24.途上
バーズのいる部屋の扉の開閉音を聞いたログが赤眼の男の眉間にリボルバーの弾丸を撃ち込んだ。
「私怨はないと言ったが」
衝撃に跳ね飛ばされるツェンに、長い黒髪の男が腰に装備していたマシンガンを手に取ると片手で撃ち続けながら告げる。
「お前を殺したいとは思っている」
「お前が次の相手か?」
弾丸に傷つくこともなく立ち上がり、ログへと近づく赤眼の男が何やら知らない言語で言葉を発した。
おぞましい殺意を感じたログが反射的に横へと飛ぶ。
赤眼の男が拳を繰り出すと、ログの背後にあった壁を砕き、その穴から見える外の建物までも蒸発させ地平線を覗かせた。
「お前にとっては気付かずに蟻を踏んだ程度の感覚なのだろう」
ドアを開けるとログが言葉を続ける。
「踏まれた方は忘れることはない」
部屋に手榴弾を投げ込むとログは扉を閉じて姿を消した。
「逃げたか。勝ち名乗りをファンフェイに伝えなきゃな」
爆音と共に飛んでくる金属片を物ともせずに昏い赤眼の男がドアを蹴り飛ばし廊下へと出る。
ドアノブを引いても開かない対面のドアを前に、赤眼の男がその手で扉を引き裂いた。
「少し寝ていろ」
引き裂いた扉の向こう側で輝いている青い眼を見ると、赤眼の男がその場で倒れ込む。
「お前には悪かった。またしばらく昔のことは忘れていてくれ」
そう言った青眼の男が床に倒れたツェンを肩に抱くと、部屋にあるベッドへと寝かせた。
「随分と優しいのねぇ? そういう趣味なのかしらぁ?」
「私達のことを詮索するより吹き飛んだ街に関して君の上司に報告することだな」
「どういうことかしらぁ?」
疑問を表情に浮かべるリネアに青眼の男が、扉のない入り口の奥に指を指す。
「見れば分かる」
訝しげな表情で部屋を出ていく長髪の女の後ろ姿を見送ると、バーズがベッドに座っているエルとシルファに告げる。
「君達にもすまなかった。ただ、コイツを責めないでやってほしい」
「いいんだけよどぉ……。どうしたんだ、コイツ」
横たわるツェンを心配そうに見ているエルとシルファにバーズが答えた。
「君は父親にどのような感情を抱いている?」
エルが拳を握り締め返事をする。
「……分かった」
「こうなることを分かっていて私にツェンの部屋のカードキーを持たせたの……?」
不審な眼を向けるブラウンの瞳に青眼の男が言葉を返した。
「君達の安全には万全を尽くしたつもりだ」
その言葉がシルファの感情を逆撫でた。
「私達が無事ならツェンの想いなんてどうでもいいってこと!!?」
「この男は死ぬことを望んでいる。そのために必要のない感傷ならば、ツェンにとってもどうでもいい。余計に苦しませるだけだ」
バーズの顔を見上げ、金髪の少年が物憂げな表情で言う。
「俺達と楽しそうだった時も、ツェンは苦しんでたのか?」
「そういう訳ではないが……」
エルに青い眼を光らせた男にシルファがツェンの寝ている枕を引き抜くと、バーズの顔面に叩きつけた。
「止めろ!! 馬鹿!!」
目を白黒させているバーズとエルを余所に、眼を覚ました男がシルファの肩を掴んで言う。
「そんな口汚い言葉は君には似合わないぜ?」
戸惑う少女が質問をする。
「……いつから起きてたの?」
赤眼の男が青い眼の男に助けを求めるように視線を移す。
「そいつが眠ることはない」
その言葉に顔を真っ赤にした少女が、手にした枕でツェンの顔面を叩き続けた。




