7話 バイキングに寄ってきた大物
異世界に来た次の日。
星の精霊達が作ってくれた大自然溢れる大きな施設で、私は豪華絢爛なバイキングを楽しんでいた。
「うーん! おいし〜!」
猫型マスコットの私は大きな唐揚げを口に頬張り、そのおいしさに舌鼓を打つ。
「シロボシ! このムースすごく美味しいよ!」
「へぇ〜! 後で取り行こっと!」
私は料理のひとつひとつを堪能しながら、キラナとのお喋りも楽しむ。なんか旅行してるみたいですっごく楽しい。
料理も地球で馴染みのあるものばかりで、何というかすごく懐かしい。
もしかすると精霊達は、異世界の記憶で料理を学んで、私の記憶にある料理を作ってくれてるのかな?
「うわっ!? 何だコレ!?」
「あ、ギルさん」
いつの間に帰って来たのか、Tシャツにジーパン姿のギルさんが会場に顔を見せた。ギルさん、今日はずっと驚きっぱなしだね。
「以外と早い帰りだったね」
「あの、なんか俺の移動に精霊が付いて来ていて……帰りは精霊が一瞬で……」
なるほど、星の魔法「ワープ」で帰って来たのね。
「あの、ところでコレって……」
ギルさん、会場に並ぶ料理に興味津々。
「あっ、ギルさん。これセルフサービスで取りに行くやつだよ」
「あそこにお皿あるよ!」
私はテーブル席から指をさしてギルさんにバイキングの説明をする。
「向こうに沢山あるから、いっぱい取ってって食べてってね」
「ありがとうございます」
ギルさんは即座にお皿を取りに向かい、お皿を片手に料理の吟味を始めた。
「色々あるな……」
ギルさんすごく楽しそうだね。私達の存在を忘れて料理に夢中みたい。
「さて、私も次行くとしますか」
私は新しいお皿を重力の魔法で浮かべて、新たな料理を探しに向かった。
「お次はお魚〜」
お皿に沢山のお刺身を盛り付け、別のお皿にキラナおすすめのムースとデザートを幾つか取ってテーブルに戻った。
「おいし〜!」
異世界のお刺身も最高だった。とっても新鮮で身もしっかりしてて、とっても最高。
どうやって作ったか分からないけどお醤油もいい感じ。深みとコクがあって味もある、塩水じゃない本当のお醤油だ。
「最高〜!」
私はほっぺに手を当てて、心の底から食事を楽しむ。
「お刺身いいな〜、私も取ってこよっと!」
キラナはお皿の食事を食べ切り、新しい食事を取りに向かった。お皿を手に向かったのはお刺身コーナー。
キラナ、私のお刺身を見て食べたくなったんだろうな。なんか嬉しい。
「ふふふ……」
私は笑みを浮かべながら、お刺身を食べに食べる。
程なくして、私の前にカタンと新たなお皿が置かれて目の前の椅子に座る音が聞こえた。キラナが帰って来たのだろう。
「キラナ、結構早かったね」
さっきまで隣だったのに。目の前に来たのは私の可愛い姿を見るためかな? なんて思いながら顔を上げた。
目の前に座っていたのはキラナじゃなかった。
「えっ?」
見た目は背の高い男性。眉間に皺を寄せて、無言のままお皿の料理と向き合っている。
因みに、彼のお皿の上には大量の唐揚げが置かれていた。
「……!」
よく分からないけど、目の前の男性からはなんかとんでもなく凄い力を感じた。明らかに人間じゃない。
「えっと……」
私が声を掛けようか迷っている間に、目の前の彼はフォークで大きな唐揚げを刺して口に運んだ。
彼は目を大きく見開いた。
無言のまま目の前の唐揚げを食べ、あっという間に尽くしてしまった。
「早……」
「…………」
全て平らげた彼は、空になったお皿を手にして再び立ち上がる。また食事を取りに向かうのだろうか。
「……あっ! すいません!」
「…………」
私は慌てて謎の男性に声を掛けた。謎の男性は無言で振り向いて私をじっと見つめる。
「あのっ、お皿は新しいものを取ってください! 古いのは近くのスタッフ……精霊に渡してくれれば……!」
「…………」
どうやら私の話は通じたらしい。
彼は近くに待機していた星の精霊にお皿を渡すと、新しいお皿を手に取り、揚げ物コーナーへと直行していった。
「あの方は一体……」
「シロボシさん……!」
「あっ、ギルさん」
私が困惑していると、別のテーブルにいたギルさんがこっそり私の方に隠れ寄ってきた。
「あの方は大精霊です……!」
「……マジ?」
何となくそんな気はしてたけども。まさかこんなところで会うなんて。
「大精霊アンダ……人間の間では「無の大精霊」、または「魔力の大精霊」と呼ばれている、主に無属性の魔法の素となるお方です……」
「無属性……」
「主に身体強化や魔法弾です。彼は圧倒的な力で目の前の障害物を諸共破壊するそうです……」
大人しい雰囲気なのに実際はそんな破壊神じみた感じなの!?
「ギルさん、結構詳しいね……」
「人間の街で本を読めるところがあるので……そこで知りました……」
おぉ、ギルさん結構知識あるね。かなり助かる。
「えっと……アンダさんってどんな人なの……?」
「分かりません。口数が少なく、神出鬼没なために彼は大精霊の中で特に謎が多いんです……! あっ!」
そんなやり取りをしてる間に、噂の彼であるアンダは再び私のいるテーブルに戻ってきた。
ギルさんは慌てて自分のいた席に戻って行った。
「…………」
お皿には大量の唐揚げ。様々な種類の唐揚げが山のように積まれていた。
彼は無言のまま、フォークを片手に食事を再開した。
無表情のまま大量の唐揚げを頬張るさまは、さながらフードファイターのようだ。
程なくして、アンダは山のような唐揚げを全て食べ切ってしまった。
「…………」
アンダは無言のまま立ち上がると、出入り口を通って会場から退散していったのだった。
「何だったんだろう……」
「あれ? 此処に誰かいたの?」
「あっキラナ!」
ここでようやくキラナが戻って来た。随分と遅い帰還だったね……
「さっき大精霊のアンダって方がここに……!」
「そうだったの!? 私、ずっとデザート吟味してて見てなかった!」
それは知らなくても仕方ない。デザートも魅力的だからね。
「……あれ? なんかテーブルに置かれてるよ?」
「えっ?」
キラナに指摘されて、私は慌ててキラナの指差す先に顔を向けた。
先程まで彼がいたテーブルの上には、綺麗な透明のネックレスが置かれていた。
ネックレスからはとてつもない力を感じる。もしかすると、マナ結晶で生み出された物なのかもしれない。
「…………お礼、なのかな?」
「じゃない?」




