File : Project G.O.D. 22
——傍観者機構 接続開始
——接続……成功
対象ミヤビの生体反応を確認。対象は施設内通路を走りながら音声端末を耳に添えている。移動し続ける対象に同行開始、距離を固定。
「ええそうよ! ワカバ! あなたはミヤビシステムを再起動させたら直ぐにそこから離れなさい! 途中でサナも連れて隔離フロアに避難させて! あなたは隔離フロア前で合流なさい! 解った!?」
対象ミヤビはこちらに視線を向け、すぐに前方に視線を戻す。そして対象ミヤビは急に立ち止まり、携帯端末を下ろして声を張り上げた。
「ロイド! 居るんでしょう!? 視聴覚迷彩を解いて出てきなさい!」
ミヤビの声の直後、対象ロイドの生体反応が通路に発生。ロイドはミヤビの隣に出現。
「サイトウ主任、先程の揺れは——」
「ナオトさんの直通回線を教えなさい!」
「しかしそれは——」
「いいから早く!!」
「了解しました。主任の端末に転送します」
対象ミヤビ、携帯端末を操作し、再び耳に添えた。
「ナオトさん? ミヤビです。この施設に……ええ、そうです、クレイドルランサーが介入を開始しました。何とか突入時間をずらせましたけど時間がありません。お願いです、フェダルテ大尉の部隊の指揮権を私に……ありがとうございます! ええ! では!」
対象ミヤビ、携帯端末を懐にしまい。ロイドに顔を向ける。
「ロイド、あなたの部隊の指揮権が私に移ったわ。今後は私の命令に従ってちょうだい」
「……指揮権譲渡の書類が司令より転送されました。これより我々は主任の指揮下に入ります」
「部隊構成は……あなたを合わせて二十七人か」
「主任、クレイドルランサーは機械化部隊。我々は対サイボーグ戦のエキスパートです。彼らとの交戦は——」
「絶対に避けなさい!」
「なぜです」
「いい? クレイドルランサーはね、地球外生命体との戦闘を想定して作られたクレイドルの技術の集大成。あいつらはもう人間じゃない。金属と珪素物質で人体を模して構成したユリカゴの槍、クレイドルランサー。テロ活動で武装星間船が乗っ取られた時どこの誰が沈めたと思ってるの? あいつらなのよ? 武装星間船と直でやり合い、衛星から単独で大気圏突入できる化物に、生身のあなた達が戦ってどうにかなる相手だと思う?」
「了解しました主任。全力で戦闘は回避します。我々もそんな化物との戦闘はごめんです」
「視聴覚迷彩は今後絶対使わないで、あいつらは視聴覚迷彩対象には無警告で発砲するはずよ。あなた達はここの職員を誘導して地下シェルターを経由しながら外に避難させなさい。残り十分以内によ、出来る?」
「それこそ我々の本業です。直ぐに取りかからせます」
対象ロイドは耳に手を当て音声通信で会話を始めた。
「おまえら! 全員聞いていたな! ユリウス隊は避難ルートの計算と確保だ! イイダ隊は全職員の誘導を急げ! 十分以内にだ! 解ったなおまえら!」
ロイドは音声通信をやめ、対象ミヤビに顔を向ける。
「ではサイトウ主任、自分も彼らに合流します」
「待って、あなたには別に頼みたい事がある。あなたにはワカバの事を任せたいのよ。この先で合流するからロイドも付いてきなさい」
「了解しました、サイトウ主任」
対象二名、再び通路を走りだした。移動先、隔離フロア出入り口前。
対象ワカバの生体反応を確認。ワカバ、携帯端末を片手に立ち尽くしている。
「ワカバ嬢ちゃん!」
対象二名は対象ワカバの前で停止。
「直に会うのは久しぶりねロイド。あら、バイスタンダーも一緒なんだ」
「悪いけど再会の挨拶は後にしてくれる? 時間が無いのよワカバ。あなたの身柄確保を理由にクレイドルランサーがこの施設の襲撃を開始するわ」
「罪人はどこまで行っても罪人なのね。ごめんなさい私のせいで……っ!」
