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生首の神饌  作者: 西季幽司
第二章「名探偵参上」
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天狗少年①

「槍の石突の部分を調べてもらうように生長さんにお願いしておきましたよ」圭亮は言う。

 生長と随分、親しくなったようだ。圭亮は西脇の夢を槍の石突を調べろという意味だと読み解いて、そのことを生長に伝えたようだ。そんな話、現役の刑事が信じるかどうか。

「ああ、そうですか」と西脇は興味がない。

 所詮は夢の話だ。自分にそんな超能力があるなんて思ってもいない。確かに夢のお告げ通り、東野正純の首吊り死体が見つかった。だが、それは単なる偶然だと思っていた。

「先生。他に有力な容疑者はいないのですか?」

「弘中俊文という人物を疑っているようです」

「弘中俊文⁉」そいつは一体、誰だと菊本に視線が集まる。

 皆の注目を浴びて、「し、知りません。聞いてみます」と菊本がおどおどしながら答えた。

「弘中俊文は東野正純さん、碇屋象二郎さんのひとつ下で、学生時代に虐めにあって引きこもりになってしまったようです。碇屋恭一さんともトラブルがあり、碇屋兄弟と東野正純さんに対して恨みを持っていた人物だと聞きました」

「それだけ分かれば何とかなるでしょう。頼むよ。菊本君。少し調べてくれないか」

 藤代が言うと「はい」と菊本は会議室を出て行った。今井町民で美嶽セメントに勤める友人がいると言う。彼に話を聞きに行ったのだろう。行動的な若者だ。

 入れ違いで受付の女性がやって来て「鬼牟田さんにお客様です」と言う。「誰ですか?」と尋ねると「社長のお嬢さんです。お友達とご一緒で、鬼牟田さんにお会いしたいと言っています。どうしますか?」と言う。

 圭亮が返事をする前に、「何だろう? 直ぐに通して下さい」と西脇が答えた。

 コンコンとノックの音と共に、会議室に美嶽奈保子が現れた。奈保子が姿を現した途端、昼間にもかかわらず会議室がパッと明るくなったようだった。若い女性を連れている。背格好は奈保子とほぼ同じ。柔和で優しそうなイメージの奈保子と違い、キリリと跳ね上がった細い眉毛と大きな口が勝気さを感じさせた。

 女性は碇屋美羽と名乗った。「碇屋恭一、象二郎の妹です」と言う。美羽は西脇に歩み寄ると、「鬼牟田先生。兄を助けて下さい」と懇願した。

 後藤象二郎が警察に呼ばれ、逮捕されるのだと思ったのだろう。

「すいません。鬼牟田先生はあちら。あのデカイ人」と西脇は圭亮を紹介すると「サクラ・テレビの西脇です」と名乗った。

「あら。テレビ局の人」美羽が目を輝かせる。

「碇屋さん。心配しなくて大丈夫ですよ。お兄さんはもう直ぐ釈放されます。事情をお聴きしているだけです」

 圭亮が優しく話しかける。

「本当ですか⁉ 今朝、突然、二人の刑事さんがうちにやってきて、象兄を連れて行ってしまいました。恭一兄ちゃんが死んでから、うちの親はすっかり元気がなくなってしまい、おろおろと狼狽えるばかりです。これで象兄までいなくなったらと思うと・・・私が余計なことを言ったものだから、象兄、宝来家に行ったのだと思う。もう泣きたくなりました。でも、泣いている場合じゃないと思って、ナホちゃんに相談したら、偉い先生が来ているから相談したら良いよって」

 よくしゃべる。

「偉い先生だなんて」と圭亮が照れる。

 西脇は「先生、そこじゃないでしょう」と突っ込んでから「碇屋さん。余計なことって何ですか? 何をお兄さんに言ったのですか?」と美羽に尋ねた。

「それは――」と美羽は一瞬、口籠ってから言った。「恭一兄ちゃんを殺したのは宝来宗治さんじゃないかって言ってしまったのです」

「宝来宗治さんが碇屋恭一さんを殺したって、何故、そう考えたのですか?」

「直樹さんが町からいなくなった時、誰もがあのろくでなしの親父のせいだって思ったはずです。あいつを捨てて町を出たのだって。直樹さん、成績だって良かったのに、あの親父のせいで行きたかった東京の大学をあきらめたのです。一人にしておけないって。あいつの面倒を見るために町に残ったのです。優しい人だったから」

 美羽の話は止まりそうもない。

「宝来直樹さんの失踪とお兄さんの事件との間に、どんな関係があるのですか?」

「ひょっとしたら直樹さんが帰って来ているんじゃないかと思って、宝来家に行ってみました」

 一瞬だが奈保子が苦しそうな表情をしたのを西脇は見逃さなかった。美羽が話を続ける。「やっぱりいないみたいで帰ろうと思ったら、あの親父が酒瓶下げて坂を上って来たのです。酒屋で酒を買って来たみたいで、直樹さんが帰って来ていないか尋ねたら、直樹はいないって答えました。昼間から酒瓶下げて歩いている親父の顔を見ていたら、何だか無性に腹が立って来ちゃって、あんたがしっかりしていないから直樹さんが出て行っちゃうのよと言ってしまいました。そしたら、あの親父、怒ったみたいで――」美羽は眉を顰めて言った。「恭一の野郎だ。直樹が何処に行ったのか知りたければ恭一に聞けと言ったのです」

「宝来直樹さんの失踪に恭一さんが関与していたのですか? それで、どうしました?」

「恭兄ちゃんに確かめました。直樹さんが何処に行ったか知っているのか?」

「お兄さんはなんて返事をしました?」

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