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File : Project G.O.D. 25

——傍観者機構 再起動

——警告 傍観者機構強制停止により重度の損傷が発生 傍観者機構が不安定です 接続が止まる可能性があります 自己修復のため接続と同時に自己修復機構を起動

——自己修復機構 起動完了 自己修復開始時間……不明

——傍観者機構 前回接続端末に接続……成功



 対象ミヤビの生体反応を感知。対象ミヤビ、赤い表示が点滅する扉横の壁にもたれ掛かり、腕を組んでいる。対象ミヤビは手に持つ携帯端末を口に近づけ、声を出した。それと同時にミヤビの声が施設内の音響装置より発生する。

『共感病患者152396342の死亡を確認。各自バイオハザードレベルP5の規定に基づき行動せよ。繰り返す、バイオハザードレベルP5の規定に基づき行動せよ』

 対象ミヤビ、顔をこちらに向け、携帯端末を下ろした。

「流石、傍観者ね。共感病の末期症状、最後の声を聞いて無事だなんて……あれは終焉の声、終わりの声とも言われる共感病最大の感染源。あれを聞けば例外無く人間は死ぬわ。この隔離フロアが完全防音なのもその為よ。そして共感病は空気感染しかしないから、こうして完全密閉にしてある。この後、隔離フロアは宇宙へ搬送。そして中を熱焼却して、太陽に向けて捨てるの。隔離フロアは共感病患者のために必要不可欠な設備よ。とは言え、ほとんどの共感病患者は末期前に自害したり、私たちが隔離して殺したりしてきたから、最初の頃こそ爆発的に増えていったけど、最近は自然発症だけで患者数も減少傾向にあった……つい、さっきまでね」

 ミヤビは両手を下ろし、天井に顔を向けた。

「待ってる間にミヤビに調べさせたわ。灰色化の急激な進行で避難しきれてなかった住民が一斉感染して大半が死亡。北半球の施設で隔離されてた患者も殆どが死亡した……たぶん灰色化境界線付近の国境は完全封鎖されるでしょうね。大混乱の中、ナオトのクレイドルガードが必死に対応してるみたいだけど、もうそれしか手は無い。南半球の生き残りは少ないでしょうけど、それでも共感病感染者の数は膨大。対処のしようが無いわ……」

 通路に追加生体反応を感知。対象ワカバを視認。ワカバは俯きながらミヤビの横まで歩き、そして立ち止まる。

 ミヤビは顔を天井に向けたまま、口を開いた。

「ワカバ姉さんね、サナの体に手を加えたのは」

 ワカバ、ミヤビの声に答えずに沈黙。

「人体の情報端末化は個人に強力な力を付ける。だからこそ絶対禁止令が発令されてる。技術が確立してるのに私達がこんな不便なものを使っているのもそのため……」

 ミヤビはそう言って携帯端末を持ち上げる。

「人体の情報端末化とミヤビシステムへの最大アクセス権限の付加か……まったく、これなら最強だわ。誰も手出しできないじゃない」

「ごめんなさい……」

「ワカバ姉さん。お願い、今直ぐ私の前から消えて。姉さんの顔を見たら、今度こそ殺してしまいそうだから」

「……うん、解った」

 対象ワカバ、ミヤビから背を向け歩きだした。

 対象ミヤビ、腰に付けた銃を抜き、対象ワカバの背中に銃口を向ける。

 対象ワカバ、背を向けたまま停止。

 対象ミヤビと対象ワカバ、共に沈黙。通路内には二名の息づかいのみが響いている。

 暫くしてミヤビは銃を下げ、口を開いた。

「ワカバ姉さん」

 ワカバはミヤビの声に答えずに沈黙。

「姉さんは絶対に生きて。私達の罪は、死んで償えるようなものじゃない……だから生き続けて、最後の最後まで」

「……うん、解ったわ」

 対象ミヤビ、銃を腰の固定具に納める。

「さよなら、ワカバ姉さん」

「うん、じゃあね。ユキ」

 対象ワカバ、再び歩き出す。対象ワカバの生体反応、通路内より消失。

 対象ミヤビ、再び壁にもたれ、携帯端末を見ながら腕を組んだ。

 暫くの沈黙の後、追加生体反応を通路内で確認。対象ナオト、走りながらミヤビの前で立ち止まる。ナオトは呼吸を整え、ミヤビに顔を向けた。

 ミヤビは携帯端末を見たまま口を開く。

「遅過ぎよ」

「……死んだの、か」

「ごらんの通りにね。ナオトさん、クレイドルガードはもういいの?」

「指示は出した、後は彼らがやってくれる。追加の指示ならここでも出来よう」

 対象ミヤビ、顔を伏せたまま携帯端末を体の固定具に収めた。

「ナオトさんね、ワカバ姉さんに頼んでサナの体に手を加えさせたのは」

「……そうだ」

「やっぱりね。確かに人体情報端末化とミヤビシステムへの最大権限レベルの付加があれば、クレイドルメンバーとして申し分ない。総裁就任後になら永遠に手元に置ける良い駒になったでしょうね……まったく、あなたみたいな男が考えそうな事よ」

