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母の研究(2)


 思わずハレノ様と顔を見合わせてしまった。

 バミニオスは悪しき王。

 死してなお、女神様への妄執に染まり瘴気を生み出しているのだとばかり……。

 しかし、お母様の言うとおりだわ。

 ただの人間に、なぜ瘴気が生み出せるの?


「瘴兵はわかるわ。瘴気から具現化したモノ。でも、瘴気ってなに? そもそもどのようにして生まれてきているの? バミニオスと瘴気が縁づいているのは間違いないけれど、元人間のバミニオスにどうやって瘴気が生み出せるようになったの? それとも、バミニオスはなにか別のモノが原因で生み出された瘴気を、なんらかの形で操れるようになっただけなのでは? 考え出したら疑問が止まらなくなったのよね」

「確かに……。深く考えたことがありませんでしたわ」

「ハレノ様の話を聞いたら、瘴気を消す時女神様の力を使うというでしょう? つまり、本当は元々女神様となにかしら関係がある物質だったのではないか、と思い始めたのよ。女神様はこの世界を創造した存在。女神様と関わりのあるなにか。触れれば病を発症させる。もしかしたら、瘴気とは女神様が持っていた『病の素』なのではないかしら? それが“能力”であるのか、“物質”であるのかまではわからないけれど……」


 すごいことを考えるものね?

 でも、さすがは長年瘴気を研究してきたお母様。

 凡人では思いつかないことだわ。


「でも、もしもロメーヌ様の仮説が正しいなら……バミニオスが持っている能力か、アイテム? を取り上げたら……瘴気はなくなる、ってことですよね?」

「ええ、そうですわね。しかし、それをどうやって調べますの? お母様は魔力がありませんのよ?」


 わたくしを――主魔児(アルグ)を産んだから。

 お母様は、今はもう瘴気から魔力で身を守ることはできない。

 この町の騎士様に協力を仰ぐと言っても、限度があるだろうに。

 冒険者を雇う?

 無理ですわ、冒険者は魔力を持たない平民の中でも、瘴兵と戦うことを選択したいわゆる自警団のようなもの。

 ならず者も多く、瘴兵と戦う時に魔力を纏えるよう、魔石を持ち歩く。

 その魔石も、基本的に魔力を持つ貴族が作って販売している。

 平民の中でも魔石を扱える人間は、限られているけれど……。


「魔石にも限界がありますのよ?」

「ええ。だから今回の種の結果を論文にまとめて、王都に送るつもりなの。認められれば、さらなる調査ができるようになるはずよ。王立研究所から魔力のある研究員や、騎士様が派遣される。わたくし自身で調査には赴けないけれど……」


 それは――お母様の手柄ではなくなる、ということだわ。

 本当ならば誰よりもお母様がご自分で調査したいはずなのに。


「ロゼリア先生、その調査、私たちでは行けないんでしょうか?」

「青い森に、ですか? 危険すぎます。青い森はバミニオスの亡国を護る土地と言われていますのよ。瘴兵がいなかったとお母様はおっしゃっていましたが、そこに聖女であるハレノ様が近づけばそうはいかないかもしれません。あの森は瘴気に満ちているのです。瘴兵が具現化するようなことがあれば、あっという間に囲まれますのよ? 今のわたくしたちの人数で入るには、危険が大きすぎます」

「そうですわね。聖女様が近づけば別の反応を示すかもしれません。とはいえ、あると言われているバミニオスの亡国も見たことがある人間はいないのよね」

「そ、それは……」


 青い森があるから、その奥にあるというバミニオスの亡国を見た者はいない。

 あるかわからないものに、世界は怯え続けている。

 しかし誰もバミニオスの亡国の存在を確かめに行こうとなどしない。

 だって瘴気漂う青い森があるのだもの。

 今回のお母様の依頼を果たした騎士様たちは、勇気があると言わざるを得ない。

 正直魔力があったからと言っても、無謀すぎるわ。


「それはそれとして、お母様が青い森に行くように頼んだ騎士様のお名前と人数は? ハレノ様、明日にでもその騎士様たちのお身体を浄化しに行きましょう。青い森は空間の割れ目の瘴気とは桁違いに濃いと聞きます。お身体に異変があるかもしれませんわ」

「そ、そうか! そうですよね!」

「はあ……せっかくハレノ様にゆっくりとお休みいただくためにオルバグに来ましたのに……」

「気にしないでください。戦うわけじゃないんですし」


 お母様も「あ、確かに」と能天気なことを。

 頰に手を当てて、溜息を吐く。


「そうですわ。それともう一つお母様にお許しをいただきたいことがあるのですが」

「え? わたくしに? なぁに?」

「今夜、わたくしたちに同行してくださった騎士様の中でも親しい方をお二方、夕食に招待したいのです」

「まあ、もちろんよろしくてよ」

「その時に、ブリジット様にお母様の研究を見ていただいてはどうかしら? ブリジット様は王宮魔法師団の筆頭魔法師。お母様の研究に、きっと興味を持たれますわ」

「いいですね!」


 ハレノ様も手を叩いて賛成してくださる。

 わたくしが思うに、ブリジット様はお母様の研究に絶対に食いつく。

 なによりわたくしがお母様の研究に関してブリジット様がどう思うのか知りたいわ。


「ところで、二人と言っていたけれどそのブリジット様という魔法師様以外にどなたが来るの?」

「ユリッシュですわ」

「ほえ!?」

「まあ、ユリッシュ! 懐かしいわね。彼も立派になったでしょうね」

「ええ。楽しみになさって。ねえ? ハレノ様」

「ぐ、ぐぐ……」



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