好きこそものの
「わ、私めを古代史研究室の室長に!! 粉骨砕身務めさせていただきます。閣下に永遠の忠誠を」
プチダンジョンでいきなり斬りかかって来たイケメンモドキ、野放しにしておくのはあまりにも危険だったので、適当に仕事を与えて働かせることにした。
読み書き計算ができれば、役人として働かせることができる貴重な人材なんだけれど、そんな仕事をさせてもサボるのは目に見えているし。
この世界の人間達はとにかくサボる。頭がいい奴らほどサボる。役人なんてちょっとした仕事を数日かけてダラダラとやり続けるから、竹井と比べても百倍以上効率が悪い。一騎当千? ぶっちゃけ書類仕事は自分達で全て処理した方が早い。
本名ジール、この世界的には凄く普通のありふれた名前だ。まあ、僕らは秘密の名前で呼んでいたりするけれど。
絶対こいつは好きなことしかしないタイプだとすぐに見切ったね、ならもうやりたい放題させるのがいいだろう。どうせ首輪をつけておくのが目的で、仕事そのものには何も期待していない。
雇ってやったら急にペコペコしだして調子のいい奴だと思ったけれど、彼が僕に感謝しているというのは本当のことだったようだ。
遺跡の研究をしていた目的も、世間に認められて立派な肩書きの職業につくためだったらしい。
いつまでも親の脛を齧っているのは肩身が狭かったようだ。小さい奴なのか、案外大物なのか、良く分からない奴だ。
古代史研究室というのは、なんとなく思いつきでつけたんだけど、アカデミックな感じが彼の琴線に触れたようだね。
与えた建物に勝手に王立古代史研究室と立派な看板をかけて、せっせとガラクタを溜め込んでいる。
仕事をしているのか趣味に没頭しているのかは不明だが、気味悪いほど働く奴だった。ああいう情熱が間違った方向に向かうと、世界征服とかやらかしちゃうんだろう。無事更生できそうで良かった。
僕は毎日世界中を飛び回っているから、古代の遺物みたいなものも良く拾う。貴金属や宝石以外は、この世界では価値のないガラクタ扱いだ。
拾う者もいないから、遺跡の近くに打ち捨てられていたりするんだけれど、地球人的価値観だとちょっと勿体無いよね。
ガラクタをジール室長へのお土産に持って帰ってやると大抵喜ぶ。古代史の謎を解くための貴重なピースになるそうだ。
失われた歴史を、ジグソーパズルのように組み立てるつもりみたいだな。面白そうだけど、そんな気の遠くなるような作業は僕はごめんだよ。
本人は大喜びで寝食も忘れて熱中してるんだから、せいぜい支援してあげようと思う。
あと、こいつ働き過ぎだ。自己管理できないタイプだよ、セルフブラック企業だ。世の中にはこうして人知れず自滅していった栄光なき天才達が大勢いたに違いない。人それを馬鹿と呼ぶ。
「焦って成果を上げる必要はない。間違った結果を出しても構わない。後に続く研究者のために道を切り拓いてやって欲しい。学問ってそういうものだろう?」
「あ、あなたは神ですか?」
いや、神様はグラさんだよ?
まあ、グラさんも研究に熱中するあまりリッチになったんだった。
中世風異世界でも人の業というのは難儀なものですわな。




