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魔法師団で(1)


 廊下の衛兵に声をかける。

 話を通しておいたので、すぐに魔法師団の研究棟に案内してもらえた。

 なんだか通る人通る人にジロジロ見られるが、部外者は珍しいから仕方ないだろう。

 と、思っていると突然、奥の部屋の扉が開く。

 驚いていると、出てきたのはジヴェ様。

 わたくしの顔を見るなり目を見開き、すごい早歩きで近づいてきた。

 な、なになになになに!?


「時間通りだな」

「は――あ、は、はい。突然の訪問依頼を受けてくださり、ありがとうございます」


 ああ、魔法師団棟を訪れると事前連絡していたから、迎えに来ようとしてくださったのだろうか。

 ちょっと思いもよらなくて一瞬たじろいでしまった。

 しかし、すぐに取り繕ってお礼とお辞儀をする。

 すると、ジヴェ様が一時停止してこちらをじっと見つめてきた。

 そしてふっと目を細める。


「美しいな」

「は――」


 さすがに……さすがのわたくしもジヴェ様が社交辞令で言っているわけではないと気がつく。

 この方は、わたくしに対する感想を漏らしているだけなのだ。

 貴族としてはあるまじきこと。

 心の中の、思っていることをそのまま口に出すなんて。いったいどんな生き方をしたら、貴族なのに飾り立てることもせずに率直な感想を告げてくるようになるのか。


「お師匠! お客様を廊下に立たせるなんて……! 執務室にどうぞ!」

「そ、そうか」

「ごきげんよう。本日はよろしくお願いしますわ」


 さて、お弟子さんが執務室に招いてくれたおかげで、ゆっくりジヴェ様とお話しできる。

 まず、ジヴェ様にお聞きしたいことは大きく二つ。

 ハレノ様とヒメナ様を元の世界に帰すことはできるのか。

 そして、ハレノ様の専属護衛にわたくしは同行させてもらえるのか。


「まず、聖女ともう一人を元の世界に帰す方法――送還の儀だが、おそらくできなくはない。ただ、研究自体を陛下に止められている」

「それはお聞きしましたわ。ですが少々事情が変わってきておりますの。ヒメナ様がエルキュール殿下にあまりよい影響を及ぼしているとは言い難い。わたくしから陛下に送還の儀に関する研究を進めていただくように進言いたします。その前準備を始めていただいても宜しくて?」

「そのようことができるのか?」

「それなら……」


 師弟が顔を見合わせる。

 やはり送還の儀そのものは不可能ではない。

 しかし、召喚魔同様簡単ではないし、準備も必要。

 召喚の逆を行わなければならないので、細かな調整は必須。

 研究が進められるのなら、魔法師団としても興味深いので行いたい。

 とのこと。


「多少なら送還の儀についての研究に出資もいたしますわ。家のお金ではありませんから、本当に些細な額ですが」

「なに? あなたの個人資金から?」

「ええ。これでもいくつかの商売をしておりますので、まとまった額はご用意しますわ」


 さすがに研究だけしてもらうわけにはいかない。

 研究にはお金がかかる。

 被服のデザイン量だけでなく、新規事業として去年から始めた農具の売り上げが好調なのでそれの売り上げの一部を提供できるだろう。

 まあ、それ以外の売り上げの八割は懇意にしている紹介の研究に使いたい。

 新しく便利な農具が開発されれば、国内の農産業が活発になる。

 瘴兵のせいで落ち続けている生産量を、少しでも回復できればいいのだが……。

 わたくしが思っていた以上に生産量が減っているらしいから、効率のいい農具の開発にはもっとお金と力をかけたい。


「陛下の許可も取ってもらえる上、研究費までいただけるというのか? ありがたい話だが……あなたの負担になるのではないか?」

「問題ありませんわ。無理のない範囲での支援になってしまいますから」

「それならば、ぜひ頼みたい」

「ええ、お任せください」


 国王陛下に“お願い”するにはそれなりに慎重になる必要があるが……今日の殿下の失言を使わせてもらう。

 婚約破棄したわたくし相手にあの発言。

 護衛騎士のお三方は有能だもの、幼少期からの友人関係にヒビが入ったことは陛下とと王妃様の耳にも入るだろう。

 わたくしからの“お願い”は一つくらい聞いていただけると思うのよね。


「それと、聖女による瘴兵討伐遠征同行についてだが、魔法師団の魔法師として登録したいということか?」

「騎士団の許可はいただける見込みですので、一旦今回は魔法師として登録させていただければと思っておりますの」

「騎士の称号は持っているのか?」

「ええ、在学中に取っております。騎士団の騎士としては保留にしていただいておりますので、王国騎士団、魔法師団の魔法師としての試験を受けさせていただければすぐにでも登録可能かと」

「ふむ……」


 さすがに微妙な表情。

 しかし、そこは魔法師団の筆頭魔法師様。


「では入団試験は俺が試験管になろう。魔法師団の団長は本日留守でな」

「まあ、そうなのですね。ジヴェ様がわたくしの魔法を見て、決めてくださるのですか?」

「正直以前見た炎の魔法で十分ではあるが――魔法師団の魔法騎士は偏屈な者が多い。彼らの前で実力を示した方がいいだろう」

「かしこまりました。では、移動いたしましょう」


 必要資料を弟子の方が揃えてくださり、訓練場の方に移動する。

 魔法師団の訓練場は特殊な結界で覆われており、どんな魔法が飛び出しても訓練場の外には被害を出さない仕様になっていた。

 まあ、面白い。


「おい、あれ……」

「見たことあるぞ。『国一番の淑女』、ロゼリア・ラクルテル侯爵令嬢」

「マジか、本物か! 本当に超美人じゃねーか!」

「やべぇ、いい匂いした! 研究漬けで風呂に入ってないうちの騎士団の女子どもからは絶対しない匂いした!」

「「「おおおお……!」」」


 なんかひどい話が聞こえてくるのだけれど、気のせい?



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