神々の寿命
「グラさーん、やっぱりこの島の遺跡って生きてるみたいだったよ」
とりあえず男を留置所にぶち込んでから、グラさんの神殿に相談に行く。困った時の神頼みだ。
『島が空飛んでるんじゃ、そりゃあそうじゃ』
「グラさんは飛ぶ仕組みとか知ってるの?」
神様が全知全能だとしたら、僕がおならで空を飛んでいることもバレてるかもしれない。恥ずかしいから今までずっと秘密にしてきたけれど、神様になら知られても平気だろうか? 人の心を読めるんだからバレてるかもしれないけれど、心の壁で隠せていると思いたい。
まあ、グラさんは優しいから、知っててもあえて触れないでいてくれるのかも。
『まあ飛ぶってことはそりゃあ凄い仕掛けで……こう、星を動かすような、とにかく凄い……なんじゃったかのう? 前は確かに知っとったんじゃよ? 忘れたってことは、たいして重要じゃなかったんじゃのう』
なんか残念な神様だ。
『いや、神だってこの世の全てをいちいち覚えてたらきりないわ。いざとなったら神様掲示板で聞くからいいんじゃよ』
「それってアカシックレコードにアクセスする的なやつですか?」
『いや、そういう大袈裟なやつでなくて、本当に掲示板。地球のとそう変わらんのじゃ』
「グラさん、地球の掲示板も見てたんですか?」
『一時期ちょっとハマっとった。ロム専なら神通力もそんなに使わんし。勇者の奴が評判悪くてのう、なかなか愉快なんじゃよ?』
「ネットの情報は大半が嘘って言いますし、鵜呑みにしない方がいいですよ」
『神様掲示板は大丈夫じゃぞ』
神々は基本嘘はつかないらしい。まあ神様だし、いろいろあるのだろう。
「はあ、じゃあ砲台のパスワードとかもその掲示板で聞けばわかりますかね?」
『些事過ぎるのう。そういうのをあまり聞いとると教えて君扱いされそうじゃのう』
神様でも教えて君いるんだね。グラさんもいろいろ気を遣ってるんだ。
『それにその手の謎は自分で解き明かすのが面白いのではないか?』
それは確かに。楽して解ける謎にありがたみがあるだろうか?
「結局、空島を作った文明って、何故滅びたんでしょうね? 強力過ぎる武器を持て余して自滅したパターンだと、下手に弄るのは危険だと思うんですよね」
放射線とか未知のウイルスとか、おならバリアーで防げないかもしれないし。
『文明の終わり方か、ふむ。無数の文明の数だけ滅びた理由がある訳じゃからして、面白いから掲示板の定番ネタじゃのう』
確かに、神々ならそういうの好きそうだ。というか、神様だって文明が滅んだら死活問題だろう。
複数の文明に渡って信仰され続ける神様もいるだろうけれど、滅んだ文明と共に忘れ去られる神だって多い。
地球のギリシャ神話の神々とかは現代でも有名だけれど、既に信仰の対象ではなくなっている。
あれ? そう考えると神々の寿命は案外短い?
「神は死んだのか?」
『急に何を言い出す? 縁起でもない』
「いや、空島文明で信仰されていた神様は、今はどうなってるのかなって」
『空島には神殿の痕跡は残されてなかったんじゃろう? 宗教施設が何も無いのは少し妙じゃのう。面白くなってきたわい』
グラさんは謎解きミステリーを楽しむつもりみたいだ。
「ああ、モリさん達だったら、昔の宗教施設を見つけても壊して埋めちゃうかも。最初から無かったことにされちゃうなあ」
今では彼らはグラさん原理主義者なので、グラさん以外の神は認めないのだ。このままじゃ一神教になりそうだ。
『熱心に信仰されるのは神として悪い気はせんが、他の神と争いになるのは困るのう』
ふーん、グラさんでもそういうのちょっとは嬉しいんだ。他の神との戦いって宗教戦争だよね? それともトロイ戦争みたいなヤツだろうか?
「神様ってなんだろう?」
『なんじゃ? 今更そこからか?』
「だってそうじゃないですか。もう訳わかんないですよ。いっそのこと文明イコール神だと考えた方が辻褄が合うかも」
文明を擬人化したのが神という新説を思いついた。かなり無理があるかなあ。
『面白いが、少なくとも儂は文明ではないな。じゃが、いつかこの国が大きくなり、一大文明圏を築いたあかつきには、その辺はごっちゃになってるかもしれん』
意外に夢はでっかいグラさんだった。いずれ世界的宗教へと発展したらいいな。
とりあえず今後の方針は決まったな。
空島文明が滅んだ理由と、信仰されていた神様を調査してみよう。
別に、超兵器を復活させたい訳でもないし、財宝も欲しくない。調査そのものがゲームなんだと考えよう。
神様掲示板とやらで質問すればすぐに答えが分かるだろうよ? でもネタバレは嬉しくない。
このことは皆には内緒にしておこう。手品の種は知らない方がいいし、舞台裏は見ない方がいい。その方が人生楽しめる。




