9話 なんで素直に言っちゃうかなぁ!?
星の大精霊である私が試練を持ちかけたら、ギルさんは修行に意欲を見せてくれた。
と、いうわけで……
「修行するために、広いダンジョンを作っちゃおー!」
「無駄に規模デカいっすね……」
運動しやすい服装に着替えて来たギルさんは、私の宣言になんとも言えない反応をしていた。
「それにしてもダンジョンですか……魔物とか出るから修行にいいかもしれませんけど、そもそもどこに作るつもりですか?」
「地下に作るよ〜。とりあえず、あの辺の土地を使おうかと」
私は遠くの角を指差す。
「あそこはまだ使われてないし、何となくいい感じでしょ? ダンジョンありそうな感じがしてさ」
「いや、分かんないっす」
そっか、ギルさんには分からないか。というか、ギルさんさっきからやけにテンション低いね。
「……あっ、ダンジョンと言えば商人も欲しいよね」
「それいいね! シロボシ天才!」
「必要ないです」
私の案にキラナは乗っかったけど、ギルさんからはばっさり切り捨てられてしまった。
「シロボシさん、まずはダンジョン作りましょう」
「そうだね。これ以上道から逸れると修行のことすら忘れそうだし……」
そんなこんなで目的の土地に到着。
目的の土地には、事前に私の意図を汲んでいた星の精霊達により、地面に大きな穴が開けられていた。みんなありがとう。
「後は大穴にダンジョンの素を投げ入れるだけだね!」
「みたいだね〜。ほっ!」
私は両手に力を込めて、巨大なマナの結晶を生み出した。普段のマナ結晶とは違う、ダンジョンのコアとなる物体だ。
「これを大穴に落っことすだけ〜」
私とほぼ同じ大きさの結晶を、私は両手でコロコロ転がして穴まで誘導する。
「そーれっ!」
最後は可愛らしい掛け声と共に、私は大穴に結晶を放り込んだ。
……今の結構可愛かったでしょ。私は後ろにいる2人をチラリと覗き見た。
「シロボシかわい〜!」
キラナは勿論大喜び。隣にいるギルさんは……
「…………」
ものすごい微妙な顔をしていた。ギルさに可愛いがとことん通用していない……ま、いいけどね。
「さてと……」
私は結晶を放り込んだ大穴に目を移す。
しばらく大穴を眺めていると、大穴から強い光が飛び出して、最後にボンっと音がして大穴に階段が生まれた。
「これで完成かな?」
「うん! 無事にダンジョンが出来たみたいだね!」
キラナはその場ですぐさま変身して魔法少女の格好になった。
「シロボシ、試しに入ってみようよ!」
「よしっ! 突撃ー!」
私と魔法少女キラナは大喜びでダンジョンに突撃。
長く続く広い階段を降りて、飛び出した先は……
「あれ?」
青い空に草原広がる爽やかな景色。広葉樹がまばらに生えていて、とても爽やかな光景だ。
「普通のダンジョン?」
キラナは困惑するけど、私はすぐに分かった。ここは普通のダンジョンと大違いだ。
「キラナ、空見て!」
「えっ?」
私の指示を聞いたキラナは素直に頭上を見上げた。
「あっ! 空に星が浮かんでる!」
私達の頭上に浮かぶのは、大きくてカラフルな惑星の数々。真新しい景色を前に、キラナは大きなお目目をキラキラと輝かせた。
「地面もよく見るとすごく丸いよ。多分だけど、私達のいる土地はすごく小さい惑星なのかも」
「重力も全然違うね!」
私達のいる星の重力は少し軽いみたい。
「空に惑星が沢山あるってことは……つまり、ここから宇宙に飛び出すのが大前提ってこと?」
「だと思うよ。ほら、あの赤い惑星になんかいるよ」
「ホントだ!」
赤い惑星の表面を蠢く何かがいる。このダンジョンは宇宙人的な存在が湧いて出てくるみたいだね。
宇宙を飛んで星々を旅するダンジョン……うん、なんだかワクワクしてきた。
「…………」
「ギルさんギルさん」
ダンジョンに潜ってからずっと沈黙を続けているギルさんに声を掛ける。
「ねえギルさん、このダンジョンどう思う?」
「……今まで、こんなダンジョン見たことないです」
……ギルさんもしかして、さっきから機元気がない?
