8話 修行しようよ!
早朝。大きめの施設で豪華なバイキングを食べ終えた後。
「シロボシ、おいしかったね〜!」
「うん!」
途中で魔法の大精霊が乱入して来た時はすごくびっくりしたけど、何事もなく終わって本当に良かった。
「さてと……ねえシロボシ、今日は何しよっか」
「まあ、色々やりたいことはあるけども……」
外に出て人の街を見たり、色んな土地を訪ねて回ってもいいけど……まず先に、絶対にやらなければならないことがある。
「今日は力の使い方を学んでみるよ。修行するの」
「修行?」
「うん。私さ、生まれてすぐに意図しないところで大爆発しちゃってさ」
「そうだったね」
キラナが生まれる前の出来事だけど知ってるんだ。生まれる時に私の記憶も吸収したからかな。
「本当は外に出て街とかに遊びに行きたかったけど……自分の力が制御できるようになるまでは、お外に出ない方がいいかなって」
「うん、私もそう思う!」
「でしょ?」
キラナにもはっきり言われたから、修行は絶対にしておこう。でも、どこで修行しようかな?
今現在、クレーター跡地には精霊達の手によってちょっとした集落が生まれている。
大きな施設に私達のお家と、精霊達のお家。道は綺麗に舗装されて、道中にはお店らしき建物の建設が確認できる。
「ここで修行は無理そうかな……」
広い土地はあるけど、もし力加減を間違えたらこのクレーター跡地自体が消滅しかねない。
仕方ない、ここは私の持つ異次元に閉じこもって……
「あっそうだ!」
ここでキラナは何か閃く。
「シロボシ、修行場所としてダンジョン作るのはどう?」
「修行場所にダンジョン?」
あ、そういえば私はダンジョン作れるんだったね。
「ダンジョンは魔力を吸収して大きくなるんだって。だから、ダンジョンの中でトレーニングした方が色々とお得だよ!」
「へぇ〜」
それなら、是非ともダンジョン作るべきだろうね。
それにダンジョン内なら、この場にある施設とか破壊せず済みそうだし。
「そうと決まれば、どこにダンジョン作ろうか考えないとね」
まずはダンジョンを作る土地を探そう。
「……そもそも、どんなところにダンジョンを作るのがいいのかな? キラナ、分かる?」
「うん!」
キラナは力強く頷いた。
「大精霊なら雑に作っても大丈夫! 好きな所にダンジョン作っちゃえばいいと思うよ!」
雑な結論が出た。
「そっか。なら、どっか隅っこの地下に作っちゃおうかな」
「それがいいと思うよ!」
それじゃあ、ダンジョンがありそうないい感じの地面でも探すとしますか。
「……あっ、ギルさんだ」
「ホントだ!」
私達が道を歩いていると、遠くに見えるちょっとした休憩スペースにギルさんの姿を発見した。
「…………」
ギルさんは休憩スペースのベンチに腰を下ろして、1人で本を黙読している。そこそこ難しそうな本だ。
「……あっ、そうだ」
とあることを思いついた私は、ワープでギルさんのそばに移動した。
「ギルさーん」
「うわーっ!?」
突然現れた私にギルさんはびっくり。口から青白い光を漏らしながら大きな悲鳴を上げた。
「ごめんごめん、そんなに驚くとは思わなくて」
「あ、シロボシさん……」
「あのね、ギルさん」
私はギルさんを見上げながら話を切り出した。
「私、力の使い方を理解するために修行しようと思ってさ」
「えっ?」
私の言葉にギルさんは以外そうな声を上げる。
「トレーニングするの。私は星の大精霊で不死身だけど、いつ何が起こって窮地に追い込まれるか分からないからね」
「……あの」
ギルさんはおずおずと手を上げる。
「大精霊なら鍛える意味はないのでは……?」
「鍛えるに越したことないでしょ。それに、頭の中の知識とか整理整頓して、実際に使えるようにもしたいからね。だからさ」
私はここで本題を切り出す。
「ギルさんも一緒に修行しない?」
「しません」
はっきり断られた。
「しません、修行なんか」
しかも念押しされた。
「ギルさんはトレーニング嫌なの?」
「龍族はトレーニングとかいう、軟弱者のする愚かな行為はしません」
キラナの疑問に、ギルさんは淡々と答える。
「我々、龍族は実践で鍛えることこそが全てです」
「まさかいきなり実践するの? 実践で大怪我したらどうするの?」
「大怪我する軟弱者が悪いんです」
どうやら龍族ならではの常識があるらしい。
「そっか……ドラゴンの常識だとトレーニングは邪道なんだね。つまりギルさんも、生まれてから一度もトレーニングはしたことないの?」
「……当然です」
あ、言い淀んだ。トレーニングしたことあるんだ。
「へぇ、トレーニングしたことないんだ! だからギルさんは生まれて間もない私に呆気なく負けたんだね」
「ぐっ……」
キラナの悪意のない発言にギルさんが言い負かされてる。
「あっ、あれは実践が足らなかっただけで……!」
「トレーニング不足な上に実践不足ってことじゃん」
「…………」
私の言葉にギルさんは完全に沈黙してしまった。
さて、どうしようかな。トレーニングしないは人の勝手だけど……そうだ!
