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褒美の授与(2)


 目を見開くヒメナ様が視界の端に見える。

 なぜそんなに驚いているのかしら。

 ハレノ様が元の世界に帰る選択をするとは思わなかったのかしら?

 

「元の世界にか。ブリジットよ、聖女をもとの世界に帰す方法はあるのか?」

「あります。聖女ハレノの望みを受け、すでに確立しております」

「わかった。では聖女ハレノよ。そなたを無事に元の世界に帰すと約束しよう。他に望みはあるか?」

「え? え?」

 

 まさか二つ目を要求されると思っていなかったのか、わたくしとユリッシュを交互に見るハレノ様。

 なんという可愛らしさ。

 思わずニコニコとしてしまう。

 ハッ、いけない! ハレノ様が可愛いと助言するのを忘れてしまうところだったわ。

 

「ハレノ様がこの世界に対してしてくださったことへのお礼なのです。ハレノ様が帰ったあと、元の世界に帰す以外にもなにか歴史に残すようなことがないと王の沽券にかかわります」

「えっ、えっ。で、でも、別になにも私、の、望みとかないし……」

 

 なんという無欲。

 それでこそ聖女様、とも思うけれど……まあ、そうね。

 

「では、ハレノ様の世界にもあるというカリンやユズに似た植物……オバルの木とセポの木の実を使ったお酒が飲めるように申請するのはいかがでしょう? お母様の研究にも貢献できますし、オバルとセポの木の実の使い道が増えます。それはハレノ様と現国王陛下の功績として世に残るでしょう。ハレノ様としても、元の世界の文化がこの世界に残せますわ」

 

 派手なものではないからハレノ様も嫌とは言わないはず。

 お母様の研究費を横領されてしまったから、ラクルテル侯爵家としてもお母様への補填がほしい。

 ハレノ様に提案してみたところ、ぱあ、と目を見開かれた。

 

「そ、それにします! あの、えっと……。えっと、ロ、ロゼリア先生……」

「オバルの木とセポの木の実の研究をメローヌ・ラクルテル女史が行っております。その研究をお助けください。私の世界の植物にとても似ていて、果実酒にできるのです、と」

「あ、はい。えっと……オバルの木とセポの木の実の研究をメローヌ・ラクルテル女史が行っております。その研究をお助けください。私の世界の植物にとても似ていて、果実酒にできるのです。――私の幼い頃、風邪で熱を出した時にその果実酒を薄めて一口飲まされたら、翌日には熱が下がってあっという間に元気になりました。もしかしたら、オバルの木とセポの木の実を使った果実酒ができるかもしれません」

「ほお……? オバルの木とセポの木の実で、か? それは興味深いな」

 

 会場内の貴族の反応も上々。

 ただ、お酒の流通はそれなりの貴族の収入源になっている場合が多い。

 反対の意見も出るだろう。

 それでもありふれたオバルの木とセポの木の実から酒が作れる。

 その上、それが毎年の流行り病に効くとなれば毎年薬草や薬の確保をする労力と資金を思えば認めた方が得策となるだろう。

 まして、それをバミニオスを討伐した稀代の聖女の提案ならば。

 

「なんと。元の世界に帰ることを望む聖女様が、残る我らの健康について考えてあのような提案をしてくださるとは」

「なんという慈悲深さだ」

「歴代の聖女に引けを取らぬ人格者ではないか」

「素晴らしいわ」

 

 貴族の賞賛がいつの間にか拍手に変わる。

 それに驚いて、またキョロキョロわたくしたちの方を見比べて慌てふためくハレノ様。

 まあまあ。まあまあ。

 

「大丈夫だよ、ハレノ。ロゼリアはちゃんと自分の家の利益も込みでちゃっかり提案をしたのだから」

「え、え、え?」

「ふふふ。まあ、せっかくの場ですから」

 

 笑ってごまかす。

 陛下は貴族たちの反応も見た上で頷いて「よい提案だ。もちろん聞き届けよう。他にもあるか?」とまさかの三つ目を要求。

 ハレノ様だけでなくわたくしたちも驚いてしまった。

 

「そ、そんなにたくさんは、ないですっ」

「そうか?まあ、聖女ハレノが元の世界に帰るまでにはまだ時間はあるのだろう?」

「はい。聖女送還の儀には一ヶ月の時間を要します」

「ではその間になにか望みができたら申せ。ラグランジュ王国、国王の名において全力を尽くしてその願いを叶えると誓おう」

「あ、ありがとうございます」

 

 国の威信をかけて、というものすごい意味だ。

 まあ、何百年と世界を脅かしてきた障兵とバミニオスを討伐してきたのだから、国の威信をかけるのは当然。

 むしろ、叶えられなければ世界の国々に馬鹿にされてしまう。

 ハレノ様が無欲であるが故に、陛下が逆に困っているのだ。

 

「では、次に聖女とともにバミニオス討伐に貢献せし騎士たちよ。そなたらの貢献にも報いよう!望みを言うがいい!騎士団長、そなたの望みを申してみよ!」

「ハッ!では、障兵がいなくなった世界の守護を、引き続き我らラグランジュ王国騎士団に任せていただける栄誉を!」

「よかろう。励むがいい!」

「ありがたき幸せ!」

 

 騎士団長は案内役やハレノ様の護衛を務めてくださった遠征先で同行した騎士たちの代表。

 おそらく、このあとに各自に報奨金などが支払われるだろう。

 

「次に、ブリジット・ジヴェ!魔法師団筆頭魔法師であるそなたの新たな功績を称賛し、褒美を与えよう!望みを申すがいい!」

「はっ。では、ロゼリア・ラクルテル侯爵令嬢との結婚を望みます」

「え?」



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