6話 ギルさんの待遇
夜、バーベキュー大会を終えた後。
星の精霊達は重力の魔法でお湯を持ち上げて、簡単なお風呂を作ってくれた。
「お風呂だぁ〜!」
「やったー! 私1番乗りー!」
「シロボシずるーい!」
私は空中に浮かんだお湯に向かってジャンプ。キラナも服ごとお風呂に入って、一緒にお風呂を満喫した。
『向こうにもお湯作ってるよ! ギルさんもお風呂どうぞ〜』
「えっと……ここは視線が多いので、後で1人で入ります……」
そんなことを言ったギルさんに、精霊達はすぐさま反応。
あちこちから持ってきた自然物や木材を組み合わせて建築して、あっという間に簡易な浴場を作り出してくれた。
しきりもあるから人の目も気にせず利用できる。
「あっ……ありがとうございます……」
精霊達の施しを見たギルさんは、精霊達にお礼を言いながら浴場へと消えていった。ギルさん良かったね。
お風呂に入った後は精霊の用意してくれた歯磨きセットで歯を磨いて、最後は簡易なベッドに案内されて、ベッドに潜り込んだ私はそのまま眠りについた。
次の日の朝……
「ふぁ〜あ」
私はあくびをしながら大きなベッドの上から起き上がった。
「うーん……」
うん、声は可愛くできてる。いい感じ。
「……あれ?」
雨ざらしの屋外で寝てたのに、いつのまにか室内にいる。
しかもベッドは綿みたいにフカフカで、すごく肌触りのいい掛け布団まである。
「すご……」
全体的に木製で、あちこちに小物が置かれている。なんと机と椅子まで設置されている。
「可愛い……!」
私が感動していると、可愛らしい木のドアからコンコンと音がした。
「はーい」
『!』
私が返事をすると、ドアが開いて星の精霊達が3匹入ってきた。すごくいいタイミングだけど、私が目が覚めたのを察したのかな?
「みんなおはよー。どうしたの?」
精霊達は私の問いかけに片手を上げて反応して、手に持っていた良さげな布を広げて見せてくれた。
「わぁ! お洋服だ!」
精霊達が持って来てくれたのは、私サイズのお洋服。
「もしかして、私のために作ってくれたの?」
精霊達は洋服を手にコクコクと頷いた。
「ありがとう! 早速着てみてもいい?」
『!』
私の問いかけに精霊達はすぐさま反応して、私に丁寧にお洋服を着せてくれた。
どことなく地球寄りのデザインで、とっても可愛らしい。猫型マスコットの私にピッタリなお洋服。
「可愛い〜! みんな、ありがとう!」
精霊達にお礼を言うと目の前の3匹は嬉しそうにしながらピカピカ光った。
この後、精霊達に案内されながら家を歩き回って、大きな玄関を通って外に出た。
「綺麗な空……」
闇夜が晴れて朝日が昇りだした空を眺めてから、その場で振り返って改めて自分のいた家を確認する。
「おぉ〜! すごく立派な家だね!」
精霊達が作ってくれたと思われるお家は結構大きかった。
全体的にファンシーで可愛らしくて、それでいてしっかりしてる。雨風からも魔物からも身を守れそうだね。
「いいお家……!」
「シロボシ〜!」
お家に感動していると、少し離れた所からキラナが駆け足でやって来た。
キラナはオシャレなワンピースに、パステルカラーの可愛らしい上着を身につけていた。
「シロボシおはよー!」
「あっ、キラナ!」
私服姿のキラナは、私に笑顔で駆け寄って来た。
「もしかしてキラナもお洋服もらったの?」
「うん! 沢山作ってくれたんだよ!」
「すっごくかわいいね! その……」
上着で、ゆったり着れて、可愛いらしい……その名前は確か……そうだっ!
