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魔法師団で(2)


「では、なんでもいいので魔法を使ってみてほしい」

「かしこまりました」


 なんでもいいと言われるのが一番困るのだけれど。

 まあ、けれどせっかく強力な結界があるのだから、使わない手はないでしょう。

 それに――自分が全力を出した時の魔法の威力を、わたくしは知らない。

 制御こそできるけれど、思い切り魔力を詰めて魔法を使ったことはないのだ。

 試してみましょうか。


「炎と土の力よ。怒り、悲しみ、大いなる裁き。星を逆さにし、星を解放し、星の導きの真の光を受けるがいい」

「こ、これは――!」

「まさか……っ」


 赤い魔力と黄色の魔力が混じり合い、巨大な恒星に練り上がる。

 わたくし、滅多に詠唱は使わない。

 しかし本気で魔法を使ってみたい、と思ったので全力を尽くすことにした。

 天空に輝く恒星は、炎を纏いながらゆっくりと落下してくる。

 結界の中に入ると、炎を増しながら地面にめり込む。


星裁怒(メギド)


 一拍の間。

 静まり返ったと思った次の瞬間、恒星が大爆発を起こす。

 結界にヒビが入り、広がったのをみて『あ、まずい』と悟って同時進行で結界の修復も行う。

 壊しながら直すとはまた奇妙な。


「ふう」


 約二十秒後、すべての熱量が収まり結界も完全に修復。

 後半の十五秒は結界に集中していたから、魔力がだいぶ減ってしまった。

 それでも、自分がここまでできるなんて驚き。

 やはり本気で魔法を使ってみるというのはいい経験になったわ。

 本気だと思っていたものが、意外に余裕があって驚いたというか。

 わたくしってこんなに強くて器用だったのね。

 これで本気だと思っていたなんて。

 まだできることがありそうで、自分の限界の先を知ることができた。


「なかなかいい経験でしたわ。こんな大きな魔法、使ったの初めて。でも、まだまだ余裕があるものですわね。これならもう一つくらい大規模魔法を使いながら広範囲高火力魔法も使えそうです。ジヴェ様、場所を貸してくださり、ありがとうございます! ……あら? 国王陛下!? なぜこちらに!?」

「……あ、ああ……う、うん……ま、まだロゼリアが城内にいると聞いて……。そ、それよりなにをやっていたのだ?」


 驚愕の表情で固まる魔法師団の面々の後ろに、なんとお供を複数人連れた国王陛下が立っていた。

 まあ、エルキュール殿下との婚約破棄以来ね?


「わたくしはハレノ様の専属護衛として遠征に同行したく、騎士団に登録しようかと思いまして。実力を示せとのことでしたので、自分の本気がどんなものだろうとわたくしが覚えている中で一番威力のある魔法を使ってみたところですの」

「ほ、ほお……そ、そうか。そ、その実力ならばなんの問題もないな! う、うむ!」

「ありがとう存じます。陛下に直接認めていただけて嬉しいですわ」


 あら、思わぬ収穫ね。

 陛下に認めてもらったならハレノ様の専属護衛になるのはほぼ決まりかしら?

 しかし――陛下の口調からしてわたくしにわざわざあいにきてくださったのかしら?

 お忙しいはずなのに、どうしたのだろう?


「ところで、陛下はなぜわたくしを探しておられたのですか?」

「う、うむ。どうやら先程、愚息がとんだ失言をしたと報告を受けてな」

「あらあらまあまあ。先程のことですのに、もう陛下のお耳に入ったのですか?」

「当然だ。言ってはならぬことを言ったのだからな」


 これはこれは。

 護衛の騎士様方ではなく、暗部騎士の方から早急な報告がいったのね。

 確かにあの空気を間近で見たなら時間を置いてよい状況ではないとわかる。

 暗部騎士の方も仕事が早くて素晴らしい。


「でしたらちょうどようございましたわ。実はハレノ様は元の世界に帰りたいと今もおっしゃっておりますの」

「な、なに? いや、しかし聖女を元の世界に帰すことは――」

「今すぐでなくとも構いませんわ。ただ、殿下があのようなことを口にしてしまった影響は、もうお一方(・・・・・)のようですので……やはりお二人とも元の世界に帰る術の有無は重要なのではないかと思いまして」

「――!」


 陛下の目つきが変わった。

 殿下の失言のことでこうも早く、しかも直接動かれたということは、陛下も思うところがあったのだろう。

 頰に手を当て、少しだけ目を逸らす。


「そうそう! 彼女はこの世界の淑女教育に興味を持っておられるそうですわね。わたくし本日殿下にお聞きして初めて知りましたわ。わたくしが相談役になっておりますのに、相談していただけなくて残念です。ですが、淑女教育に興味を持っていただけたならなによりですわ。ぜひ、わたくしの授業も受けていただきたいですわね」

「ふむ……」

「ああ、でもハレノ様の遠征に行くのでしたらその間は他の方の授業を受けていただくのがよいのかしら? それとも……」

「そうだな。こちらでよい教師を検討しよう」

「さすが陛下。お話が早くて助かりますわ」


 手を叩いて笑顔を向ける。

 今の会話、普通の貴族でもほのぼのとして聞こえるだろう。

 しかし陛下は相当殿下の情報を細かく収集している。

 つい先程の失言をもうすでにご存じなのがその証拠。

 その上でわたくしが申し上げたのは『ヒメナ様の影響で殿下が失言をした』『それならヒメナ様だけは元の世界に帰してもよいのではないか?』『このままでは殿下への悪影響は加速しかねない』である。

 それに対する陛下の返答。

『次期国王への悪影響があるのなら、元の世界に帰す術の研究を許可』『不在時の監視の徹底』である。



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