姦し食堂
「いい男が欲しい!」
唐突に叫び出す竹井。だが周囲の女子達は慣れているようで、無視してプリンを食べ続ける。
ただ一人、羽山だけがキョロキョロと周囲を窺う。
「大丈夫だって、セーラちゃんもミー君も近くにいないから。心配ならあんたの虫に見張らせればいいじゃん」
「そういうのはプライバシーの侵害じゃないですか」
「いい子ぶらない、いい子ぶらない。あんただって男欲しいよね? ミー君狙いなのはバレバレだし」
羽山の耳が真っ赤になる。
「ミー君はセーラちゃんと結ばれて、末永く幸せに暮らすんですっ」
「はーん? ひーん? ふーん? そんなの誰が決めた?」
「せっかく相思相愛なんだから、結ばれないと可哀そうじゃないですか」
「まあ、男はやっぱ若い女がいいんだろうけどさ。セーラちゃんは若すぎだろ? 日本じゃ犯罪じゃん。今年で15? 16? こっちの法律じゃセーフ?」
プリンを食べ終わった吉田が話に加わる。
「自称16歳だそうだけど、あれは多分誤魔化してるよね。それでも14歳にはなってそうだけど」
「あれで14だったら、将来楽しみというか末恐ろしくない? 異世界って凄い美人がたまにいるけど、あの子だったら、ぶっちぎりでヒロイン枠だね。ちょい馬鹿だけどいい子だし」
「お馬鹿のあんたにだけは言われたくないでしょうね」
「近頃は馬鹿も誉め言葉なんだって。馬鹿な子ほど可愛いって言うしー。そんなことよりセーラちゃん程の美少女がミー君なんかにラブラブ過ぎるのが謎過ぎる」
「いや、ミー君普通にいい男だよ? プリンに理解もあるし、真剣にプロポーズされたら断る理由は見つからないなあ」
「そりゃあ、あたしだって、土下座してプロポーズされたら考えてやらないこともないけど。そうじゃなくって、セーラちゃんだよ。貴族のお嬢だよ? 何が悲しくてミー君なんかと」
「ミー君はセーラちゃんの白馬の王子様なんです。絶体絶命のピンチに颯爽と飛んできた命の恩人なんです。そんなの一生ついていくでしょう?」
「やっぱ飛べるのは強いよねえ。絵になるしカッコいいし。最初から知ってればツバつけといたんだけど、オナラなんて言うからさあ。オナラ設定どこ行った? まさかオナラで空飛んでたりして。ぷぷっ、笑える」
「竹ちゃんはこじらせてる。本当はミー君が好きなのに素直になれなくて、そういう酷いことを言う。子供過ぎ。セーラちゃんの方が大人」
「羽山の癖に生意気! そうよ、こじらせるわよ! 羨ましくて妬ましいのよ! あたしだってピンチになってお姫様扱いされたいよ!」
「うむ、ああいうのはなかなかいいものよ。ベタな展開でも実際に経験するとドキドキするし、プリンとはまた違って良き」
「ふん、そんなのつり橋効果だって! あたしも吊り橋渡りたい! よし決めた! 次の遺跡巡りの冒険でピンチになって、ミー君をおとす!!」
「馬鹿な真似は止めときなって。あんたじゃ逆立ちしたってセーラちゃんには勝てないよ」
「何をおっしゃる馬鹿どもめ! 宝くじは買わないと当たらないのよ! それに異世界と言えばハーレム! ハーレムが嫌いな男子なんていない! あの手のタイプは押しまくれば落ちるわ」
「でも竹ちゃんミー君のこと虐めてたじゃない。嫌われて……恋愛対象とは思われてないんじゃないかな?」
「そこはギャップ萌えって奴よ。大丈夫、あたし結構可愛いから」
言いたい放題言って満足したのか、飄々と立ち去る竹井。
「アルコールも入ってないのに、ホントやりたい放題な奴だなあ」
「絶対お酒飲ませちゃ駄目な人ですよね」
嵐が去った食堂に平穏が戻る。だがそれは表面的なものであった。
『『『ハーレムか! その発想は無かった!!』』』
セーラちゃんと三井寺の微笑ましい交際を、これまで穏やかな気持ちで見守って来た女子達。
だが、竹井が馬鹿をするならもう遠慮はいらない。
仁義なき戦いの火蓋が、静かに切って落とされたのだった。