『ガーディアンッ!!!!』
私が声高らかに叫んだその瞬間。朝焼けの大空に一際大きな1番星が輝いたかと思うと、空から灰色の巨大な鎧が飛来した。
鎧は轟音と共に大地に着陸。周りで色んな作業をしていた精霊達は巨人鎧の起こした圧により、持っていた物を散らかしながらひっくり返った。
精霊達が慌てる中、キラナは鎧と私を前に一言言い放つ。
「カーディガンだよ」
「…………」
名前間違えた。
しかも言い間違えたせいでガーディアンらしき精霊まで生まれてしまった。
「何だ何だ!?」
ガーディアンが着陸したタイミングで、遠くにある大きな家からギルさんが飛び出してきた。
「あっ、ギルさんおはよ〜!」
「よく眠れた?」
「起こされたんすよ! 何かにっ!」
私達の挨拶にギルさんは大声で怒鳴る。0歳児にそんな怒るのやめてね。
「一体何が……うわっ!?」
ギルさんはここでようやく巨人鎧を観測。大きく目を見開いて、声を大にして驚いた。
「何だアレ!?」
「カーディガンだよ」
「ガーディアンだろっ!」
おっ、いいツッコミ。
「それよりギルさん、さっき何処から飛び出してきたの?」
「えっ?」
ギルさんは自分が飛び出してきた方角を見つめる。視線の先にあったのは、割と大きなお屋敷。
「……家?」
「どう考えてもギルさんの家でしょ」
そんな話をしていると、近くにいた精霊が寄って来て私に説明してきた。
「……ああ、なるほどね」
「シロボシ、なんて言ってるの?」
「あのね」
私は精霊から視線を逸らしてキラナとギルさんに顔を向ける。
「昨日は、ギルさんに色々とご迷惑をおかけしたでしょ?」
「そうかな? 先に仕掛けてきたのはギルさんだよ」
「それでもだよ」
キラナの指摘にめげずに話を続ける。
「あと住める土地とか探してくれたし、お掃除もしてくれたから……だから、お詫びにギルさんのお家を大きくしたんだって」
「は……?」
私の発言にギルさんは呆然としている。その光景をカーディガン……もといガーディアンが眺めている。
「俺の、家……?」
「今後も私がお世話になるだろうからって! ギルさん、良かったね!」
「…………」
私の発言にギルさんは無言になる。なんか複雑そうな顔してる。
まあ、脅された相手と暮らすのもストレスだよね。それならば……
「……まあ、ギルさん本気で嫌がってるみたいだし、ここでお別れでもいいけどね」
「えっ?」
私の返事が想定外だったのか、ギルさんは拍子抜けたような声を上げる。
「俺を、解放してくれるんすか……?」
「うん。この世界のことは他の人にも聞けばいいし……」
「あの、罪とかそういうのは……」
「昨日のやつはもうチャラになってるよ」
私は手元に小さなマナ結晶を生み出しながら話を続ける。
「まあ本音を言うと、このギルさんをこのまま野放しにしたら、どこかで野垂れ死にそうだなって思ったから……」
「保護に近い感じだったんだね」
「うん」
私はキラナに返事をしながら、球体のマナ結晶を肉球の手の中で転がす。
「でもギルさんは嫌そうだし、ならここで解散もいいかなってさ」
「あっさり手放すんすね……」
「当然でしょ」
手元のマナ結晶を大きくして形を整えて、小さな王冠にして自分の頭に乗せた。
「もしギルさんが、今後もこの世界のことを教えてくれたりとかするのならここで保護するよ。ご飯とか用意するし、自由に外出も可」
「…………」
私の提案にギルさんはしばし沈黙する。
「……此処に住みます」
「あれ、以外と早く結論出たね。1日考えるのと思った」
「割と厚遇だったので……教えるだけで色々くれるのなら、こっちの方がいいかなと……」
だよね。割といい待遇だと思うよ。
「あの、シロボシ様……」
「そんな畏まらなくていいよ」
「……シロボシさん、気が向いたら時折此処に来る、でもいいんですよね」
「いいよ〜来るもの拒まず、去るもの追わず〜」
「ありがとうございます」
ギルさんは私達にお礼を言うと、その場から少し離れてドラゴンの姿に変わった。
『あの、俺の棲み家から色々持って来ます』
「分かった〜」
『では、失礼します』
丁寧な挨拶と共にギルさんはその場から飛び上がって、何処かへと飛び去っていった。
「さてと……」
私はギルさんが飛び去った空から目を逸らす。
「精霊達が朝食を用意してるみたいだし、いっちょたらふく食べるとしますか」
「うん! 行こ行こ!」
精霊の1匹が私達の前に姿を現して、朝食を用意してくれている会場に案内してくれた。
舗装された道をキラナと一緒に歩いて、到着したのは木造建ての巨大な施設。
「何これリゾート地?」
「すごいよシロボシ! かなり広々としてるよ!」
「一晩でこんな豪華な施設作ったの……?」
広いロビーと木のいい匂いに迎えられて、木の温もりに包まれながら館内を歩く。
程なくして、私達は風通しのいい広々とした空間に出た。
広間で私達を待っていたのは、沢山の豪華な料理達。
「バイキングだ!」
「すごーい! 物凄く美味しそう!」
私達はすぐにお皿の置かれた場所にダッシュして、大きなお皿を手にバイキング開始。
「ポテトに唐揚げに……これってベーコン!?」
「すごいよこれ。よくここまで用意出来たね……」
ケチャップとかマスタード的な調味料まであるじゃん。テンション爆上がり。
全体的に自然物で作られてるみたいだけど、一部の肉は魔物を倒して獲得したのかな?
精霊達、可愛い見た目とは裏腹に勇ましいね。
「きゃー! 可愛いデザートいっぱいある!」
キラナもこのバイキングの品揃えには大喜び。朝食は控えめにして、豪華絢爛なデザートを沢山お皿に乗せている。
私も沢山のご馳走をお皿に盛り付けてご満悦。こんな豪華な暮らしができるのも、管理人のご厚意のお陰だ。
「異世界最高……!」
異世界の恩恵に感動する中。
施設の外にある木の上で、私を眺める1人の人影が。
「…………」
……こんな顔が緩みまくりの私の姿を、まさか誰かに見られていたとは。この時の私は夢にも思っていなかった。




