4,とりあえず探索するよ、ぱーと1〜食堂〜
「で、結局一緒に探索する羽目になった訳ですが。どこに行けばいいんです?」
「いやまぁそれはうーん……ハルトの思うようにやってくれれば」
「左様で」
偉そうな態度の登場だと思えば、割とそうでもない感じの言動もしてくる自称邪神さんに振り回されつつも、本格的な探索を開始した。
決定権は黒幕側にありそうなものなのに。というか黒幕というものは、このような探索者を陰で誘導しながら悦にいるものだと思っていたのだが、どうやらこの自称邪神はそうでもないらしい。こちらで決めろとのお達しである。
とりあえず、何かの漫画で「人は追い立てられると左に曲がる」という言説を見たことがあるので、それに逆らって右側の扉から見てみようと思う。まぁどっちみち後で全部見回ることになるんですけどね。
「こっちは、ただの部屋と食堂と………こっちは入れないか」
「そこは探索して鍵を見つけたら入れるというトリックだな」
「それ言っちゃって良いの?」
いちいち黒幕らしからぬ言動をする自称邪神にツッコミを入れつつ、一つ一つ見て回る。だんだん敬語を維持するもの怠くなってきたな。
まずは手前にあった食堂から。
「ケホッケホ!埃っぽい!」
「なぜこんなに廃れてるのだ……」
部屋に入ると埃やら砂やらがブワッと舞った。部屋の奥に窓があるため比較的明るいが、その窓の外の光景はなぜか見えなかった。
食堂というだけあって、複数人で座れるくらいの食事用テーブルや椅子などが置いてあり、その奥に扉も見えた。
部屋は装飾が少なく簡素な作りだが、食事テーブルのどの位置からも見られるような場所に一つの絵画があった。中央の祭壇の人物とどことなく似ている。
「これ、どなたなんでしょうか」
「それを資料とかで調べて行くのがセオリーであろうに……と勿体ぶっても仕方ないか。『***』と言ってこの地で信仰されてた存在だ」
おそらくここで信仰されてた神の名前を素直に教えてくれたのはわかる。わかるのだが、肝心の名前のところだけモザイクにかけられたような、ぼやかされたような発音で一切聞こえなかった。
「??全く聞き取れなかったんですが」
「だから、『***』だが」
「無理です、モヤがかかってるようにそこだけ聞こえません」
「ふむぅ」
「認識阻害か?それとも環境が違うから聞き取れないのか……」などとぶつぶつ考え込み始めてしまった邪神さんは一度放っておいて、部屋の奥に繋がる扉の先を見に行った。
扉の中は想像通りの厨房だった。
厨房と言っても、現代のようなガスコンロも無ければ、シンクもなかった。竈のような場所とその上に吊り下がった大きな鍋があり、その横に食料を入れる棚があるだけだった。
食料棚の中はスカスカで、見てもよくわからない食材らしきものが一つ二つ入っている程度だった。
さらに奥に勝手口のような扉もあったが、なぜか木の板が打ち付けられており出るのは困難だった。ここを使うのは最終手段にしよう。
異世界ものの定番は中世ヨーロッパと聞くが、この厨房もそれに倣っているのだろうか。
それにしても、食材の無さをはじめとして妙に生活感が薄いのが奇妙な点だ。
ますますこの場所への疑問点が湧いてきて、メモ帳に現状を書き込む。ちなみに、探索を初めてから持っていたメモ帳に得た情報のほとんどを書き込んでいる。
そうやって地図やらわかっていることやらを雑多に書いている途中にはたと気付いてしまった。初めの方に聞くべき事柄を、一切自称邪神に聞いてないということに。
ひとまず厨房から出て、未だ腕組みをして考え事をしている邪神さんに話かけた。
「あの、そもそもここって何処なんですか?」
「そういう質問をはじめにしてくると予想しておったのだがな」
こっちだって慌てて色々頭から抜けていたのだ。
ちょっと不服な顔をしたのは伝わったのかどうなのか、邪神さんはそのまま続けた。
「まぁ良い。ここはエルダーン。ハルトの住む世界、地球と言ったか、とは離れた場所に存在し、***を祀っていたが、既に廃れてしまった地………らしい」