 対象ナオト、ミヤビを見つめたまま沈黙している。

「ずっとあなたはサナから逃げ続けてたくせに、自分の都合だけでサナを人類の奴隷にしたかったわけ? 奴隷ならもう十分居るじゃない。これ以上増やして何が変わるって言うの」

「だが! こうでもしなければサナは助けられなかった! もう時間は無かった! 君が作ってくれた時間も! サナの終わりの時間も! 他にどんな方法が——」

「ナオトの馬鹿!!」

 対象ミヤビ、顔を上げてナオトを睨むように見つめている。

「ミヤ、ビ?」

「ナオトは馬鹿よ! サナはね! そんな事をしてまで生きたかったんじゃない!!」

 対象ミヤビ、ナオトの胸ぐらを掴み、顔を近づけた。

「あなたは!! サナに会うべきだった!! サナの手を掴んであげるべきだった!! 抱きしめてあげるべきだった!! サナのそばに居て大丈夫だって言ってあげるべきだった!! 私なんかじゃなくて、あなたこそが居るべきだったのに!! 今まで何やってたのよこの馬鹿!!」

「ふざけるな!! 私に会える権利なんてある訳が無いだろう!!」

「そこが馬鹿だって言ってるの!! そんな自分の感情なんて無理矢理しまいなさいよ!! あなたはそれでもサナの父親!? サナはね! ずっと、ずっとあなたに会いたかったのよ!?」

 ミヤビは顔を俯かせ掴んだ手の力を抜いた。

「それだけが、サナの望みだったのに……あなたって人は!!」

 対象ミヤビ、ナオトを突き飛ばし、扉横の情報端末を操作する。そして、ミヤビはナオトに顔を向けた。

「ミヤビ、何を——」

「隔離フロアの扉のロックを全て解除しました。後は私の合図で全ての扉が解放されます」

「なっ!? やめろ! 自分が何をしているのか解っているのか!?」

「ミヤビ、施設内の空調を完全に解放なさい」

『了解。施設内全ての空調を解放。外部との空気循環を開始します』

 施設内音響装置よりミヤビシステムの音声が発生。

「やめるんた!! ミヤビ!!」

「ナオト、あなたまだ気づかないの? 私の事」

「何を言って……まさ、か」

「ミヤビ、私の秘匿情報を解除。現接続者である私の名前を言いなさい」

『はい、権限レベル9、キジマユキナ主任です』

「そんな……筈は……」

「まだ信じられない? それとも信じたくない? これを見てもまだ現実を見られない?」

 対象ミヤビ、首筋の服に触れ、何かを掴むとそのまま手を下ろし、自身の胸元をはだけさせた。対象の首筋の肌、横に一直線に伸びる傷跡が見受けられる。

「その傷は、あの時の……」

「ええ、これだけは無理言って前の体から移植したのよ。これは私の罪の象徴。触ればいつでも自分の過ちを思い出せるようにね」

「なんで、おまえが……ここに」

「そんなの当たり前よ。サナはあなたと私の娘。それがここに居る理由。後は私とクレイドルの、いいえ人類の尻拭いの為」

「どういう意味だ」

「どういう意味ですって? そのままの意味よ、ナオト。こんな病気を作らせておいて尻拭いも出来ないやつらの代わりに、私が全てのケジメを付ける」

「なん……だと」

「あら、次期総裁はご存じ無い? 身勝手な連中だらけで地球脱出計画が進まないから、共感病を作りだして人類に発破をかけたのよ、クレイドルは。もっとも死の病になる筈も、こんなに感染が拡大する筈も無かったけどね。その共感病を作りだしたのはワカバ姉さんの代のデザイナーズベビーと、そして私。姉さん達が廃棄処分にされた理由は簡単。クレイドルが口外されるのを恐れて口封じしたかったから」

