時とは違って今の俺には護る家族がここにはいねェんだ。話の続きはアイツ等を助け出してからだ」

そう告げ石槍を担いだ男が頭領に背を向けると背後から別の声が響いた。

「その英雄が遺した忘れ形見を死ぬと分かっていて行かせはできん」

「族長!起き上がられてはお体に障ります!!」

その声に振り返った頭領が背筋をしっかりと伸ばした白髪の老人に向かって叫ぶ。

「この老いぼれの命と子供達の未来を天秤にはかけられん」

「爺ちゃん・・・」

族長と呼ばれた老人の下に駆け寄ると艶やかな黒髪の男が声を発した。

「俺は仲間を・・・ファンフェイを取り戻したい。血が繋がってなくても爺ちゃんの孫だろ・・・?」

「お前一人では行かせられない。孫が死んで喜ぶ祖父が何処にいる」

その返事に確かめるように黒髪の男が再び訊ねる。

「それはファンフェイを一緒に助けにいってくれるってことか?」

「お前の疲れが癒えてから出る。だから今は休め」

その言葉を不服とした黒髪の男が言った。

「テメェ等のことは信用できねぇから俺は今行きてぇんだよ!!!」

「族長にそんな口をきくな。こんな事態になって心を痛めているのは俺も族長も同じだ。お前が家族を大切に想うのと同様に、俺達は村人を守る使命がある。お前もその一人だということが何故分からない?」

歯噛みをしながら黒髪の男が答える。

「親父が俺の母さんを護れなかったことを後悔してたのは知ってるだろ?俺はそんな気持ちを味わいたくねぇし、手遅れになってからじゃ意味がねぇんだ」

「娘のことは私も悔やんでいる。だからこそ心情的にも村の未来のためにも、お前を死地へ行かせることはできない。この村にはお前の力が必要だ」

族長の言葉に石槍を地面に叩きつけて男が叫ぶ。

「じゃあ俺に家族を見殺しにしろって言うのかよ!!」

「そうは言っていない。襲撃者の目的を考えるに浚われた女共を殺す意味がない。目的がそれならわざわざ連れ帰る意味がないからな。お前が家族を取り戻したいというのなら、その計画を考える時間があると言っている。今一人で行ってもお前一人が死ぬだけだ」

頭領の言葉を聞いて艶やかな黒髪の男が言葉を発した。

「その答えはいつ出るんだ?」

「調査を進めなければ分からない。連れ去られた村人を取り返そうにも、端から無理なのならば行く意味がない。俺達が考えるべきことは生き残った者達の今後だ。今は動くべきではない」

男は石槍を地面に捨てると言う。

「助けにいこうって気はあるってことだな?」

「生き残った者の安全を確保でき、浚われた者達を取り返せる可能性があるのならば出陣する」

そう告げる頭領の目を見た後に一息吐くと、黒目の男が敷いてある毛皮の上に寝そべりこう言った。

「だったら早いところ決断してくれ。俺は疲れたからアンタ等の言う通り休むとするよ。・・・ヨウも助けられなかったからな」

「お前が心に病む必要はない。頭領である俺の責任だ」

その言葉を聞いて背中越しに右手を上げた男は、やがて眠りへと落ちていった。

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