【15】 再戦
月が光る夜
山の丘に二名の破壊力が向かい合う
「久しぶりにウンディーネしゃんと戦うから、手加減間違えないようにしなきゃ」
黒いローブを身に纏いツーサイドアップの髪をなびかせている無邪気な笑顔の美少女
名はファム
フランスから来た、竜使いだ
彼女にとって科学は敵であり、その破壊の為に先端科学の集う日本へとやって来た
「こんな事やっても無意味です。あなたの竜を傷つけて、この周辺が吹き飛んだとしても、何も生みません」
ファムを止めるのは神話に出て来る四精霊の一体、水を司る精霊、ウンディーネ
青く蒼い出で立ちの彼女の瞳には、ラピスラズリのような輝きがともり、圧倒的な美しさを振りまいている
二人は対峙し、互いに緊張を高めている
ウンディーネも、ここに来たからには戦う覚悟がある
だが、ファムを殺そうとは思っていない
四精霊として、殺生は避けるべきだと考えているからだ
どんな事があっても、極力は殺生は避けたい
「それじゃ、はじめよっか」
ファムが笑い、戦いは幕を開けた
ボウゥゥッ
「ウンディーネしゃんは水属性だから火は利かないよね!」
ファムは笑いながら掌に起こした火の玉をウンディーネに向かって飛ばした
勢い良く飛んだ火の玉はウンディーネに——
ジュッ
「利きませんよ」
ウンディーネもまた、自分の周りに水を作り出して撃ち込んで応戦する
ボウッ
ジュッ
ボウッ
数多の水の球と火の玉が飛び交いうが、互いに直撃するものは一つもない
飛んで来た火を水で消し、水は火で蒸発するからだ
次第に周辺が水蒸気の霧で覆われ始める
「キャハハ!ウンディーネしゃんすごーい!さすが精霊!」
「あなたの本気はこの程度では無いでしょう。わたしも本気は出していません」
「そうだね。じゃあ、ブランクたんにも働いてもらおうか……おいで、ブランク!ドラゴンブレスだよ!」
「……!」
ウンディーネが身構えた直後、月夜の空から一匹の白竜が現れた
空中でホバリングをしながら、白竜は火炎放射を放つ
「まだまだです」
ウンディーネは炎に対して、こちらも放射の水流を撃ち込む
白竜とウンディーネの間でぶつかり合った二つの激流は互いの力を相殺するように水蒸気を舞い上げる
霧が周辺を包み込み、視界はほぼゼロになる
白の空間で、ファムは嗤う
「ウンディーネしゃん、やっちったね!」
「一体何を——」
ガンッッ
ウンディーネが霧の中でファムに問おうとしたその瞬間、ウンディーネの体が吹き飛んだ
「かっ……!」
それもただの吹き飛び方では無かった
トラックかなにかにでも轢かれたような勢いで吹っ飛ばされたウンディーネは近くの木の幹に激突して止まるが、口から血を吐き出している
だが、さすがは精霊、死にはしない
「ウンディーネしゃん。ブランクたんは白竜でしゅ。こんな霧をまいちゃったらブランクたんが見えなくなっちゃいましゅ」
そう、先ほどウンディーネは霧に隠れた白竜に攻撃されたのだ
幻想とされる生物、竜の攻撃力は並ではない
それこそ、山に生えている木を薙ぎ払い、吹き飛ばすような勢いだ
「この程度……問題ないですよ」
ウンディーネは血を吐きながらも、立ち上がる
他者からしてみれば凄まじい勢いの攻撃で到底『問題ない』ように見えるのだが
事実として、ウンディーネにとっては何の問題も無い
精霊とは、あらゆる幻想生物の頂点に立つ竜と対を成す存在と言えるからだ
竜を破壊力の塊と言うのなら、精霊は魔力の塊
それぞれ幻想性物の中でも別々のベクトルで頂点に君臨する竜と精霊が互いの攻撃で互いにとどめをさすのは容易ではない
ましてや、竜とは言っても四神の青竜などの有名どころではない、一介の白い竜に過ぎないものの攻撃で、伝説の四精霊に致命傷を与えるのは難しい
「この程度じゃ……終わらせないでしゅ」
白竜はさらに霧の中で動き、ウンディーネの方向へと突進する
「はっ!」
ガンッッッ!!
ウンディーネは跳躍し、白竜のインパクトを受ける前に空中に出る事で避けた
木が吹き飛び、白竜はウンディーネが逃げた空中に頭を向け口を開く
再び火炎放射が来る事を見切ったウンディーネは先に水の球を作り、白竜の頭に撃ち込む
ギシャアアアア!
咆哮をあげて、白竜は呻く
「ええい!」
白竜の支援のように霧の中のファムが連続して火の玉をウンディーネに撃つ
「見切れてます!」
ウンディーネは空中で舞いつつ、水の剣を作り出して火の玉を切り捨てる
目にも止まらぬ早さで火の玉が撃ち出され、信じられないような俊敏な動きで切られる
「わたしが使えるのは火だけじゃ無いんだよ!」
ファムは火の玉を止めて次の攻撃を構える
「雷撃!」
ファムは霧のなかで叫び、その魔法の力が現れる
パパパパパパパンッッ
幾重にも重なる爆竹のような破裂音は、ファムが出した雷撃のもの
霧のなかで放電したことで、周辺一体への低電圧の電流が流れた
さらにファムは叫び、魔法を強める
「雷撃は、水を司るウンディーネしゃんには効果抜群のはずでしゅ!」
ババババババババババン
辺りを閃光が包み込み、爆音が轟く
今、霧のなかに向けて雷が落ちた
ウンディーネは霧の上に居て、雷はウンディーネを通過するように落ちた
「きゃはは!ちょぉーっと力加減間違えちったかな!」
ファムは霧の中で高笑いする
やがて白竜が翼を広げて霧を吹き飛ばす……
「あり?」
そこに、ウンディーネの姿は無い
「わたしは、精霊です。テレポートも出来ますよ」
「なっ!?」
ファムは驚愕し、振り返る
「あなたは、わたしには勝てないのです」
こんにちは 永久院悠軌です
ファムVSウンディーネです