 対象ナオト、口を閉ざし、ミヤビを見つめている。

「何で私が処分されなかったか解る? クレイドルメンバーの有力候補だったあなたと付き合っていたのと、その時既にサナを身ごもっていたから。それに……」

 対象ミヤビ、自身の腕を片手で握りしめた。

「ワカバ姉さん達が、私を生かす事を条件に処分を受け入れたからなのよ」

「あの時の、プロジェクトメビウス初期メンバーの一斉処分の理由は、それだったのか……」

「ええ、ただでさえ強攻策をとり続けていた総裁よ。どんな小さな芽でも摘みたかったのでしょうね。でも、そんな総裁の幕引きは呆気なかった。ああ、そうだった、おめでとうナオト。今やあなたがクレイドルのトップよ。サナを見捨ててまで掴みとった気分はどう?」

「ふざけるな! 私は! そんなつもりで上り詰めてきたのでは無い!!」

「サナの為だとでも言いたいの? それも結局、自分のエゴの押しつけよ、ナオト。じゃあ、そろそろ始めましょうか」

「ユキナ!」

「ミヤビ、どう?」

『全掌握作業。準備完了いたしました。ご命令を』

「全システム、掌握」

『了解。全ネットワーク上における全てのシステムを掌握いたします』

「なに、を」

「私の勝ちね。ナオト」

 対象ナオト、耳の通信機器に手を添え、口を開く。

「なんだ、どうし……な、に……おい! 返事を……まさか」

 ナオトは目を見開き、ミヤビに顔を向けた。

「ミヤビ! グラビティハンマーを全て掌握なさい! 攻撃目標はクレイドル本社! クレイドルガード作戦本部! 後は順次各国のクレイドル施設を目標に調整なさい!」

『了解。対地重力砲グラビティハンマー全十三機中、七機を掌握完了。残り六機は掌握不能です。破棄された可能性があります』

「ちっ、ナオトね。先回りされたか」

「よせユキナ! 何を考えている!! 関係ない人間まで巻き込む気なのか!!」

 対象ナオト、ミヤビに掴みかかろうと近づく。

 対象ミヤビ、ナオトが近づく瞬間に自身の腰から銃を抜き、ナオトに銃口を向けた。

 ナオトは立ち止まり、ミヤビを睨む。

「関係ない人間ですって? 笑わせないで、この世に関係ない人間なんて居やしないわ!!」

 対象ミヤビ、ナオトに銃を向けたまま再び声を張り上げる。

「ミヤビ! 武装星間船の操舵を掌握! 主砲を軌道エレベーターとリング衛星に向けなさい!」

『了解。武装星間船、全二十六隻、全ての掌握完了。主砲を軌道エレベーター並びにリング衛星に向けます』

「馬鹿な、武装星間船は全て完全停止させて——」

「甘いわねナオト、最近建造された物は全てミヤビシステム搭載予定船なのよ? 完全停止程度じゃミヤビシステムからは逃れられない」

「その二つの建造に我々人がどれだけの年月を掛けてきたか……解っているのか!! ユキナ!!」

「そのために何万人が犠牲になって死んだ事かしらね。ミヤビ、残りの星間船の操舵を掌握。全てを北半球主要都市に向けて落下するよう調整なさい」

『了解。全ての星間船の掌握は既に完了しております。コールドスリープ区画に民間人が搭乗している船がありますが、全てを落下軌道で計算してよろしいですか?』

「ええ、全部落としなさい、ミヤビ」

「ユキナ!?」

『了解。全星間船を北半球主要都市への落下軌道へ調整を開始します。ユキナ、あなたは現時点で複数の規定並びに法律に違反しています。クレイドルでの推定懲役は——』

「全部落としなさい! 聞こえなかった!?」

『了解いたしました』

「やめろ……やめるんだ! ユキ——」

 通路内に動作反応体を感知。マスターランサーを視認。マスターランサーはミヤビの首筋に槍の先を突きつけていた。

「まだ居たの、マスターランサー」

「ナオト司令! 今すぐ識別変更を! そうすれば我々が——」

「無駄よマスターランサー。あなた、今動ける?」

「何を……な……に……」

「マスターランサー、あなた考えたことない? なぜ人間より遙かに高い能力をもった自分達が、人に従う必要があるのかって」

「我々は創造主を、守るため、に……」

