水属性のエピローグ
この世界には異能力者がいる
それは、一般常識では「いない」とされているが、
極稀に、存在する
「純ー?置いてくよー?」
日本の一般的な住宅の玄関に気の強そうな美少女が立ち、二階にいる同級生の少年に声をかける
静寂
リビングからは「まだ寝てると思うよー」と、少年の母の声が聞こえる
そして、数秒後
「やべ!寝坊した!」
弾けるような勢いの少年の声が響き、ドタバタと音が聞こえる
……バタンッ!!
「行ってくるー!!」
部屋から飛び出した少年がよれよれの制服をはためかせて、玄関の美少女を抜きながら駆ける
「こら!純!朝ごはん食べなきゃ駄目だよ!」
「日本史のレポート提出で教師が来るまでに机のなかに入れとかなきゃいけねぇんだよおおおおおお!」
「単純にレポート提出忘れじゃん!」
賑やかな朝、陽の光は少年少女に降り注ぐ
「ふぅ……なんとかなったな」
少年は息をつきつつ学校内を歩く
すると、人影が正面から歩いてくる
「あれ、レイン先生。おはようございます」
冷気のような白い髪、艶のある褐色の肌、人間離れした膨らみの胸元、赤フレームの眼鏡、タイトスカート、白衣……
男子高校生には眩しすぎる極上のエロスを感じさせる美女だ
「……あんただけは敬語も敬称も要らないわ。気持ち悪い」
美女は苦虫を噛んだような表情で答える
「あれから……一ヶ月か」
「早いわね……」
一ヶ月前、彼らはとある戦いをした
結果的には少年の覚醒により、敵を倒すに至った
その戦いは一般人には誰にも知られることなく、知らない人たち全ての人を救った
「結局、ファムとかいう竜使いはジャンヌとは利害の一致程度で組んだ仲で、どうせ最終的には分裂していたでしょうね」
世界の滅亡を願う少女は、ジャンヌに騙されていた
つまり、最終的には相容れなかったはずだ
「そうそう、この校舎、壊れてたのを直したのもジャンヌ・ダルクだったらしいわよ」
炎の魔女、ジャンヌ・ダルクは事件後にウンディーネに精霊界に連れて行かれ、魔法が封じられている空間にて拘束されている
そこで行なわれている尋問にて、事件は全て解決へと向かっている
「平和……なんだよな」
純は呟き、窓の外の世界を見やる
かつて、レインに壊された校舎も今では戻っているし、平和だ
「もしもあの時、俺がウンディーネの外出に気付かなかったら……」
偶然気付き、その後をついていったのが良かった
気付けなかった場合、ウンディーネはファムに殺され、戦力を大幅に失った純たちにファムを止める事は難しかった
今の平和は、過去の純たちが行なったあらゆる言動の集合体
「あなたの力の覚醒のおかげで、世界は救われたのよ」
レインはそう言うと、再び白衣を翻して廊下を歩いていく
「……そうだな」
純は廊下をあるき、自分の教室へ行く
「純、遅かったわね」
純が自分の席に着くと、隣の席から流魅が声をかけてきた
「廊下でレイン先生とすれ違ってな」
クラスメイトはかたまって会話を楽しんだり、カードゲームをしたり、一人で読書をしていたり
ほのぼのしている
この『今』を守る為に、戦った一ヶ月前
「ホント、異能手に入れて数日で世界が救えちまったな……」
「厨二病、乙」
流魅も知っている事実だが、一応クラスメイトの前と言う事で、茶化して会話は終わった
だが、純が今日も日課で魔方陣を書こうと開いたノートには『あんたが世界を救えるなんて考えもしなかったわ』と、水のしみができていた
そのノートに今日もまた円と、五芳星、ルーン文字に見えなくもない線を引き、純は一息つく
「おはようございまーす。出欠確認するので座ってくださいー」
教室に青いジーパン、水色の半袖のワイシャツを纏い、群青色の長髪を後ろで束ねている美女が登場して、クラスメイトたちが座っていく
美女、というか、ウンディーネなのだが
何故だか知らないがレインしかり、ウンディーネしかり、この学校の校長と交渉して、教員として働いている
「さて……皆さんいるみたいですね。それでは、今日の連絡をします——」
特に、このウンディーネは純たちが所属するクラスの担任にまでなっている
前の担任の行方は不明である
精霊も、ダークエルフも、異能力者の少年少女も
みな、生活を楽しみ、謳歌している
謳歌するだけの権利はあるだろう
世界を救ったのは彼らなのだから
水を司る精霊、ウンディーネ
ダークエルフ、レイン
液体操作、蒼波流魅
透明化、透水純
彼らの生活は、これからも続く
こんにちは、永久院です
水属性最終話でございます
エピローグですが
僕が描く彼らの物語はここまでです
ここから先は、読者の皆様の脳内、もとい純やウンディーネなどの彼ら自身が描いていきます
今までご愛読頂きまして、ありがとうございました
またどこかでお会いしましょう!