「ねえギルさん」
とあることを思いついた私は、すぐにその提案をギルさんに投げかけた。
「ギルさん、星の力に興味ある?」
「!」
ギルさんは私の言葉に強く反応した。
大精霊は生き物に力を与えることができる。
星の大精霊である私が誰かに力を与えれば、その人は悍ましい量のエネルギーを味方につけ、重力を自由自在に操れるようになる。
「私は星の大精霊。もしギルさんが本気で修行をするって言うのなら、星の力をあげるよ。最初はほんの僅かにね」
私のお話に、ギルさんは真剣に耳を傾けている。
「ギルさんが頑張ってトレーニングして、星の力を扱うに相応しいドラゴンだって証明できたら、それに応じて与える力を増やすよ」
「つまりそれは……大精霊の試練、ということですね」
「うん。そんな感じ」
「…………試練はトレーニングじゃない」
それを聞いたギルさんはそう一言呟くと、やがて決心したのか私に全身を向けてきた。
「やります。星の大精霊様の試練、絶対にこなして見せます」
ギルさんは目に強い闘志を宿し、私に力強い宣言をした。どうやらギルさんは、星の力が相当欲しいらしい。
「じゃあ決まりだね。今日から修行開始だよ、ギルさんはついて来れるかな?」
「ついて行きます! 今から支度してきます!」
やる気でみなぎったギルさんは、手に持っていた本を鞄に仕舞うと、大急ぎで自分の家へと駆け込んで行った。
「ねえシロボシ」
「キラナ、どうしたの?」
「なんで力で釣ってまで、ギルさんに修行をさせようとしたの?」
キラナは私の行動が相当不思議だったらしい。不思議そうな表情で私に疑問を投げかけてきた。
「いつものシロボシなら、やらないならほっとことか言いそうなのに」
「まあそうなんだけどさ……」
来るもの拒まず、去るもの追わずって言うくらいだし。でも、私がギルさんを気にかけるのはそれなりに理由がある。
「なんかさ、ギルさんって放っておけないんだよね」
私は休憩所のベンチに腰を下ろす。
「私は一緒に修行って言ったけど、本当はギルさんとコミュニケーション取ろうとしてたんだよね」
「そうだったの?」
そんな私の隣にキラナが腰掛けて、私をじっと見つめてくる。
「……ギルさんは見た感じ、結構若いドラゴンでしょ」
「あ、そうだね。ギルさん、かなり若目だよね。人型の見た目とか、声とか若々しいところあるし」
私は隣にいるキラナに視線を向ける。
「ねえ、キラナの頭にある知識で、ギルさんの年齢とか確認できる?」
「えーとね……」
キラナはじっとして考える素振りをする。
「私の知識では……うん、ギルさんは未成年だね。結構若いみたい」
「やっぱり……」
「龍族があの若さで1人でいるのはかなり珍しいかも」
ギルさん、まだ若いのにドラゴンの群れから追い出されたんだ。
それがどんな理由であれ、関わった以上は下手に放って置けない。
「……朝はさ、ギルさんを解放するとか言ったけどさ。本当はあまり乗り気じゃなかったんだよね」
「あの時のシロボシ、野垂れ死にそうで心配って言ってたよね」
「うん。あとさ、ギルさんをあのまま野放しにしたら、またどこかで迷惑かけそうじゃん?」
「そうだね」
私の発言にキラナはうんうん頷く。
「だからさ。どうにかして引き留めて、ここでギルさんに色々と学習してもらって、将来1人になっても生きてけるようにしたいなって思ったんだよね」
「そっちがシロボシの本音なんだ」
「うん」
キラナの言葉に私はひとつ頷く。
「ギルさんが周りに迷惑かけないようにするんだね」
「そういうこと。ギルさん結構頭いいし、このまま放っておいたらきっとこの世界は大変なことになるよ」
昨日出会ったギルさんは、やたら大人ぶっていて、それでいて結構危なっかしいドラゴンだった。
良くない方法でドラゴンと人間を脅して双方から信頼と報酬を得て、力欲しさに精霊にちょっかいまでかけた。
もしギルさんがあのまま知識の使い方を誤れば、いつかきっととんでもないことをしでかす。
「……まあ、これもお節介ってやつかな」
ギルさんが一人前になるまで、私達で保護しよう。
「なら、私もギルさんを気にかけることにするよ」
「キラナ、ありがとね」
……0歳児に気にかけられたところで、ギルさんは微妙な反応するだろうけどね。
まあ言わなきゃバレないバレない。