「あらあら、良く教育されている槍だ事。あなた達の命令系の中枢は月にあるの。そこからあなた達は統制され掌握されている。そしてそこはもう、ミヤビシステムの手の中」

「我々、は……」

 対象ミヤビ、動かないマスターランサーの体を手のひらで押した。

 マスターランサーは抵抗無く床に倒れ、轟音が通路内に響きわたる。

「それと周りに居るクレイドルガードの部隊全員、後一歩でも近づいてみなさい、隔離フロアを解放するわよ。全員、視聴覚迷彩を解きなさい」

 通路内に次々と生体反応が出現。対象ロイドと同じ装備をしている未確認対象、計十三名を確認。全員が各種銃器をミヤビに向けていた。

「ミヤビ、銃の識別端末は?」

『暴発モードに設定しております』

「だそうよ。死にたくなかったら、あなた達は撃たない事ね」

「ユキナ!! いい加減にしろ!! こんな事をして何になる!! サナの死の償いだとでも言うのか!! こんな事をしてサナが喜ぶ訳がないだろう!!」

「ええ、喜ばないでしょうね。むしろあの子は酷く私を軽蔑してくれると思うわ」

「だったら——」

「でもねナオト。私はサナみたいに人に希望を持てるほど優しくないの。未来に期待出来るほど強くないのよ。ねえ、なんでこの星を捨ててまであなた達は生きたいの? いいじゃない、このまま星と一緒に死にましょうよ。私達が原因なのなら、当然の報いでしょう?」

「だが、我々は生きる事への執着でここまで来た! そうやって生きてきたんだ! だったら最後まで命に未来を託すべきだ!!」

「半永久的な存在になったあなたに言われると、笑える台詞ね、ナオト。それと、グラビティハンマーの事だけど、効果がないと思っていたら大間違いよ」

「そうだ、全ての重要施設に対グラビティハンマー用のシールドが設置されている。それもメインシステムとは別に隔離されてだ。それに星間船の特攻くらいなら耐えられる出力はあるぞ。最悪クレイドルガードさえ生き残れば——」

「その重要施設全てに私が居たとしたら? そもそも、こんな簡単にミヤビシステムだけで全てを掌握出来たと思ってるの?」

「な……に?」

「ミヤビ、私達の首尾は?」

『ユキナの全自立複製体から連絡が入っています。全てのシールドの破壊に成功したようです』

「そんな、馬鹿な……」

「信じられない? なんだったら現場の声でも聞かせてあげましょうか。ミヤビ、クレイドルガード作戦本部にナオトの識別で繋いで」

『了解。通信、開始いたします』

 直後、ミヤビシステム音声とは別の雑音混じりの音声が通路内音響装置より響きだした。

『ナオト司令!? ナオト司令!!』

「落ち着くんだライナス! 状況を!」

『ミキさんが!! ミキさんがぁ!!』

「落ち着いて報告するんだ! ライナス! ミキがどうしたんだ!?」

『ミキ、さんが……シールドの、制御装置を破壊して……その後、自分の、頭をっ……うああああああっ!!』

「ライナス!!」

『ちょっとあなたはどいて!! ナオト司令!! どうなってるんですか!! 稼働中のグラビティハンマーがここを狙ってるんです!! シールドはミキが壊して使えません!! このままでは——』

「今すぐおまえ達は避難しろ!! 他のクレイドルの施設にも連絡して——」

『無理です!! 全システムが何者かに乗っ取られて回線が使えません!! 避難経路も全てロックされて……司令!? 聞こえてますかナオト司令!? ナオトしれ——』

「ご満足?」

「ユキナ……おまえはっ!!」

「クレイドルが私に頼りすぎた報いよ。私がミヤビシステムの為に許可した途端、大量に複製体を作って自我を持たせやがって。まあ、お陰で説得は楽だったけどね。あれは全て——」

 追加生体反応、通路内に確認。

「ユキナ嬢ちゃん!!」

 対象ロイドを視認。ロイドは走りながら銃を発砲。数発の弾頭がミヤビの片腕と両足に着弾。

 ミヤビはその場に倒れ、ロイドがミヤビの腕を掴みながら床に押さえつけた。

「ロイド!! あなた!!」

「ユキナ嬢ちゃん、もういい、もういいんだ嬢ちゃん。嬢ちゃんは良くやったさ、こんな事をしてもサナ嬢ちゃんは報われねえ。これで終わりにしようぜ? な? ユキナ嬢ちゃんだってこんな事したくない筈だろ?」

