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母の屋敷で夕食会


 母に許可も得られたし、夕食にユリッシュとブリジット様を招くことができた。

 ユリッシュにとってもわたくしのお母様との面会は久しぶり。

 お母様も玄関に迎えに出て、ユリッシュの姿を見たら「まあ! 噂に聞いていたとおりすごく素敵になったわねー!」と叫ぶ。

 珍しく、ユリッシュもたじたじになっている。

 

「ご招待いただき、ありがとうございます。俺はブリジット・ジヴェ。王宮魔法師団所属の魔法師です」

「初めまして! わたくしはロメーヌ・ラクルテル。ロゼリアの母です」

「お会いできて光栄です」

 

 定型文のような挨拶のあと、二人を食堂に案内する。

 食堂にはすでにハレノ様が座っており、ユリッシュの顔を見るなり安心したような表情を見せた。

 可愛らしい。

 

「では、本日の出会いを祝して――乾杯」

「「「「乾杯」」」」

 

 食前酒。

 ハレノ様の世界では酒は二十歳になってかららしく、この国での『酒は貴族十八歳、平民十六歳の成人と同時に解禁』を教えても断固拒否。

 真面目なところがとても聖女らしい。

 きっと本人はそんなことまったく自覚していないのだろうけれど。

 ハレノ様は今十七歳。

 あと三年は一緒にお酒が飲めないのよね。

 残念だわ。

 いえ、それ以前に……もしも昼間の話から、バミニオスや瘴気の問題が根本から解決したのなら――ハレノ様はこの世界に滞在する意味を完全に失う。

 きっと今も、ハレノ様は元の世界に帰りたいと思っておられるわよね。

 ユリッシュと結婚を考えていたとしても、きっとその気持ちは変わりないのだろう。

 寂しいけれど……元の世界に帰っても、今のハレノ様ならきっとより幸福な未来を掴みとれるはずだ。

 

「さっそくなのだが――王都から我々に手紙が何通か届いていた。すべて目を通したが、共通するのが『王都ではヒメナ・ウミイエが聖女として公表され、歌姫聖女として人気を博している』ことと、『エルキュール殿下がそのヒメナと婚約するらしい』と。これについて、魔法師団から意見を提出しようと思っている」

「騎士団も同じく。これまでハレノ嬢とともに戦ってきた騎士たちも怒り狂っていてね。“騎士団として”意見を出さなければ抑えきれなくなりそうなぐらい。だから止めないでね」

「止めませんが、タイミングはわたくしの方に合わせていただけませんか?」

 

 ああ、やはり騎士団と魔法師団にも報告がいっていたか。

 しかし、騎士団も魔法師団も遠征で実績を積み重ねてきたハレノ様を支持する、と表明するつもりらしい。

 わたくしが微笑むとなにかを察したらしい二人が「「了解」」と言ってくれた。

 さすがに賢いわね。

 

「えっと、ヒメナが悪いことをしてしまった、ってことですか?」

「ハレノ様にとってはおつらいことかもしれませんが、ヒメナ様はやりすぎですわね。内政に完全に干渉し始めてしまいましたから」

「え……!? そ、そんなにまずいことをしているんですか……!?」

「わたくしに公務をやるため、第二妃になるように打診が来ておりますの。ヒメナ様を正妃として、しかし王妃教育は受けていないから、と」

「うわあ」

 

 ユリッシュの冷めた眼差し。

 かつて一番の友、理解者であったユリッシュがこんな表情をするなんて。

 エルキュール殿下……。

 

「つまり、俺との婚約の話は――」

「申し訳ありません。父としてはやはり長年婚約者であったエルキュール殿下に嫁がせたいと申しておりまして」

「そうか。貴族であるならば仕方がないな」

 

 なんてこともないようにおっしゃるが、ブリジット様……目が、障兵と対峙している時のそれですわ。

 殺気も漏れておりますし、声も非常に低い。

 セリフとまったく異なっているのよ。

 おかげで本心でないのがとても伝わってきて、お母様も見たことのないような笑みを浮かべている。

 なにも面白い話はしていないわよ。

 

「そう! ロゼリアがエルキュール殿下と婚約破棄したと聞いていたけれど、ブリジット様と婚約のお話が進んでいたのね!」

「え、ええ。でも……」

「――そうね。貴族である以上、結婚相手を自分で決めるのは難しい。ブリジット様はロゼリアのことをだいぶ気に入ってくださっているようですけれど……」

「はい。俺は三つの大陸で多くの国々に遊学しましたが、これほどの女性には会ったことがありません。『国一番の淑女』と言われていますが、俺は『世界一の淑女』だと思っています」

「ま、まあ……ッ」

「あ、あらあ……!」

 

 な、なんてことをおっしゃるの、ブリジット様。

 そこまで褒めていただく必要なんて、ありませんのに。もう……!

 先ほどの、貴族ならば、とおっしゃっていた声色や表情と真逆。

 まるで、ハレノ様と話す時のユリッシュみたいな――。

 

「こ、こほん! それよりも、ブリジット様をご招待したのは、わたくしのお母様にご紹介したかったのともう一つ、理由がありますのよ」

「ああ、例の――だろう?」 

「ええ。そろそろハレノ様にもお話していいと思いますの」

「私ですか?」

「はい」

 

 ブリジット様と顔を見合わせ、頷き合う。

 不思議そうなハレノ様を真っ直ぐと見つめて、ブリジット様の方を見るように促す。

 ハレノ様が恐る恐るブリジット様の方を見ると、口を開く。

 

「君が言っていた望み、元の世界に帰りたいと言っていたのを覚えているか?」

「え?は、はい……」 

「元の世界に戻る方法がほぼ開発完了した。君を元の世界に帰すことができるようになったということだ」



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