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実家からの手紙(2)


『ブリジット・ジヴェ様との婚約について、エルキュール殿下と国王陛下、王妃殿下より一時保留してほしいと打診があった。王家の許可がなければ婚約の手続きを進めることができない。申し訳なく思っている。理由をお伺いしたところ、状況によっては再びお前をエルキュール殿下の婚約者に戻すかもしれないからとのことだ。エルキュール殿下は先日、聖女とともに召喚された少女、ヒメナ様との婚約の話が進んでいると公表された』

 

 まあ……本当にヒメナ様との婚約話を公表してしまったのね。

 呆れたわ。

 しかし、それならばなぜわたくしとの婚約を戻したいという話になっているのかしら?

 陛下と王妃様のお考えはわかる。

 おそらくヒメナ様との婚約自体、お二人は反対なのだろう。

 でも殿下は?

 なぜわたくしとの婚約を戻そうとなさっているのかしら?

 とりあえず読み進めてみましょうか。

 

『しかし、ヒメナ様は王妃教育を受けて育ったわけではない。現在突貫で王妃教育をうけておられるようだが、正式な聖女ではないため長年の教育で『国一番の淑女』と呼ばれるまでのお前と比べるととても他国に連れて歩けるものではない。そのため、外交用としてお前には第二王妃として殿下と結婚をしてもらいたいと考えているのだろう。ラクルテル侯爵家としては、王家に嫁入りさせられるのならそれが一番よいと考えている。申し訳ないが、その時は理解してほしい』

 

 ――なるほど。

 わたくしを『妃の予備』にしようというのね。

『聖女の予備』であるヒメナ様にとって、わたくしを“第二王妃”にするのはさぞ、よい復讐になるのだろう。

 おそらく陛下と王妃様も、王妃教育を受けていても信用のならないヒメナ様を正妃に据えるのには不安が大きいのでしょうね。

 ですが、それでは『異世界から来たヒメナ様はやはり王妃の器ではなかった』『王妃としては力が不足しているから、ロゼリアを第二妃にした』と陰口を叩かれるだけなのだけれど。

 そもそも、ヒメナ様とわたくしがエルキュール殿下と結婚してから本性を出さないという保証がまったくない。

 むしろ、それまでの間の猫被り。

 ハレノ様の話から推測するに、今のヒメナ様はエルキュール殿下の好みに合わせている状況。

 それで籠絡される殿下も殿下なのだけれど……はあ……。

 

「最後の一通は、一昨日届いたのだったかしら?」

「はい。開封いたしますね」

「ええ」

 

 さすがはお母様の屋敷の使用人。

 わたくしが溜息を吐いても微動だにしない。

 最後にして最新の一通を開けて、中身を取り出す。

 父からの手紙のみ、のようね。

 

『ロゼリア、私が送った手紙は届いているだろうか? 返事がないのは仕方がないとはしているが、それは些か返事がほしい。実は近日、エルキュール殿下とヒメナ様との婚約が正式に決定した、という公表が行われることになった。王宮のダンスホールで、婚約発表披露パーティーが開催される予定なのだ。騎士団の報告では、オルバグの瘴兵を討伐すれば王都に戻ってくると聞いている。日時がわかり次第、連絡をしてほしい。ドレスや小物は用意しておく』

 

 ですって。

 つまり、本当に婚約した、のね。

 婚約の予定、ではなく。

 溜息が出てしまう。

 その前にわたくしを第二王妃にする、という話をしておきながら、着々と話が進んでいくのね。

 そこに“わたくし”の意思は……絶対に含まれない。

 いかにも貴族の結婚という感じだが、エルキュール殿下とヒメナ様の婚約はそうではない。

 とはいえ、一応ヒメナ様は歌姫としての実績はある。

 どうやら破格の人気を博しているようで、アリスの手紙にも『人気は異様なほど』と書いてあった。

 いったいどんな歌姫なのか、わからないけれど……異世界の“歌”ならば物珍しさから人目を引くのは仕方がない。

 ただ、物珍しさだけではやっていけないだろう。

 本人もそれがわかっているから、わたくしを“第二妃”にすることを了承しているのだろうし。

 もし本当にそうなったら、わたくしに選択権は――ないもの。

 

「困ったわね」

「なにかご用意することがありましたら、お申しつけください」

「ああ、そうね。では、便箋と封筒、インクとペンをお願いできるかしら? それと配達屋の手配を」

「かしこまりました」

 

 父の気の利かなさには本当に困ったわ。

 とりあえず、本当に婚約発表披露パーティーを行うのであればわたくしよりもハレノ様のドレスと靴、装飾品の用意が先だろう。

 我が家に来たばかりの頃のハレノ様とは全体的なサイズが違うもの。

 先に間を見て描き溜めていたデザインとハレノ様のドレスの依頼を、アリュードルネ被服店にする。

 今のハレノ様のサイズはわたくしの目算だけれど、最初の80キロ台から60キロ台半ばになっているはず。

 旅の間にまたさらにスリムになるだろうから……このくらいのサイズで注文しましょう。

 最低限のサイズにしておけば、リボンやゴムで可愛くジャストフィットサイズに修正できるわ。

 あ、そうだわ。

 

「夕食に騎士団の方を二人、招待したいのだけれど、厨房に確認をしてもらってもいいかしら?」

「かしこまりました。ロメーヌ様にお伝えしておきます。騎士様への招待状はいかがいたしますか?」

「それも今から作るので、先に配達してもらえるかしら」

「かしこまりました」

 



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