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2,現状把握をしたいのだが

 

 ちょうど真ん中の位置に俺は寝かされていたため、そこから少し歩いて辺りを見て回った。

 すなわち探索タイムである。


 しかし、探索と一言で言っても俺は探偵や警察でもなければミステリー小説の愛読者でもない。そのため、どのような点に注視すれば良いのかはいまいちわからなかった。


 一応今いる場所の特徴を述べておくと、天井には屋根がなく直接光が差し込んでいる。周りには円形に高く灰色の壁が伸びており、その壁は所々ヒビが入っているためかなりボロボロの印象だ。

 部屋のサイズは詳しい数字ではわからないけど、一般的な公立高校の教室一つ分くらいはある気がする。


 部屋__天井がないため部屋と言っていいかわからないが便宜上部屋と呼ぶ__の中央に戻って立ってみる。前方にはこれまた崩れかけの人型のオブジェがあり、背面と左右の手を伸ばした先の位置にはそれぞれ扉があった。



 ひとまずオブジェ?像?に近づいてみた。


 よくよく見てみると、オブジェの周りはステージのように階段上に少し高くなっており、まるで祭壇のようにも感じた。

 美術館や博物館のように作品の名前でもあれば良いのだが、残念ながらそういうものはなく、文字的な手がかりはない。まぁそもそも何か書いてあったとして日本語じゃない可能性もあるんだけれども。


 オブジェの造形は、例えるならば美術の授業に出てくるミケランジェロ?とかが作ったやつに似ている。白っぽくてちょっとでかい。美術は専門じゃないので詳しい例えは諦めて欲しい。


 布を纏っているだけの服装をしているが、左手を胸元に、右腕を上に掲げていた、のだろう。残念ながら右腕はもげてしまっているし、顔は頭のあたりが壊れかけている。良く見たら足元もヒビが入っている。手入れされてなかったんだろう。


 それ以上は手がかりがなさそうなので、一旦離れた。



 扉はそれぞれ似たような形をしており、木製だった。

 その中でも、オブジェの正面側の扉は少し頑丈な作りをしており金属のドアノブがついていたが、残念ながら鍵がかかっていたために開けられなかった。


 両サイドの比較的質素な作りの扉はすぐに開けそうだったが一度手を離した。


「教会、みたいな……」


 光の入り方に、祭壇のような場所に祀られているオブジェ。それらの既視感は教会だった。


 別に自分はクリスチャンでも他の宗教論者でもない。普通に盆には帰省し、親族の法事は仏教で行い、クリスマスはささやかながら友人や家族とはしゃぎ、正月には神社に初詣に行くタイプの日本人である。


 それはそうと、修学旅行とか漫画とかアニメとかで教会には少し見覚えがあったのだ。



 しかし、それがわかったところでどうにもならないのが現状である。


 一通り部屋を見てもイマイチ現状把握が進まないために、俺は次に取るべき行動を再び考え込む羽目になっていた。



 そして、部屋を探索しつつもさらに思い当たったことが二つ。


 一つ目は、ファンタジー小説にまつわる知識だ。

 もっと限定的な言葉で言えば、今のこの状況が「異世界転生」「異世界転移」ものである可能性についてである。


 日本では、なろう系小説と言ってそのようなジャンルの小説が流行り、漫画化やアニメ化などもしていた。

 俺はそれらを熱心に追うほどではなかったが、話題となることも多かったしそこそこ有名なやつは嗜んでもいた。


 現状をそのなろう系小説に例えるならば「異世界転移」なのだろうが、その割には説明の一つも無いどころか、目覚めた場所が些か微妙すぎるようにも思う。


 普通、その世界の神的な上位存在とか召喚をした人間とかからの説明があったり、そうじゃなくてももうちょい人が居そうなところに出るものじゃ無いのだろうか。


 友人にはもっとそういう小説に詳しい人物がいた。「いつ異世界に呼ばれても良いように鍛えてるんだ!」などとほざいており、当時は他人事に思っていたが、正直アドバイスを貰いたいくらいである。

 こんなことになるならもう少し予習しておけばよかった。



 そして二つ目は、ちょっと現実的でとっても嫌な話である。つまり、猟奇的な動機を伴った誘拐の可能性である。

 残念ながら昨今は物騒な世の中のため、人気のないところに連れて来られて殴りつけられたり切り刻まれたりとかそういう事件も起こり得るのだ。嫌すぎ。


 そのためにも逃げ道の確保や今いる場所の特定は必須なのだが。


「さて、どこから見てみるべきか………」


 そもそもどこで何が起きてもどうにか逃げられるように抵抗用の武器が欲しいな、などと再び思考の海に入りかけるその寸前。



「あ、起きたのか」


 これまでたった一人だったはずの空間で、声がした。


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