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8,権力者の部屋ってロマンだよね


「最後は司祭室ですかね」

「ここの教会の最高権力者が“司祭“と呼称されるかは知らんがな」

「細かいことはいいんですよ」


 というか、少女の日記では『司祭』とされていたので合っているのではないかと思ったのだが、邪神さん曰く翻訳はあくまでニュアンスだから細かい言葉は微妙に違う時もあるらしい。


 そうして軽口を叩きながら突入した司祭の部屋らしき場所は、殊の外簡素でシンプルな所だった。


 執務をするためであろう机と、背もたれ付きの少しだけ豪華な椅子が一つ。と言っても椅子は布張りしてあるため他の部屋よりかは座りやすくされている。

 執務机の前には応対用の複数人掛けの長椅子が二つとその間に低めのテーブルがあった。壁側には棚があり、いくつか資料がある。


 めちゃくちゃシンプルにした校長室といったところか。学校のトロフィーとか大量の書類とかおしゃれな家具とかない分校長室よりも簡素に見える。


「なんか、質素?」

「まぁそう言ってやるな。ハルトの居た地球の文明とはかけ離れているだろうからな」


 権力者の部屋というのはロマンだと思うのだ。友人にはなかなか渋いと言われるが、昔の豪邸とか船とかの豪奢な部屋を見るのも結構好きなので。


 まあこの教会はどちらかと言えば質素倹約を努めていそうな場所なので、そこの最高権力者とて豪奢に飾り立てないのかもしれない。

 この分だと倉庫ほど時間はかからないだろう。


 早速机の中を覗き込む。

 引き出しの中には予備の羊皮紙や羽ペン、それに相変わらず信仰の際に使う道具らしきものなどが入っていた。


 特に目ぼしいものはないかと閉めようとして、引き出しの底が実際の見た目より随分と浅いことに気がついた。よくよく観察してみると引き出しの底板の角が切り落とされており、指を引っ掛けられそうだった。


 ひとまず引き出しの中身を全部ひっくり返し、二重底を開けた先に入っていたのは少し豪奢な鍵だった。時折見かけるオシャレでアンティークな鍵である。


「何かあったのか?」

「どこのかわからない鍵が出てきました」

「ふむ、入り口は締まっていたからそこだろうな」


 これでやっと出られるらしい。

 しかし、教会から出たところで村の地図があった以上はこれ以降さらに探索が続くのか、とも思ってしまう。結局のところ日本に帰る手がかりはゼロなので。それとも、この自称黒幕系邪神が探索が終わったら帰してくれるのだろうか。


 少々不安になってしまった気持ちを振り払うように、取り敢えずその他の資料も確認しに行ったが、敬虔な信者としての心構えや、要約すると中央広間にあった***様とやらの像に実際の神霊が宿っている的なことを周りくどく書いた書物などがあっただけで、特にこれと言って目ぼしい情報はなかったので割愛する。





「これ、入り口の鍵じゃない!開かない!!」

「おお、綺麗に崩れ落ちたな」


 さて、少し豪奢な鍵(推定入り口の鍵)を手に入れ中央広間に戻ってきた訳だが。


 先の見えない探索に光が差し込んだと思った。思っていた。


 しかし、あの二重底の鍵は入り口の鍵ではなかったのである!ジーザス!


「え、じゃあこれどこの鍵?」


「………あ」と邪神さんが声を上げた。


「まだ、断片解読やっとらん」

「………どこかに隠し部屋がある流れですね、これ」


 はぁ、と一つため息をつきながら、二つの断片を取り出してどうにか読める形にならないかこねくり回し始めた。


 結果。どうやらこの広間の例の石像の下に地下があるらしく、その場所と手順が記されたものだった。まだ探索は続くらしい。


 ちなみに、入り口の鍵じゃなかった時の邪神さんの反応的に、本人も地下室があるということを知らなかったらしい。いやまぁ本人の言葉が本当なら記憶がないんだから仕方ないのだけど。

 いざ鍵が合わないという展開になった時、「いやまて何それ知らん怖」とボソッと言っていた邪神さんの言葉を聞き逃すほど鈍感主人公タイプではない。


「これって地下とかゲームならラスボス出てくるやつですけど大丈夫ですかね」

「………多分大丈夫だと思う、多分」


 神妙な顔で邪神さんは返した。


「信用ならない……」

「そこ、口に出てるぞ」

「ウィッス」


 紙に書いてあるように手(この場合は足もだけど)を動かす。

 まず、階段上の祭壇の下から2段目を蹴って入れ込む。すると、半信半疑ながらも試してみたら石像の台座が動かせるようになっていた。少しばかり重いが、なんとか押して移動すると取手付きの扉が現れた。


「うわ、本当に出てきた」

「技術的にどうなっておるのだ、これ」

「さあ……?」


 教会の建物などの様子を見るに、明らかに文明基準は中世ヨーロッパなのだが、どうにも仕掛けは現代的すぎる。しかし、そこを気にしていては始まるものも始まらないのだ。


 一応軽く聞き耳を立てたが特に物音も聞こえなかったため、そのまま開けた地下への階段を邪神さんと二人で降りて行った。


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