【20】 純粋の力の覚醒
「ウンディーネ、できるだけ大量の水をだしてくれ!」
まず最初は、ウンディーネが水を大量に発生させる
「ハアアアアアッ!!」
ウンディーネは本当に湖のようなサイズの水を、上空に作り出した
『ウンディーネ。見つけましたよ』
どこからともなく声が聞こえ、ジャンヌの炎が飛んでくる――
ビュン
「最低限のテレポート分の魔力は保存してあります」
ウンディーネは、純の作戦の真髄がわからなかったが、任せることにした
「流魅!俺たちを囲んでくれ!」
「わかったわ!」
流魅が、上空に出現した水を操作し、巨大な箱を作り出す
厚さ4m~5m、高さ100mはあろうかと言う巨大な箱だ
一辺が100m程で、立方体のようになっているが、底はなく、ジャンヌと透明化した純たちがいるところを覆い被せる形だ
「レイン。行くぞ!」
「ええ!」
透明化を解除した純とレインがジャンヌに向かって走り出す
『飛んで火に入る夏の虫、という言葉がこの国にはあるそうですね』
ジャンヌは火の体から火炎放射を純たちに向かって放つ……が
「岩楯!」
レインたちの目の前で火炎放射は壁にぶつかるようにして沿って逃げていく
「透明化させた岩を盾にしているんですか。そちらの女性は、ダークエルフですね。固有魔力が凄まじい」
レインは巨大な岩を魔力で持ち上げて、戦闘しているのだ
「火兵!いけ!」
火の分身たちが盾の横を通り、レインたちに攻撃を仕掛ける――
ジュウウウウウウウ!
「悪いけど、こっちには竜がいるんだよな!」
水竜が吐いた水流で、火兵たちは消されていく
『わたしは無限に分身を作れる。あなたたちに余裕はない』
ジャンヌはさらに火力を上げて岩を溶かしにかかり、火兵を大量に作り出す
「……透明化!」
純はここで今一度自分達の体を透明化する
レインは、水の箱を操作する流魅に合図を送り、素早く抜け出した
「さ、わたしの分身を入れてちょうだい」
「わかってます」
レインが外に出て、流魅に言い、箱のなかにレインを模して作られた水の人形が入れられる
『体力が減っているようですよ、半透明です!』
ジャンヌは半透明になってきてしまっている純に向かって、炎を放つ
「うおっと……!」
間一髪で避けた純は自らの体を見て悔しそうに唇を噛む
「そちらのかたも見えているんですよ!」
ジャンヌはさらに炎で、半透明のレインに攻撃する
だが、その炎はレインに届くことなく、消える
『ん……?なんだこれは?』
「水流!」
半透明のレインが水流をジャンヌに向かってうつ
『この程度――』
バシャッ
『何――?』
ジャンヌの炎の拳が消えた
さらに、周辺に存在する火兵も消える
「ジャンヌ・ダルクは水と人の違いも見分けられないのか?」
半透明の『水でできたレインの人形』を元の色合いに戻しながら純がジャンヌに聞く
一方ジャンヌは炎が収まり、現れたときのような赤の装束をまとって佇んでいる
「炎が使えない……?」
自らの掌を見ながら困惑するジャンヌに、純は語る
「異能であっても、科学には勝てないってことだ」
純はジャンヌに歩み寄りながら続ける
「炎は、大気中の酸素を使って起こす化学反応だ。何に着火させてお前の体が炎に変わっていたのかはわからないが、酸素がなければ火は着かないんだ」
ジャンヌは普通の環境では半永久的に炎を出せて、炎から分身まで作れる
つまり、限りなく最強
というか、不死身で有る限り最強だろう
だから、まず最初に炎を使えなくさせるべく、酸素をなくした
「水で箱を作り、内側の酸素を無くした」
いや、純たちがやったのは大気の出入りを防いだことだけだ
酸素を無くしたのは炎をつかいつづけたジャンヌに他ならない
「なんですって……!?……だが、私にはまだ魔法がある」
ジャンヌは手を純に向けて、余裕を見せる
「あなたから殺しましょう。他の人たちも、魔法で後で殺します」
ジャンヌの掌に光が集まり、球体になった光が撃ち出される
「……」
純は静かにその軌道を見届ける
一閃が、真っ直ぐに純の胸を貫き――
パンッ
――純の背後の水の壁に衝突して弾けた
「爆裂球が当たらなかった……!?」
ジャンヌは見間違いかと思い、周辺に同じものを複製し、連写した
パパパパパパパパパパンッ
全ての攻撃は純を〝通り抜けて〟背後の壁に衝突した
「なんですか……!?あなた、一体なんなんですか!?」
ジャンヌは怯えつつ交代する
本来、今の攻撃は幻想生物すらも一撃で気絶させるような攻撃だったのだが、純には全く効かなかった
純は、自らの秘密を語る
「俺の異能は、最初は触れたものと、自分自身を透明化させる力だった」
ウンディーネと契約直後の純の力は、触れていないと透明化出来なかった
「レインとの戦闘の前に、俺の能力は遠距離でも使えることがわかった」
レンガを投げて、透明化が続いていたことに気づいた
「能力に引き付けられて、俺の気配が薄れた」
気配がウンディーネにも悟られないようなレベルまでなくなった
そして、今は
「俺の体は、実体がない」
炎すらつかない低酸素空間でありながら平気で喋るのは、それこそジャンヌのように不死身でなければできない
「低酸素になってからレインは人形にすり替えた。お前は低酸素でもその空間に気づけず、炎が消えて、体が戻った」
今の純は酸素を必要としていない
攻撃がすり抜けるように、今の純は実体がない
「俺は『心情によって能力が変化する』ことに注目した」
契約直後、水を浴びたときは驚きの感情。あれはトリガー
それまでの厨二病な異能判断でたまった邪気と、バランスをとるべく透明化の異能を手に入れた
レインの表れる直前、自分がヒーローになってやろうと考え、教室内のクラスメイトを逃がすのに厨二病な台詞を叫んだ
その結果、さらに邪気がたまり、遠距離でも透明化が可能になった
気配は、異能の強化により、体が変化したもの
そして、実体がないのも、邪気とのバランスを合わせようと強くなった異能に体が変化したもの
「お前が最強なら、俺は無敵だ」
今の純に、攻撃は通じない
最強なれど、無敵
「そんな……バカな……!」
ジャンヌが顔をこわばらせ、逃げようとする
だが、すぐに水の壁に阻まれて、行き詰まる
「お前、墓を掘り起こしたんだろ?それ、許されないことだよな?」
純は近づき、右手をひく
「今の俺の能力は透明化だけじゃないんだよ。触れたものを、浄化させる能力にもなっている」
カッコつけてジャンヌを倒したいと思う気持ちが異能を変化させ、今の純は触れたものを浄化させることまでできるようになっていた
「お、お前は私に触れられない!」
「物理的にはな。俺が触れるのは、お前の魂だ」
魂を浄化する
純は右拳を握りしめ、肩の上まで持ち上げて――
「純情への愛の拳おおおおおおおおおおおおおお!!」
「……!」
本気で、頬を殴り、魂を殴り飛ばす
劣化した魂に張り付いた悪の心が純を浄化させる
最強、伝説の戦乙女、ジャンヌ・ダルクと
無敵、水の精霊の申し子、透水純の戦いは
後者の勝利で幕を閉じた
ラスボス戦 終了です
世界観中では僅かな日にちしかたっていませんが、これで戦いは終わりです
平和になった世界で、彼らは何を考えるのか




