【17】 俺は、気付ける
「ウンディーネ。なんで隠していた……?」
透水純はファムのダガーナイフを掴みながら後ろのウンディーネに聞く
その手には血が滴り、こぼれ落ちる
「お前、俺たちに隠し事をしていたのか……?これは、何なんだ?」
絶え間ない疑問をぶつける
「透水……純……」
ウンディーネはその姿に驚愕し、名前を呼ぶ事しかできない
今の純は、圧倒的なまでの存在感がにじみ出ていた
どこからとも無く現れて、ウンディーネへ迫る凶刃を受け止めた
その勇気かなにかが、強く、目視できそうな程にある
「せっかくの戦闘を邪魔しやがりましたね……」
ファムは俯き、呟く
「ブランクたん!やるでしゅ!」
ファムは白竜に命令しながらダガーナイフを純の手から抜き、後退した
直後
ボウウウウウウウウウ!
白竜の火炎で純とウンディーネを包み込む
周辺に、煙が巻き起こる
ポツ……ポツ……
「んゆ?雨でしゅ?」
唐突に雨が降り始めた
「強い……雨でしゅね。突然」
あっという間に雨は土砂降りになり、雷鳴も轟き始める
雨が煙を払い、景色が拓ける
「なるほどな。ファムって言うのか」
「……!?」
純とウンディーネは全く動じないように煙から姿を現した
さらに、それだけではない
「ウンディーネ様に攻撃しようとは、全くバカな竜使いだ」
「純!大丈夫!?」
「あぁ……この程度なら平気だ」
煙の中には、ダークエルフのレインと水流操作の異能を持つ蒼波流魅が居た
二人はそれぞれファムに敵意を向けている
「一体どこから現れたんでしゅ……!?」
ファムは警戒しながら後退する
「レイン。俺の傷を癒してくれ。ウンディーネはファムと、流魅は後ろの白竜を抑えてくれ」
純は、戦術を指示する
火炎を浴びる時にウンディーネに時間を止めて今の状況を話してもらった純には、作戦がある
炎を浴びるその刹那ウンディーネは時間を止めて純と仮想空間に跳んだ
「おい!ウンディーネ。これはどう言う事なんだよ!」
「彼女はファム。フランスの竜使いです。彼女の目的はわたしとの戦闘。あなたたちを巻き込みたくなかった」
ウンディーネは、このファムとの戦闘で、多くの事を心配した
仲間である純や流魅を連れて行けば、有利にはなるけど、せっかくの仲間を失う可能性が有る
「それよりも、透水純。あなたはいつから居たのですか?」
「俺だけじゃないぞ?レインや流魅もいる」
「二人には気付いていました。気になっていましたが、あなたがいないと思っていたので無鉄砲に飛び込んで来ないか心配だったのです」
ウンディーネは、気配でレインと流魅の接近は予測していた
だから、魔法での遠距離攻撃でレインたちが誤爆されないように、分身を発生させて近距離戦闘に持ち込んだのだ
「あなただけは気配に気付かなかった」
「あー……」
純は頬を書きつつ目を逸らす
「なんか……透明化の能力の影響で気配が薄まったんじゃないかって考えてるんだ……」
異能は、自分の感情や身体状況によって力が変化する
さらに、異能によって自分自身に影響が出る場合もある
純は何らかの影響で異能が『自分の体と触れたものを透明にする異能』から『自分の体と周辺の物質を透明にする異能』へと強化された
そして、今回はその逆
能力に影響された純自身が、変化した
「なるほど……その可能性はありますね。何故能力が変化したのかを突き止めれば……」
「強くなれるな……でも、周辺の物質まで透明にできるようになった今、これ以上強くなる事なんかできるのか?」
「わかりません。でも、可能性は大いにあります」
「どうなるかはわからないけど……調べる価値はあるのか」
勘の鋭い純であっても自信の能力の強化要因はわからない
今、最優先するべきことは別にある
「ウンディーネ。あいつは俺たちの敵で間違い無いんだな?」
「はい」
だとすれば、優先事項は決まってる
