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生首の神饌  作者: 西季幽司
第四章「死者からのメッセージ」
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契約結婚④

「どこから話したら良いのでしょう。事件を解く鍵は全て西脇さんの夢のお告げにあったのです。西脇さんの夢のお告げがなければ結論にたどり着くことはなかったでしょう。西脇さんの夢のお告げは死者からのメッセージだったのです」弁当の包み紙を開けながら圭亮が言う。

 電柱のような体に似合わないフルーツ・サンドイッチだ。

「止めて下さい。またイタコの末裔だと言いたいのでしょう」と言いながら西脇は圭亮に話した夢を思い出していた。

「イタコの末裔どころか、立派なイタコです」と圭亮が言った時、ぶるぶると西脇の携帯が震えた。マナーモードにしてあった。

「メッセージです」と言って画面を見た西脇が顔色を変えた。「藤代さんからです。先生、後藤が逮捕されたそうです」

「えっ⁉」とサンドイッチをほおばりながら圭亮が驚く。

「詳しい状況が分かりません。ちょっとデッキに行って、電話をかけて来ます」

 西脇が立ち上がった。

 デッキに出て、藤代に電話をする。「ああ、西脇さん。大変なことになりました。今日の午後、後藤猛が逮捕されました。美嶽家にある後藤の部屋を捜索したところ、後藤が犯人であることを示す重要な証拠が出てきたそうです」

「重要な証拠? 一体、何が見つかったのですか?」

「それが分からないのです。鬼牟田先生から探りを入れてもらう訳には行かないでしょうか?」

「ああ、なるほど」

 丁度良い。木村由希子から聴取した内容を生長たちに教える約束になっていた。俯瞰的演繹法が発動してしまったものだから、圭亮は未だに生長たちと連絡を取っていない。「鬼牟田先生から生長さんに電話をかけてもらいましょう」と言って電話を切った。

 すると会話を聞いていたかのように「どうです? 何か分かりましたか?」と圭亮がデッキに現れた。「ああ、家宅捜索で何か出たみたいです。それで後藤さんが逮捕されたということです。詳しいことが分からないので、先生、生長さんに電話をかけてみて下さい。ほら、木村由希子から聞いた話をまだ伝えていませんよね。事情聴取が終わったら、内容を伝える約束になっていたはずです」

「あっ! これはしまった」圭亮が慌てる。

 生長に電話をかけたが出てくれなかった。後藤逮捕で捜査本部はごった返しているのだろう。電話に出る暇もないのだ。

「先生、浅井さんは? 木村さんからの事情聴取は、もともと浅井さんのアイデアでしょう? 浅井さんに電話をしてみてはいかがですか?」

「そうですね」

 浅井に電話をすると、今度は直ぐに出てくれた。「鬼牟田さん。どうでした?」

 浅井は圭亮からの報告を待ちわびていたようだ。ハンズフリーにして西脇にも会話を聞かせてくれる。

「木村さんから聞いた話は後程、詳しく説明いたしますが、後藤さんが逮捕されたって本当ですか?」

「ええ、鬼牟田さん。やりましたよ。やつの自宅を家宅捜索したら、ざくざくと物証が出て来ました。やつが犯人で決まりです」

「ざくざくですか! まさか日本刀が出たとか?」

「おや、何故、日本刀だと?」

「石突を手作りして槍を保存しておいたような人です。例え犯罪に使われた刀であったとしても捨てられずに大事に取っておいたのではないかと思っただけです。本当に日本刀が出たのですか⁉」

「他にもいっぱい。長靴だとかロープだとか」

 東野正純の遺体発見現場には長靴の足跡が残されていた。宝来家の庭にも同じ長靴の足跡があった。その長靴が見つかったのだろう。ロープは東野正純を木から吊るしたロープのことだ。同じものが見つかったということだ。

「長靴にしてもロープにしても同じものが簡単に手に入るのではないですか? 長靴やロープを持っていたからといって犯人だと決めつけることは出来ないのではないですか?」

「ええ、まあ」渋々といった感じで浅井が言う。「軽トラックの鍵がありました。ほら、碇屋恭一が乗り回していて漁協の軽トラックです」

「碇屋恭一の胴体を軽トラックに載せて何処かに運んだということでしょうね」

「ええ。軽トラックは神社に戻しておいたが、うっかり鍵を持ち去ってしまったのでしょう」

「軽トラックに鍵を残したままにしておく方が不自然ですからね。処理しようと、持ち去ったのでしょうが、胴体と一緒に始末しなかったのですね」

「とにかく、日本刀があります。確たる証拠です。鑑識で調べてもらっていますが碇屋恭一氏を殺害した凶器で間違いないということです。どんなに綺麗に掃除しても、痕跡が、DNAが残っているものですから」

「後藤さんは何と言っているのですか?」

「相変わらずダンマリですよ。もともと口数の少ない男ですが、何もしゃべりません」

「何も話さないと決めているのでしょう。彼がそう決めたのなら、恐らく死ぬまで何もしゃべらないと思います」

「おや、鬼牟田先生、何か分かったのですか?」

「多分、事件の全容が解明できたと思います。全ては僕の想像に過ぎませんけど。浅井さんの感がズバリ的中しました。木村由希子さんから事件の謎を解く重要な鍵を得ることができました。今、時間、大丈夫ですか?そうですか。では、手短に説明します。後日、できれば生長さんを交えて、ゆっくり話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ああ、良いですね。チョウさんに聞いておきます。ただ、チョウさん、忙しそうなので時間が取れるかどうか」

「これから、もっと忙しくなると思います。そうですね~早ければ今日中に、事件の鍵を握る重要参考人が出頭して来るでしょう。浅井さんも寝る暇がないくらい忙しくなるかもしれません」

 珍しく圭亮が予言めいたことを言った。

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