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6,書かれていたこととは

 

 パラパラとめくりながら、精査する資料を仕分けた。

 共通の出納帳や分厚い聖書、文字の学習のための手引きなどもあったが、今回はそこまで手を回せないので一旦無視することにする。


 そして、俺が手に取ったのは三冊と一枚の紙だった。と言っても実質読み込むのは二冊である。


 一枚の紙というのはこの教会とその近辺を記した地図である。ちょっとここでは暗くて読みにくいので、光の多い中央で読んで必要ならば写させてもらうことにした。


 次に本命の本についてだが。


 一つ目は、この教会らしき場所にいた人の日記らしきもの。

 二つ目は、この教会と教会が位置する場所ことエルダーンについて、***(相変わらず読めない)や基本的なことなどを説明してあるもの。

 そして三つ目は、本というより本型をしたダミーの入れ物だ。


 最後のは、持ち上げた時の異様な軽さで発覚した。軽くロックがかかっていたが、家に似たような形のダミーブックがあり、それと仕掛けが似ていたため難なく開くことができた。中には一枚の紙の断片が入っていたが、それ一枚では内容がわからなかった。

 というか、自動翻訳が動いてくれない。


 邪神さん曰くは、あくまで内容が不完全なためうまく翻訳をかけられていないのだろう、という回答をいただいた。


 翻訳と言っても視覚情報を翻訳がかけられた相手の認識に直接結びつける術式?であり、あくまで視覚情報として情報が確定していないものの置き換えは不可能であるそうで。

 つまり、この断片の情報は諦めるか、他に断片を完成させる必要があるということだ。


 とりあえず面倒なので、持参メモ帳の最後の方に断片を挟んで一度忘れることにする。



 概要の説明書のような本からは、『***』という神について、『***神』はいかに素晴らしいか、『***神の教え』、簡素版創世神話、などなどいかにも宗教勧誘のようなものだった。


 と言っても、世界には様々あるので、これらに書かれていることは本当のことなのかもしれない。まぁ「***がこのエルダーンの地を作った」だの「***がエルダーンを維持されている」だのについては、そもそもここの住民ではない俺にとってはそこまで響かない話だ。

 少なくとも、ここまで神を信仰して祀っているのだからここは教会ということで合っているのだろう。この世界において宗教施設を教会と呼ぶのかは定かではないが。



 もう一つの本を手に取る。


 こちらはこの教会で手伝いをしている少女の日記帳らしい。地球で言うところのシスターみたいなものだと思う。女子の日記を勝手に覗くのは良くないことかもしれないが、

 羊皮紙作りでざらざらとしているページをぺらりと捲った。


『◯の月××/

 今日からエルダーンが誇る教会の司祭手伝いになった。お母様からは激励をいただいたわ。紙は高価だけど、せっかく文字を習ったし、記録の天命をいただいているのだから、備忘録代わりで日記をつけてみようと思う』


『◯の月×△/

 今日は孤児院の子たちと共に村に炊き出しへ行ったわ。最終的に司祭様まで食事会に加わって和気藹々とした空間だった。でも、流石に高貴な***様の遣いである司祭様まで出てくる必要はないと思うのだけど』


 :

 :


 日記は取り留めのないものから書かれていた。天命だとか、相変わらず読めない***だとかを混ぜ込んだ日常らしいが、そこを除けばよくある日常兼業務のメモみたいな日記だと思う。


「それは?」

「ここに勤めていたシスターの日記らしいですよ」

「ふぅん」


 他の書籍を物色してたはずの邪神さんまで覗き込んできた。

 続きをめくっていく。


『◯の月++/

 今日は週に一度のお祈りの日だったわ。必要な道具を運んだり人の誘導をしたりしていたのだけど、無事終わって安心ね。私たちが今存在できているのも***様のおかげだもの。感謝しなくては』


『△の月◯◯/

 今日は村のお祭りだったわ。普段は質素倹約を努めているけど今日だけはみんな自由に楽しめるの。美味しい料理をみんなで作って、素敵な出し物を作って売って、最後はみんなで踊るのよ。とっても楽しかった。ランディから赤いリボンを貰ったわ。端っこにキラキラと輝く石がついていて素敵なの。***様に仕える身としてこのようなもの付けても良いのかしら。でも、少しばかりは許して欲しいわ』


 教会で働くシスターとあってはそこまで毎日に変化がないのか、礼拝の手順や神事についてなど基本的に神様関連ばかりの内容ばかりだ。


 そんな中、珍しく長文だと思えば催し物があったらしい。この日記帳の持ち主の姿はまだわからないが、嬉しそうに笑う少女の姿がふと目に浮かんだ。ランディというのは彼女の友達か、家族だろうか。


『△の月××/

 今日のお勤めも上手くいったわ。でもこれは食材を届けてくださった村の方から聞いたのだけど、最近行方不明の人が増えているのですって。孤児院の見回りを強化しないと。***様のご加護がありますように』


『◻︎の月◯×/

 最近畑の実りが悪いわ。心なしか天候も悪いし、物騒な話も消えないし、大丈夫なのかしら』


 しばらくは特に変わり映えもなかったためパラパラと読み流していた。

 日記ならば現在のような廃墟となるまでの事件やら出来事やらが書かれているかと思っていたが、平和な内容ばかりで無駄足だったかと思い始めていた頃のこと。急に物騒な話題が出てきた。


『×の月◯△/

 今日は一人で留守番を任されていたのですけど、掃除をして中央の間で休んでいたら、***様の像から声が聞こえたの。とっても驚いたわ。どうやらその声は***様なんですって。本当かはわからないけど、そこで疑う声を出したら、もし本当に***様だった時に失礼になるからそのまま話を聞いていたわ。最近は***様のさらに上位にいる神々で争いが起きているのですって。***様以外にも神様っているのね。その争いの余波が飛んで他の世界にも影響が出ているとかおっしゃっていたのだけど、他の世界とは何ですか?と聞いたら誤魔化されてしまったわ』


 :


『今日も***様とお話をしたわ!』


 :


『  どうして  なんで 』


 慌てて書き殴ったような文字を最後に、そこで日記は途切れていた。なんとも不穏である。


「んーー不穏だな」

「ですね」


 結局肝心なところが明確に判明したわけではないが、この様子だとその***様とやらが上位神の争いに巻き込まれて、***様本人にも何か影響があって、このエルダーンという地が崩壊したと考えるのがセオリーだろう。特に、この世界はどうやらその***様の動力で動いているらしいので。


 もちろん、その像から聞こえた声と言うのが偽物である線も捨てきれないので真実が何かを信じ切るのはまだ早い。


 ただ、この場所について何も知らなかった始まりよりかは進歩していると信じたいものである。


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