「お前、あとどれくらい時間止めていられる?」
「既に戦闘開始から時間がたっていて魔力を消耗しています。時間停止は特に、多くの魔力を必要とするので、まもなく止めなくてはわたしからのサポートもできなくなるでしょう」
思考を巡らせ、考える
記憶のなかのファムの動きを分析し、死角を探す
勝算を、探る
脳内の各カードの確認
ファムは強力な魔法を使えるらしい。その上、魔法だけでなくナイフを使った白兵戦も手慣れていて相当な強さを誇っている
ファムが連れている白竜はまさに幻想生物といった攻撃力で、爆発のような火炎放射とトラックの衝突のようなクローを使える
また、ウンディーネの放水と火炎がぶつかったときに生じる水蒸気は周辺の視界を奪う
こちら側の最強のカードはウンディーネ
ウンディーネは水を司る精霊であるため水を使った強力な攻撃が可能
精霊の力としてテレポートも可能だが、他の魔法は使えるかどうかわからない。恐らく管轄外
次に強いのがダークエルフのレイン
魔法使いを遥かに凌駕する魔法を操ることができる
レインは回復魔法も使うことができたはず……
流魅は液体を操作することができる
ウンディーネも同じことができるが、流魅はオリジナリティを加えた応用技ができるようになっている
流魅は異能に変化は無さそうだ。本体への変化も無いようにみえる
そして、俺
付近のものは透明にできる
付近と言うのは具体的には『認識できるもの』だ
見れるものとかは透明にできる
それから、俺の気配は何故か知らないが極めて薄くなっているらしい
さて……これらのカードの組み合わせで勝負をする必要がある
取り敢えず、俺は一回手の傷を回復させなければならないからレインに回復魔法を頼む
その間、雨水を使って流魅が白竜を抑えて、ウンディーネがファムを抑える
ウンディーネは本気を出せばファムに勝てるはずだったが、危険だったので、時間稼ぎしかさせない
俺の回復が終わったらウンディーネは流魅に加勢
レインが、ファムと一騎討ちをする
ダークエルフと魔法使いではダークエルフが負けるはず無いのだが、一応俺もサポートで攻撃する
「ウンディーネ。もう時間は戻しても平気だ。今は取り敢えず目の前の敵を撃退しよう」
「はい」
「始めてやるけど……水獣!!」
流魅は目を閉じ、集中する
周辺に降る豪雨が集まり、巨大な体躯を作る
全高5~6mはあろうかと言う巨大な体躯のそいつは、例えるのであれば熊だ
「わたしの異能はただ単に水を操作する事だけじゃない!より強固なイメージを持つ事でイメージに基づいた行動範囲なら命令ができる!」
流魅の能力は、本来は液体操作そのものだけだった
だが、流魅と異能の適合が早かった
そして、流魅は満足しなかった
液体の操作を飲み込んだだけでは満足せず、向上心があった
その結果能力が強化されて、『イメージ通りに液体を形成し、命令する能力』へと可能性が広がったのだ
「水人とかと一緒で、この水獣は目的だけを言えばその目的を果たす為の行動に出る!」
イメージの範囲内でその物体は命令に従う
例えば、水人の場合、『攻撃』と命令されたら、『流魅の抱く人間へのイメージ』の範囲で攻撃をする
分裂して飛んでいく事はできないが、強いものをイメージすればとても強い攻撃ができるようになる
今回は、熊
「行きなさい!あの白竜を倒すのよ!」
巨大な透明の熊は白竜へ突撃する
「純。動かないで」
レインが純の手を取り、見つめながら言う
「早く治してくれ。俺が直ったらあのファムへ攻撃をする」
「無茶してると死ぬわよ……?」
「世界を救うんだ。最初から、死ぬ覚悟だ」
こんにちは、永久院です
ファムとの戦いにメンバーフル参戦
流魅の力の真髄、純へ訪れる変化、ダークエルフとダークエルフの血を引く竜使いの戦い、ウンディーネの心裏
あと数話で一気に盛り込んでいきます




