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魔法師団で(3)


「ブリジットよ、ロゼリアを聖女の専属護衛にする許可はわしが出そう。というよりも、これほどの魔法を使えるとは思わなんだ。ロゼリアよ、今からでも王宮魔法研究室に来るつもりはないか?」

「興味深いお話ではございますが、魔法の研究をするのは熱意のある方にお任せすべきですわ」

「ふむ。そうか。して、愚息の失言に対してロゼリアはなにか望みはあるか?」

「まあ、これ以上我儘を言ったらバチが当たりそうですわ。陛下がお忙しい時間を割いて会いにきてくださっただけで幸いに存じます」

 

 が――陛下としてはわたくしになにか願わせたい(・・・・・)のかしら?

 意図が読めないわ。

 というか、情報が少なすぎる。

 わたくし、そこまで情報通というわけではないので。

 お茶会や夜会にもあまり出ていないので、結構世捨て人感があるのよね、わたくし。

 よその家に行く時は、だいたいその家の子の家庭教師の時だもの。

 

「本当によいのか? そなたの異母妹は、歌姫候補だったと聞いておるが」

 

 ああ、そのことか。

 陛下としてもヒメナ様がゴリ押しで歌姫にされたのは予想外だったのかしら?

 話を陛下自ら振ってくるということは、殿下の独断か。

 “王家”としては、やはりヒメナ様を『歌の聖女』と公表するのは反対、ということのようね。

 

「妹は強い子であり、優秀な子ですわ。ここでわたくしが“同じこと”をするわけにはいきません。あの子は在学中に、必ず自力で歌姫になることでしょう」

「――なるほど。確かにその通りだ。余計なことを言ってすまぬ」

「とんでもございません。お心遣い感謝いたしますわ」

 

 でも、それにわたくしたちを巻き込むのはやめていただきたいわ。

 そんなことをしたら、一度はヒメナ様に向けられた怒りが全部アリスに向けられてしまう。

 アリスは実力も家柄も十分。

 今回ダメでも必ず在学中に選ばれる。

 ただ、不安要素としてはヒメナ様が今後もゴリ押しされ続けるのではないか、という点。

 陛下の様子を見るにさすがにそれはさせないだろうけれど。

 

「ではなにか望みができたら気軽に話しておくれ。君には我慢ばかり強いているからな」

「ありがとうございます、陛下」

 

 なんという幸運。

 陛下に借りが一つ。

 しかもこんな大勢の人間がいる前で。

 これはわたくしにとって大きなアドバンテージになる。

 

「本当に……こんなご時世でなければ君にはぜひ、我が娘となってほしかった」

「――ありがとうございます。もったいないお言葉ですわ」

 

 陛下の最後の言葉にはなんの裏もない。

 手を振って去っていく陛下を見送ってから、集まっていた魔法師たちが息を吐き出して話し始める。

 

「さ、さすが『国一番の淑女』。魔法の威力も桁違い……本当に一般人か?」

「ただの貴族令嬢が使っていい魔法じゃねーよ。すごすぎんだろ」

「こんな魔法師がこの国に隠れていたとは」

「魔法騎士団長より強いんじゃないのか?」

「国王陛下とも懇意にしているようだし……完璧超人じゃないか」

「絶対主魔児(アルグ)だろ。才能があるのに今まで普通の人間みたいに生活していたなんて」

 

 ああ……またか(・・・)

 わたくしが主魔児(アルグ)だから、才能があるから、自分のやりたいことをやっているだけでもこう言われるのよね。

 主魔児(アルグ)だから魔法師にならなければならないとか、魔法の研究者になるべきだとか。

 そういう話もよくされるけれど……そういうのは熱意がある人間がやった方が、絶対にいいと思うのだが。

 

「ロゼリア嬢、十分だ。専属護衛の任はあなたに任せようと思う」

「ありがとうございます、ジヴェ様」

 

 彼らの声を遮るように、ジヴェ様が近づいてくる。

 無事に魔法師団の魔法師として認めていただけたようで。

 お辞儀をすると、ジヴェ様は「手続きをこちらで」と執務室へ促す。

 そうね、手続きがあるのよね。

 

「遠征の件と、聖女の専属護衛としての制度についてこちらが調べる時間がほしい。遠征の準備は騎士団側が進めているが、肝心の聖女がまだ遠征に乗り気ではないと聞いている」

「ええ、帰宅してから説得するつもりですわ。ハレノ様のお立場的にも、遠征には同行していただかなければ」

「そうだな」

 

 ジヴェ様はハレノ様とヒメナ様に対して、どこか一線を引いているよう見える。

 誰にも心を開かない。

 そんな印象……なのだが。

 

「ところで、婚約については考えてくれただろうか」

「そ――そのあたりについては、やはりお父様が決めることですので」

 

 やんわりと話を打ち切ろうとした。

 が、ジッと熱視線を感じる。

 そこまで熱心に見つめられると、疑問が湧く。

 

「あの……ジヴェ様はなぜわたくしに婚約を望まれるのですか?」

「あなたが努力家だと思ったからだ」

「――――」

 

 思いもよらない言葉が出てきて、息をするのを忘れた。

 わたくしが、努力家?

 確かに努力は惜しまないけれど……。

 

「そのようなこと、初めて言われましたわ。どこを見てそう思われましたの? わたくし、ジヴェ様とは今を含めて二回しかお会いしていないのですが」

「魔法を見ればわかる。特に先程の魔法は、どれほどの研鑽と理解を深めたのかがよくよく伺えた。それだけでなく、同時にまったく別の魔法――結界の修繕まで同時に行った。相当の努力を今も続けていなければできないことだ」

「あ……ま、まあ、あの……そ、そうですわね」



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