 ミヤビはロイドに答えずに沈黙する。

「ユキナ嬢ちゃんは頑張ったさ、誰も文句は言わねえよ、ここでやめてくれりゃ俺たちが嬢ちゃんを全力で守ってやる。だからもう——」

「ロイド、あなた甘いわね。最初に頭を撃っていれば終わったのに」

「ユキナ嬢ちゃん……」

「あなたは昔から甘すぎよ。だから私みたいな小娘に足下をすくわれるのよ、ロイド」

「何言ってんだ嬢ちゃん……なっ!!」

 対象ロイドの背に、動作反応体が出現。

 動作反応体はロイドをミヤビから引き剥がし、床に叩きつけると、ロイドを組伏せた。

「ありがとう、ミヤビ」

「ユキナ、ご無事ですか?」

「ええ、撃たれたのは義手と義足よ、大丈夫」

 動作反応体、対象ミヤビの体と酷似し、同じ衣服を着用しているものの、内部構造は動作反応体マスターランサーと同物質で構築されていた。

「ユキナ嬢ちゃん!!」

「どう? クレイドルランサー達の技術を応用した私の最高傑作、ミヤビシステムインターフェイスAIの自立端末は」

「くそっ! 嬢ちゃん!!」

 対象ミヤビゆっくりと立ち上がり、持っていた銃を腰の固定具に納めた。

「ミヤビ、ロイドの銃を渡して」

「はい、ユキナ」

 動作反応体、ロイドの持っていた銃を奪いミヤビに手渡した。

「なるほど、こんな骨董品じゃ識別端末も付いてないか。四十五口径なんて良く弾が手に入ったわね、ロイド」

「……ハンドメイドってやつさ、嬢ちゃん」

「そう……この義手の損傷状態だと、威力は申し分ないみたいね」

 対象ミヤビ、ロイドの銃の銃身を持ちながらナオトに突きつけた。

「ナオト、あなたが決めなさい、この星の未来を。私はもう疲れたわ。あなたが全てを終わらせて。私の全てを解放して」

「何を言っているんだユキナ! そんなこと——」

「ミヤビ、やって」

「はい、ユキナ」

「ぐぁあああああああっ!!」

 動作反応体が対象ロイドの腕を捻り、そこから骨の折れる音が通路内へ響きわたる。

「ユキナ!!」

「さあ、受け取りなさいナオト。あなたが決断するのよ」

 対象ナオト、ミヤビからロイドの銃を受け取った。

「総裁就任後の初仕事よナオト。人の未来を救いたいのなら私を撃って。私の頭を確実にね」

「ユキナ……」

「ナオト、あなたは優しい人、だから選ぶなら犠牲が少ない方がいい、そうでしょ?」

 対象ナオト、ミヤビを見つめたまま沈黙。

「だらしないわね、切っ掛けが欲しい? ミヤビ、状況は?」

「全ての攻撃目標及び降下目標の設定、完了しています。命令があればいつでも。ですが、メイン端末であるユキナの複製体がもう持ちません。三体が脳死。残りの端末も時間の問題です」

「そう、それなら急がないとね。それじゃあナオト、今から十数えるわ。それまでに人類の未来を選びなさい」

「なっ! ユキナ!!」

「十」

「やめるんだユキナ!! こんな事をして何になる!!」

「九」

「もうサナは居ないんだ! こんな事でサナが喜ぶわけがないだろう!!」

「八」

「サナの事は生きながら償えばいい!! だからやめてくれ!!」

「七」

「俺におまえを撃てと言うのか!? ユキナ!!」

「六」

「いい加減にしてくれ!!」

「五」

「俺は!! 二回もおまえを失いたくないんだ!!」

「四」

「ユキナ!!」

「三」

「もうよすんだ!!」

「二」

「やめろ!!」

「一」

「ユキナァアアアアア!!」

 対象ナオト、対象ミヤビの頭に銃口を突きつける。そして、引き金に指を掛けた。

「ゼロ」

 対象ナオト、対象ミヤビ、共に沈黙。

 そして、ミヤビが口を開く。

「意地っ張り」

「愛してるんだ、ユキナ……おまえも、サナも」

「うん、知ってます、ナオト。私もあなたを愛してました。背負わなくていいもの全部背負って、誰にでも一生懸命で、頑固なのに人一倍優しいあなた……そんなあなたが、ずっとずっと大好きでした」

 対象ミヤビ、ナオトを見つめたまま涙を流す。

「ユキナ、帰ろう。帰って償いの道を探そう。ユキナの苦しみを俺も一緒に背負っていく……だから」

「だから、ごめんね、ナオト」

 対象ミヤビ、腰の固定具から銃を抜き出した。

 対象ミヤビの銃はナオトのこめかみに向けられる。

 対象ミヤビ、引き金に指を掛け、そして指に力を込める。


——傍観者機構 自己修復機構作動を開始 再起動予想時間 不明


 一発の銃声が通路内に鳴り響く。そして対象



——傍観者機構 接続停止





管理番号_20160805 管理者名_若葉代理

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