対象ミヤビ、対象ワカバの頬を手のひらで叩く。
ワカバは叩かれた頬を手で押さえた。
「ええあなたのせいでね。外部との連絡は避けろとあれだけ言ったのにあなたは……ワカバ、あなたはロイドと一緒にこの施設から脱出して。クレイドルランサーの目的はあなたとサナの確保よ。あなた達が逃げればあいつらの戦力を分断できる」
「……あんたはどうするの?」
「私は隔離フロア前でサナを守りながら応戦するわ」
「そんな無茶よ!」
「そうですサイトウ主任! あなたは先程自分に——」
「安心して、ここの警備システムとミヤビシステムがあれば何とか乗り切れるかもしれない。彼らの装備は見たところ対人兵器がほとんどだった。この施設にはミヤビシステムと隔離フロアがあるから、彼らも無闇に暴れ回る事は出来ない。時間稼ぎはいくらでも出来る筈よ」
「それだったら私も残る! 私がまいた種よ。私は死んだって構わないから一緒に戦わせて!」
「駄目よ、ワカバは逃げて」
「嫌よ! あんたを置いてなんて……え?」
対象ミヤビは対象ワカバに両腕を回し、抱きしめていた。
「ワカバ姉さん、姉さんは生きて。私の為なんかじゃなくて、今度は自分の為に」
「えっ? ユキ!」
「今までありがとう、ワカバ姉さん。それと、ごめんなさい」
対象ミヤビ、ワカバの首筋に金属性の針を突き刺した。
「あっ……ゆ……き……」
対象ワカバの意識が無くなり、対象ミヤビはワカバの体を支えながら対象ロイドにワカバを預ける。
「サイトウ主任、あなたはまさか……」
「ロイド、この事は絶対に黙ってて、お願い」
「……嬢ちゃん」
「今は私の指揮下の筈よね? この件は秘匿よ、いいわね?」
「……了解しました、サイトウ主任」
「ワカバの事、頼んだわよ」
「ああ、俺の命に代えてもな……絶対に死ぬんじゃねえぞ、嬢ちゃん」
「あなたもね、ロイド」
対象ロイド、ワカバの体を軽々と担ぐと、早々にその場を後にした。
対象ロイドと対象ワカバの生体反応、通路内より消失。
ミヤビはそれを見届けると、携帯端末に視線を落とした。
「よし、ミヤビシステムが起動した。システム! アクセス! 権限名サイトウミヤビ!」
対象の声の後、通路の音響装置よりミヤビシステムの音声が発生。
『権限レベル9のアクセスを確認。識別完了。サイトウ主任の接続を確認いたしました』
「警備システムを掌握して全警備ユニットを通路に配置。攻撃目標はクレイドルランサーよ。識別は可能ね?」
『了解。警備システムを掌握。全警備ユニットを配置いたします。施設周辺に視聴覚迷彩の反応が十三あります。その全てを攻撃対象でよろしいですか?』
「ええ、それでお願い。彼らの進入を出来る限り阻止してちょうだい。それと、今から外部ネットワークへの接続を開始して」
『了解……全ユニット、配置完了いたしました。外部ネットワークへの接続……完了いたしました』
対象ミヤビ、こちらに一瞬視線を向け、携帯端末をしまう。そして対象は一呼吸置き、口を開いた。
「ミヤビシステム、完全始動」
『了解。ミヤビシステム、完全始動いたします』
「後はよろしくね。あなたの単独行動を許可するわ。気を付けてね、任せたわよ」
『はい、サイトウ主任も気を付けてください』
「ええ、ありがと」
対象ミヤビ、通路の壁にもたれかかり、息を大きく吐き出した。
「手は打てるだけ打てた。後はどれだけ時間稼ぎが出来るか、ね」
対象の視線を感知。ミヤビはこちらに顔を向けたまま微笑んでいる。
「ねえ、あなたはサナの所に行ってあげて。私はこれから最後の悪足掻きの品を持ってくるから。それまでサナの事、見ててくれない?」
対象ミヤビより別対象への同行要請、拒否要素無し。対象サナの生体反応を検索……完了。
——傍観者機構 接続停止
管理番号_20160805 管理者名_若葉代理