「…………」
……もしやギルさん、さっき私達がしてた「ギルさんを保護する話」を聞いてた?
だとしたら機嫌が悪くなるのも納得できる。まあ、どちらかというと機嫌悪そうというかただテンション低いって感じなんだけども。
こんな世の中を何も知らない赤ちゃんみたいな私が、偉そうにギルさんを保護するなんて言ったら、お前何様だよって思うよね。
今のギルさんとは、変に声をかけずにそっとしておいた方かいいかも……
「ねえギルさん、さっきから機嫌悪い?」
キラナちょっと!?
「……いや、大丈夫っす」
「絶対そんなことないじゃん」
元気のないギルさんにキラナが言及する。
「本当に大丈夫なんで……」
「うーん……あっ! ギルさんもしかして……!」
「キラナちゃーん!!」
「わっ!?」
更に言及しようとしたキラナを止めるべく、私はその場でジャンプしてキラナの頭にくっ付いた。
そして星の魔法ワープでキラナごとワープして、速やかにギルさんの前から姿を消した。
飛んだ先は数多の星々が瞬く宇宙空間。
「キラナキラナキラナ〜ッ!」
「わわわっ!?」
私はキラナの髪をわしゃわしゃ崩す。キラナは私の突然の行為に目を丸くして驚くしながらも私を頭から取り外した。
「どうしたのシロボシ!?」
「キラナってば! なんで思ったこと何でも言っちゃうかなぁもう!」
「えー?」
私の怒りの声にキラナは悪びれる様子は微塵もない。
どうやらキラナは、何が悪いのか全く分かってないみたい。
「キラナ! ギルさんに関しては今はそっとしておいてあげて!」
「何で? 話し合いしないと解決しないよ?」
「だからって思ったことをすぐに何でも言うのはやめた方がいいって!」
何で私から生まれた存在なのに、考え方にこんなに差が開いちゃうのかな。
「キラナ! 時には話し合いも必要だけども! 時間が解決することもあるでしょ!」
「そういうのもあるのかなぁ……うん、とりあえず分かった」
キラナは私の説得に渋々ながらも納得してくれた。
「でもさ、シロボシ。このまま放置しても、ギルさんはずっと機嫌悪いままじゃないの?」
「それもそうなんだよね……」
テンション低いままでまともな修行ができるかどうか……
「……よし! いいこと思いついた!」
案を閃いた私はパチンと指を弾いた。
同時に、遠くでビッグバン的な爆発が発生。もう二度と指パッチンしません……
「シロボシ、なんか爆発しなかった?」
「魔法使いの師匠を作ろう!」
私はキラナに顔を向けた。
「年上の存在を作るんだよ! 私達ってあまり貫禄とかないから舐められがちでしょ?」
「私達って見た目は未成年とマスコットだもんね」
「そう。だから見た目でも舐められるんだよ……」
見た目が弱そうなせいか、実際に初対面のギルさんから攻撃受けてるし。
それに今現在、ギルさんの機嫌が悪いのも私の見た目がふざけすぎてるのが原因だろうし……
私にもっと貫禄あったら、保護するなんて言っても文句言われなかったよ。可愛いって不便だね。
「だからさ、ギルさんも尊敬するような大人の存在を作るんだよ! 修行の師匠として! そうすればギルさんの機嫌も少しは治るかも!」
「でもさ、シロボシ」
私の提案にキラナが口を挟む。
「シロボシが本来の姿を見せればこの場は収まるんじゃないの?」
まあその通りなんだけども……
可愛いを捨てるのは負けた感じがするからさ。正体を表すのは最後の手段ね。
「今はとりあえず師匠作りから! えい、えい、おー!」
「おーっ!」




